『 The Book of Tea 』

 椅子に寛いで右手の本棚を見ると、中村雄二郎『人類知抄 百家言』朝日選書1999年初版が目に留まった。ぱらぱらと開いて 西田幾多郎の項を読んだ。

《 昭和十一(一九三六)年、西田が六十六歳の当時のことである。弟子の下村寅太郎にD・H・ロレンスの 『チャタレー夫人の恋人』の原書を頼み、送ってもらっている。その返事に「チャッタレー難有(ありがとう)御座いました。 人間の bed-rock (岩床)を露出した様なこの書に動かされました。 sincere (真摯)な本です」と書いている。 時代が時代だけにおどろくべき探究心だ。 》 276頁

 おお、私と同じ歳に。私は好奇心なら十分持て余している。その西田幾多郎の言葉、

《 人間といふものは時の上にあるのだ。過去といふものがあつて私といふものがあるのだ。過去が現存してゐるといふ事が その人の未来を構成してゐるのだ。 》 274頁

 岡倉天心茶の本 The Book of Tea 』岩波文庫1968年47刷を何度目かの再読。天心44歳、1906年の刊行。この歳で読むと、 また違った箇所に目が留まる。

《 おのれに存する偉大なるものの小を感ずることのできない人は、他人に対する小なるものの偉大を見のがしがちである。 》  21頁

《 もしわれわれが文明国たるためには、血なまぐさい戦争の名誉によらなければならないとするならば、むしろいつまでも 野蛮国に甘んじよう。われわれはわが芸術および理想に対して、しかるべき尊敬が払われる時期が来るのを喜んで待とう。 》  21頁

《 現代の人道の天空は、富と権力を得んと争う莫大な努力によって全く粉砕せられている。 》 28頁

 以下引用したくなる箇所が頻出。歌人塚本邦雄が『けさひらく言葉』で紹介した一文を。

《 冬の曲となれば、雪空に白鳥の群れ渦巻き、霰はぱらぱらと、嬉々として枝を打つ。 》 62頁

 視野は限りなく広く、視線は深甚。闊達な表現、達意の文に感銘。不朽の著作だ。

 ネット注文した古本、シーラ・グレアム『愛しき背信者』新潮社1973年初版帯付が届く。1050円。表紙が深澤幸雄の銅版画。 値段を熟考し購入。

 ネットの見聞。

《 昨日訪れた市原湖畔美術館のショップで深沢幸雄の画集を購入。B5判、200頁近くカラー頁で2500円は安い。とてもいい画集。 発行は市原市。 》 山田英春
 https://twitter.com/lithosgraphics/status/807782607098286080

《 山田英春さんのtweetで教えてもらった『深沢幸雄作品集』を市原湖畔美術館http://lsmichihara.theshop.jp/ に注文。 深沢幸雄といえばE・A・ポー連作が有名だけど、ステープルドン『オッド・ジョン』やアントニイ・バージェス選集の装画にも 起用されている。 》 藤原編集室
 https://twitter.com/fujiwara_ed/status/807815518254043136

 この画集、深沢氏から恵まれている。年譜にはK美術館の企画展も掲載。

《 ホームレスにすら優しくない街を作ってたら、大規模災害で帰宅困難者都心部にあふれた場合に雨風防ぐ場所も座る場所も まったくなくなるってことだよな。 》 佐藤剛裕
 https://twitter.com/goyou/status/807580610541723649

《 日本学術会議史学委員会主催公開シンポジウム「科学者・技術者と軍事研究」。学者の会呼びかけ人の吉岡斉池内了氏も報告。 「日本学術会議として、軍事研究には一切関与しないことを明確に表明する声明を発し、科学者は世界の平和や人類の幸福という 『科学の原点』を再確認する必要がある。」池内氏 》 安全保障関連法に反対する学者の会
 https://twitter.com/anpogakusya/status/807849327779463168

《 秘密保護法2年 課題残したまま進む運用 》 西日本新聞
 http://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/294971

 ネットの拾いもの。

《 サイレント木魚「寂尊(じゃくそん)」 》
 http://lab108.x0.com/lab108/vp/jackson.html