「現代絵画」

 雑誌『武蔵野美術』110号1998年、特集「現代絵画 平面の展開」を読んだ。興味を引いた文章を。

《 絵のわかるひとには自明のことだが、何ということのない平らな矩形が芸術的アウラの源泉となる事態は、 モダニズム以前のすぐれた絵画にあっても宗教的や自然主義的な、そんな所期の目的を突き抜けたところ達成されて いたものである。 》 上田高弘「これから(も)描く/観るための断章」

《 モネの場合も、アルバースの場合も、形象の経験は、日常的な視覚、日常的な関心の在りかたを断ち切り、それらを 否定することを契機に成り立つものである。その意味で、形象の経験は、日常の流れから屹立した経験だといえる。 形象は、日常では見えないものを実現し、眼は、いままで経験したことのないものを身をもって知る。形象は何かの模像でも ないし、概念を指示する記号でもないし、理念や物語の図解でもない。 》 三木順子「形象への解釈学的アプローチ」

 上記二つの論旨は私にとっては当然なのだが、意外とそうは思わない人がいる。ヨセフ・アルバース Josef Albers は 知らない画家。ネット検索で絵を見られる。実物を見ないと私はなんとも言えない。

 神林恒道、田中信太郎、藤枝晃雄による鼎談「絵画/平面」では画家・彫刻家の田中信太郎の発言に注目。

《 それはひとつの高次元の喜びだと思うんです。平面なのに、彫刻を実際に手で作ったと同じような喜びを、平面の中に 見つけだせるというのは、作者自身もそうだけど、見る人自身も平面からものすごい情報の量を受け取っていると 思うんですね。 》

《 それからコンセプトとメディウムの関係があります。コンセプトが非常に強烈な絵というのは、コンセプトが有効な あいだはほんとに輝いていますが、時間とともにコンセプトも絵の画面も徐々にエイジングされていくわけですね。 色もだんだん消えていく色、そのために出てくる色、いろいろあります。考え方もどんどん風化していく部分、それによって また見えてくる部分もあって、そのエイジングに耐えるということに関しては、たぶん、この四○〜五○年のあいだの 絵画というのは、耐えられない弱さを持っていたような気がするんですよ。
  メディウムはほとんど最悪ですね。 》

《 平面の絵のにおいというのは、光学的なブラウン管でどんなにアップにしたって何したって絶対に映らない。(略) モノクロームの作品なんか絶望的です。眼の位置、大きさ、つや、などなどの実物のにおいは科学がどんなに進歩しても、 その前に立たなければ作品には入っていけない。平面は素晴らしくわがままな形式なんです。 》

《 ぼくなんか自分の作品を作っていて、どこでこれが終わりになるのか、わかんない。でも、一瞬、昇華作用が起きる 時があるんですよ。いきなり気体になっちゃう時があるんですよ。 》

 「現代絵画の10人」として以下の画家の作品が掲載されている。

《 赤塚裕二、内田あぐり、小野友三、岸本吉弘、小池隆英、小林良一、中村功、額田宣彦、浜田涼、福田美蘭 》

 この十人が、1998年現在推薦する現代絵画作家とみなされていうわけだ。掲載作品はすべてが1990年代の作。まあ、 そうだろうなあ。2016年から見れば二十年ほど前の作品だ。ここで思い浮かぶのが『日本美術全集 第20巻 1996〜 現在』小学館だ。1996年から2015年までの美術作品を収録。
 http://www.shogakukan.co.jp/pr/nichibi/detail/detail_20.html
 収録図版の目次。
 http://shogakukan.tameshiyo.me/9784096011201?page=3

 彼ら十人は、『第19巻 戦後〜1995』にも18巻にも未収録。一人くらい入っていると思ったが。

 傍らに好きな絵を置いてこんなことを書きちらすって、すごく充実した時間なのかも。二十代には絵を買うこともなかった。 初めて買ったのは三十四歳、味戸ケイコさんの絵。今は白砂勝敏さんの絵を置いている。
 http://shirasuna-k.com/gallery/two-dimensional/
 リンク先の平面作品のシリーズの一番手の絵(画像はない)を、これは面白い!と直感、購入。拙文「生成する絵画」を 書いていたことはすっかり忘れていた。もう三年経つのか。

 午後、白砂さんの新作展へ。沼津市のぎゃらりー墨の部屋にてきょうが初日。セメント、小石、板、鉄等で出来た分厚い 新作の半平面作品、焼きものオブジェなどに友人知人たち、興味津々、しきりに感心。だよなあ。
http://shirasuna-k.com/blog/2016/10/19/brain%E7%99%BD%E7%A0%82%E5%8B%9D%E6%95%8F%E5%B1%95%E3%81%8E%E3%82%83%E3%82%89%E3%82%8A%E3%83%BC%E5%A2%A8%E3%81%AE%E9%83%A8%E5%B1%8B20161126%EF%BD%9E124/  
 富士宮市のRyuギャラリーの企画展に出品した新作の半平面作品の写真が公開されていた。
http://ameblo.jp/steampunk-powerstone-art/entry-12222648583.html

 ネットの見聞。
《 2014年に刊行された本ですが、これから10年20年と日本画を描く人、観る人の「バイブル」として長きにわたり重宝される一冊です。  》
 とある本の推薦文。たった二十年で消費期限切れの本、なあ。
《 〈黄金の本格〉
  早坂吝『誰も僕を裁けない』
  深水黎一郎『倒叙の四季』
  竹本健治『涙香迷宮』
  島田荘司『屋上の道化たち』
  井上真偽『聖女の毒杯』
  三津田信三『黒面の狐』
  山田正紀『屍人の時代』
  市川憂人『ジェリーフィッシュは凍らない』 》 Dokuta 松川良宏
 https://twitter.com/Colorless_Ideas/status/802293505288609792

《 私の場合は、懇親会で若い人がビール持ってきたら「なんだ?こいつ」と思うことのほうが多い。こういうのは俺だけなのか? 》  森岡正博
 https://twitter.com/Sukuitohananika/status/802011851143819264

《 俺の場合よし悪しとか上下関係とか考える以前に酒を注がれるのが嫌い。とくにビールを注がれるのは大嫌いなので 外では生ビールにする。 》 PsycheRadio
 https://twitter.com/marxindo/status/802310126115786752

《 私もとにかく酒を注がれる(お酌される)のが嫌いなので、酒は飲めないことになっている。 》 中野善夫
 https://twitter.com/tolle_et_lege/status/802315051981910016

 一人酒が好き、と打ち込んだら一人鮭に。なんじゃ。いや、当たってる。

《 中国崩壊が実現しないのはなぜ? 》 高田勝巳 WEDGE Infinity
 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5707

《 暴走する権力を抑止するために憲法は作られた。その憲法を、抑止される側の権力者達が勝手に解釈変更することは 許されない。 》 清水 潔
 https://twitter.com/NOSUKE0607/status/802303569063854080

《 フランスでは,福島第一原発事故を教訓として,原発の徹底した調査が行われている。
  ところが、日本では,原発が,規格外の疑いを残し、推定でパス
  しかも,日本国民の大半が、この事実すら知らない 》 岡口基一
 https://twitter.com/okaguchik/status/802155644312657924

 ネットの拾いもの。

《 六億当たらないかなーと思いながら宝くじ売り場の横を通る(買わない) 》