『内田魯庵山脈』其の五

《 大正末から昭和にかけて『いもづる』という無料の趣味雑誌が存在した。編集人は斎藤昌三。 》 280頁上段

《 「いもづる」は「以毛図流」「以茂図流」とも書き、「以茂随流」などとも書いた。そしてお互いを”いも仲間” と称したという。 》 281頁下段

《 日本社会はタテ型と理論化する向きもあるが、この『いもづる』を見ていると、ヨコ型の可能性が示されて 興趣尽きることがない。行き詰まりにきている日本社会の未来図を見る想いがする。 》 296頁上段

《 斎藤もまた「”見えない知”の文の演出家にして巨匠」というべきであったような気がする。淡島寒月も見える人 だけに見える巨匠であり、魯庵もまた、半面を可視的な世界に目を向け、他の半面を不可視の世界に身を預けたために、 後の世の文学研究者にはほとんど見えない巨匠になってしまった。 》 316頁下段

《 この「いもづる」に集まった知がなぜ不可視になったか。それは一つに、このネットワークが、しいて学問・芸術を 装わなかったからであった。 》 322頁上段

《 その後、平凡寺は、本ばかり読んでいてもしようがないと、写真屋を開業した商売としてはまるで成り立たなかった。 (中略)ちょうど漱石の『吾輩は猫である』の出版された頃であった。夏目家に出入りしていた中村某が平凡寺の猫の写真を 漱石に進呈すると言って持って帰った。三十年経って夏目純一に平凡寺の末娘が嫁いだ。その子息が、同じ『異彩天才伝』 の雨田の文章の前に「祖父のことなど」が収められている漫画家夏目房之介氏である。 》 330頁上段

 本棚から荒俣宏『異彩天才伝』福武文庫1991年初版と夏目房之介『不肖の孫』筑摩書房1997年3刷を取りだす。後者から。

《 このヘンな人、じつをいえば私の母方の祖父なのである。いやはや。
  名を三田林蔵、三田知空と号し、のちに平凡寺と改めた。 》 37頁

《 奇人変人の常として、本人はイイがまわりが迷惑なタイプなのである。 》 37頁

《 ただ、離れには50年代前半当時には珍しいテレビがあって(母屋にはなかった)、それをみたさにいくのである。 すると入口には「いるす」の表札がかかり、中には珍奇な大小の物体が並んでいた。 》 39-40頁

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《 ハイブラウで西欧文化の吸収に全力を尽くしていた魯庵が、ローブラウで肩の力を抜いて付き合っていた三田平凡寺に 敗れ去った、そしてその事実は同時代の誰によっても気づかれなかったというのは、文化史の中で限りない興味を呼ぶ。 》  338頁下段

 松本 哉(はじめ)『世界マヌケ反乱の手引書 ─ふざけた場所の作り方』筑摩書房2016年9月刊を連想。
 http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480815330/

《 国や大企業に頼らず、金をあまり使わないで楽しく生きる奴らが、交流する場所を作って繋がり、 世界をひっくり返す愉快な方法! 帯文 いとうせいこう他 》

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《 そして魯庵三田平凡寺は、当時の国の内外を問わぬ国際的なネットワークではほとんど双生児といってよい存在だった。  》 350頁下段

《 大正時代特有のコミュニケーションの形態で横の繋がりが表面化したことは大事である。「物」を集めながら板祐生 (いた・ゆうせい)や内田魯庵が求め集めていたのは、ヒューマン・ネットワークであった。魯庵山中共古らが集古会や 古典を読む会などで追究していたのは、「物」研究を通して心の奥の部分で強い精神のパイプをつくることであった。 》  359-360頁

 ネットの見聞。

《 定期的にやっている、所蔵品の全チェック。絵の具の種類だったり、紙の質だったり。環境も含めて絵には 様々な変化が起きていることが分かる。味わい深くなるのものもあれば、少しずつ劣化しているのが分かるものもある。 まったく変わらないものもある。気を使う作業。 》 S.Yanagihara
 https://twitter.com/tornparchment/status/778811911093616640

《 チェックは気を使うし、ヘトヘトになる。 》 S.Yanagihara
 https://twitter.com/tornparchment/status/778822384996397057

《 「美術作品を持つとその作品を管理する責任が生まれる」という方もいらっしゃいますが、 私はぜんぜん共感できません。どれだけ気を付けていても、管理の甘さや作品の品質で劣化はすると思います。 何より、鑑賞を楽しみたくて作品を持つのに、それがストレスを生むのは本末転倒です。 》 S.Yanagihara
 https://twitter.com/tornparchment/status/778824368172376064

《 生活の中に美術作品があれば、劣化して当然です。有名絵画も、生活空間で楽しまれ、 今は美術館にあるというものが少なくありません。 日々の中で、どれだけ飾った作品と触れ合えるかを楽しむかが大事です。 》 S.Yanagihara
 https://twitter.com/tornparchment/status/778826067775598593

 自宅では北一明の大きな書作品や安藤信哉の大型絵画などは飾れない。いつ、どこで展示できるか (金を出せばどこでも)。味戸ケイコさんの絵は、来月下旬沼津市のギャラリー・カサブランカで数日間展示。
 https://twitter.com/ga_casab/status/776030320227340288

《 また、「日本の開放性を推進する」として、「一定の条件を満たせば世界最速級のスピードで永住権を獲得できる国になる。 乞うご期待です」とアピールした。 》 日テレNEWS24
 http://www.news24.jp/articles/2016/09/22/04341646.html

 ネットの拾いもの。

《 「ここでビート◯けしがバイク事故起こしました」「ここで草◯剛が裸で捕まりました」など都内ゴシップ名所を 案内してくれる"はとゲスツアー"があったらかなり希望者が居るのでは?とヨメが真面目に言っているがそれなら 俺も興味ある。 》 T. Hosoda
 https://twitter.com/fodaboy/status/778901007413620736

 源兵衛川を下りながら、対岸に昔池のある素敵な喫茶店ラペがあって、石原裕次郎がくつろいでいた、と言っても、 池は埋められ建物が変わってしまっては、なあ。

《 書庫に入れる人がうらやましい。 》