「服の着方の魅力的な女の子」

 村上春樹世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』新潮社1985年初版を少し読み進める。

《 私は女性の年齢を判断することについての能力を急激に失いつつあるような気がした。 》 135頁

 この語り手は三十五歳。ダブルスコアに近い私は、その能力をとっくに失っている。年齢は関係ない、魅力的かどうかが、 判断規準と強弁している。

《 ボルヘスの『幻獣辞典』だった。 》 138頁
 晶文社1984年17刷を持っている。未読。

《 服の脱ぎ方の魅力的な女の子は数多くいても、服の着方の魅力的な女の子となるとそんなにたくさんはいない。 》  157頁
 未来のストリップでは女性が裸から服を着ていくものになる、とは都筑道夫の小説にあった気がする。都筑道夫『凶行前六十年』 を読んでみたが、違った。エッセイかもしれない。探索は中断。いつか出合うだろう。

《 「やれやれ」と言って私は時計を見た。 》 180頁
 やれやれが出てきた。

 木田元・編『一日一文』岩波書店、5日はイタリアの哲学者クローチェの言葉。
《 すべて歴史的判断の基礎には実践的要求があるので、すべての歴史は「現代史」という性格を与えられる。なぜなら、 叙述される事件が遠く離れた時代のものに見えても、実は、その歴史は現在の要求および状況──その内部に事件がこだましている のである──について語っているのであるから。 》

 至言だ。

 昨日の毎日新聞、今週の本棚、鶴見俊輔『敗北力』編集グループSUREへの井波律子・評。
《 著者は、「敗北力は、どういう条件を満たすときに自分が敗北するかの認識と、その敗北をどのように受けとめるかの気構えから 成る」といい、その見事な例として伊藤博文高杉晋作等をあげる。 》
《 こうした敗者の気構えが、日露戦争このかたニ○一一年の原発事故に至るまで、この国では見られなくなったと、著者は指摘する。  》
《 今ひとつは、何事も急がず、生活体験のなかから、ゆっくり会得して行くことが、基本だという信念である。 》
 山口昌男のいう「敗者の精神史」に通ずる。老人力につづく敗北力。すごい用語だ。

 ネットの拾いもの。
《 浜松の皆さんには申し訳ないが、来年の大河は #真田丸 の全話再放送でいいのではないか。 》