『述語的世界と制度』「補章 場所から述語的世界へ」ニ

 中村雄二郎『述語的世界と制度』岩波書店1998年初版、「補章 場所から述語的世界へ」を読んだ。『述語的世界と制度』 を一応読了。凄い本だ。どこまで理解できたか、どこまで理解できなかったか。そんな境界線を引けるわけではないが、 後日再読して理解の境界線を拡げたい。

《 とはいえ、一般に自然言語の特徴として、というより人間の言語使用の特徴として、単語あるいは命題として顕在的に 表わすだけではなく、わざとその語を避けることによって何かを表わしたり、他人の用語として引用符つきで使うことで、 元の意味とちがう何かを表わしたりすることができる。なぜなら、言語はおのずとさまざまなレヴェルを含んだ重層的な 意味場をつくるので、それ以外にも、修辞学上の欠辞法(レティッサンス)のようにまったく何も言わないことで何かの 意味を表わせるし、また、何かを言うことで他の何かを隠すこともできるのである。 》 343頁

 ハイデガーの論述問題への言及だが、これは推理小説の騙りの解説ともいえる。いや、政治家の発言か。それにしても、 ハイデガージャック・デリダもかなりの曲者、一筋縄ではいかぬわ。彼らの著作を直接読んだだけではまずお手上げだろう。

《 たとえば、ここに三段論法の形式をとったひとつの命題がある。《りんごは丸い。乳房は丸い。ゆえにりんごは乳房である。》 というものだ。これは三段論法の形式はとっていても、むろん通常の三段論法ではない。 》 350頁

《 すなわち、《りんごは乳房である》という類の二つの辞項の関係づけは、限られた或る特定の場所(場面、コンテクスト) のなかで言いうるだけでなく、芸術上の創造的な表現はもちろん科学上の発見の手がかりにもなりうる、ということである (造形芸術上でそれを過激に行なった一つは、シュールレアリストが手法として掲げた《デペイズマン》つまり〈イメージの あるべからざる出会い〉というやり方である)。なぜなら、述語的同一性にもとづくこのような思考は、主語的同一性にもとづく 通常の論理によって統一されている現実を問いなおし、惰性的に統一された総体に亀裂を与え、それをばらばらに分解する力を 持っているからである。 》 351頁

 述語的の方法から現代詩、現代短歌を読み直してみたい。思い浮かぶ短歌には述語的つながりの表現を感じる。

 ネット注文した古本、市川浩『現代芸術の地平』岩波書店1985年初版が届く。500円。定価3400円。これでは当時知っていても 見送っていた。8日に引用した市川浩の文章は、この本にある。あの引用に続く文。

《 俳優は個人の生活史を担った主体=他者ではなく、何にでもなりうる演技機械であり、観客は単に上演されている劇を 外から観る認識機械に還元される。鈴木忠志の演劇は、しばしな自閉的印象をあたえるにもかかわらず、舞台づくりの中核に あるのは他者の問題である。それによって鈴木忠志は、〈劇的なるもの〉を回復しようとしたのである。 》 『現代芸術の地平』 232頁

 ネットの見聞。

《 牧村慶子絵本原画展『春の光の中へ』沼津芹沢光治良記念館2階ギャラリー 2017年1月11日〜29日 9時〜16時  月曜日休館 入館料100円 原画や出版物など約50点展示。 》 Galleryカサブランカ
 https://twitter.com/ga_casab/status/816788354767278080

《 オフセットだろうが、文字も印刷もけっこう粗い。ワープロから出力したダイレクト印刷のような風合いである。 》  daily-sumus2
http://sumus2013.exblog.jp/27431114/

 粗い印刷文字は最も嫌うもの。中村雄二郎『述語的世界と制度』は活字は小さ目だったが読みやすかった。同じ岩波書店でも 泉鏡花『鏡花 小説・戯曲選』全十二巻1981年〜は粗かった。売り飛ばしたいと思いながらまだ本棚に。上記ブログの本は 書肆季節社から出た詩集だが、同じ出版社から出た『塚本邦雄 監修 現代詩 コレクション』1990年初版も印刷が粗い。 こちらは必要なので処分する気はないが、本を読む愉しみがずいぶん損なわれる。

《 「活字離れ」論の文化史 」 》 林智彦
 http://www.slideshare.net/tomohikohayashi/ss-56614985

《 「物語」といえば、日本語だ。しかし、いつの間にか中国語の漢字としてそのまま使われるようになった。 意味そのものも含め、なんら違和感もなく解釈されていくということは中国語に対する日本語の浸透ぶりを 象徴しているかのようにみえる。時代の変化なのか。新刊本のタイトルには「物語」も登場した。 》 毛丹青
   https://twitter.com/maodanqing/status/818599549732196352

 ネットの拾いもの。

《 日本大学芸術学部には「古本屋研究会」というのがあるのか。 》 Genei-John
   https://twitter.com/noji2207/status/818064754006601728

《 『おれたちに偏差値はない』福澤徹三 文春文庫新刊 》

《 「ダブリは恥だが、役に立つ」 》