大岡信『抽象絵画への招待』岩波新書1985年初版を再再読。以前の付箋とは別の箇所に注目。読む度に注目する点が違う。面白いものだ。初読から三十年。少しは成長したらしい。劣化老化はまだ先のようだ。その試験紙でもある。
一昨日の晩、大岡信ことば館で大岡信をテーマにした少人数の集まりで、進行役の劇作家岸井大輔氏の発言に刺激を受けて 再読したくなった。
紹介されているジャン・デュビュッフェの発言。
《 私は石ころとか古壁などに見出す色を、リボンや花の色よりずっと味わいあるものだと思う。 》 43頁
それを受けての大岡信の言葉。
《 いいかえれば、「色彩というものはない。色をもった物質があるだけだ」ということである。必然的に彼の画面は鉛白、漆喰、砂、砂利、タール、小石、ガラス、鏡片、蝶の羽根、紙きれその他までも絵具として含むものになる。色彩のヴァルールの細心な見さだめや油絵のデリケートな肌の追求よりも、絵具をはじめさまざまな自然界の物質をいじくる手の、官能的で生き生きした痕跡が、そのまま画面に定着されてマチエールになることを、彼は欲するのである。 》 43-44頁
昨日リンクした白砂勝敏氏の白砂勝敏氏のシリーズの最初の凸凹平面作品『水の記憶』に通じる気がする。
http://ameblo.jp/steampunk-powerstone-art/entry-12222648583.html
しかし、方法は似かよってはいるが、作品は当然全く別の表情を見せていることは一目瞭然。
《 それだけに、「私は絵画がもはや絵画でなくなるぎりぎりの境界にあることを望む」という彼の言葉にひそむヨーロッパの爛熟、その絶望感の強さについて考えてみる必要があるだろう。 》 44頁
大岡信の一文は、白砂勝敏氏の作品と交錯しない。白砂氏の作品は、ペン画〜水彩画であれ立体造形であれ、そこには穏やかな生気が流れている。決して深刻ではない。それは現在かなり重要なことだと思う。世の中、生真面目な作品、深刻ぶった 作品、また時流に棹さす作品ばかりがもてはやされている、と嘆く昨今、白砂氏の作品は時流に乗らず、恬淡とそこにある。それは見る者の心を、その型にはまった正装＝知識を気づかずに解き、ふっと気楽に、開放的にする。心は解放へ向かう。
それにしてもなあ、世の中、正装が好きな人＝業界人は、自らを正統＝正答と思っているから正装は解かないからなあ。でも、未知の領野を拓いてゆく作品は辺境、辺縁に生まれる。当然だが、私の見方が見当違いということもある。
ネット注文した古本、中村雄二郎『精神のフーガ 音楽の相のもとに』小学館2000年2刷帯付が届く。新品同様948円。定価3800円では見送っていた。
ネットの見聞。
《 映画『グランドホテル』（1931年）と久生十蘭『魔都』（1937年）が同一構造を内包し作中経過時間も同じという個人的発見は、 事あるごと語っていく羽目になりそうだが、評論というのは詮ずるところ家系図の作成だと思う。『ターミネーター』が完全に 『シェーン』だと気付いた人は実に偉い。 》 津原泰水
https://twitter.com/tsuharayasumi/status/802545962975514625
《 売れる本じゃないけど、この文春文庫のアンソロジーシリーズが、好きで。これに収録されてる真鍋博の大阪万博の時に 原稿を送るのが航空便でも間に合わなくなり、東京駅で新幹線に乗る見知らぬ人に原稿を託して大阪駅のホームで受け取らせた話とか、 楽しいよね。 》 古書現世
https://twitter.com/wamezo/status/802366973396938752
本棚から探し出して読んだ。いい話だ。そうかあ、売れる本じゃないのか。でもこの文春文庫のアンソロジーシリーズが、 好き。文藝春秋・編のシリーズ、調べたらずいぶんある。上記『心に残る人びと』1996年初版には２１タイトル（上・下、 全６巻などある）。『東西ミステリーベスト１００』1986年も。『とっておきのいい話 ニッポン・ジョーク集』1989年から。
《 「大誤植」 加瀬英明
まずは、史上最大の誤植を──。
ある東大教授が本の編集を引き受けた。が、仕事がなかなかはかどらず、出版は大幅におくれてしまった。
そこで彼は、あとがきに、
〈やむをえぬ事情により出版が遅れたことをお詫び致します〉
と書いたのだが、できたきた本を見ると、なんと「事情」が上下逆に印刷されているのだった！ 》
ネットの拾いもの。
《 （おもしろかったのでいちおう訳すよ。）
カストロ：アメリカが滅ぶまで私は死なんぞ。
トランプ：俺が大統領だ！
カストロ：あ、では。 》 Hal Tasaki
https://twitter.com/Hal_Tasaki/status/802503401133084673
