『トレント最後の事件』

 E・C・ベントリー『トレント最後の事件』創元推理文庫1973年2刷を読んだ。1913年の発表。その冒頭。

《 ほんとうに重大なことがらと、外見だけのものとを正確に判断することは、われわれ凡人にとっては至難のわざと いうべきであろう。 》

 この一文で読むことにした。それまでの重厚な単行本と違って文庫本なので気軽な姿勢で読める。その第一頁。

《 絢爛たるアメリカ経済史上にも、彼ほど実業界で辣腕をふるい、堂々と君臨していた人物は、かつてなかったであろう。 》

 どこかで目にしたような。三頁目。

《 人々は、マンダースンの名を口にするとき、彼をアメリカ合衆国の膨大な富によって裏づけられた、あらゆる権力そのもの であるかのような錯覚をおこした。 》

《 その世界では、生きるためには、ものすごく金持ちでなければならなかった──金のことしか問題にされず、金以外のことは 何も考えない世界です。 》 158-159頁

 未来SFじゃあないよなあ、推理小説だ。時宜を得た読書だ。

《 一面に本が並んでいる壁のわずかな空所に春信の版画が数枚かけてあった──トレントは、あとでそれをゆっくり鑑賞しようと 心の中で思った。 》 60頁

 ジャポニスムだなあ。などと呑気に面白がって読んでいったが、いや、これは大人のミステリだと気づいた。こういう小説を今、 読みたかった。

《 彼女のすばらしさは、ただ美しいからではなく、それがはげしい性格と結びついているところにあるのだ、と思った。》  162頁

 『教皇ヒュアキントス ヴァーノン・リー幻想小説集』国書刊行会の表紙絵(林由紀子・手彩色銅版画)が浮かぶ。美しい本だ。
 http://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336058669/

《 フランス人の家庭の内情は、壁紙や家具のたぐいにいたるまで十年前とまったく同じだったが、しかし、今の《若い世代》は、 残念ながら彼らの先輩たちとは、まるでちがっていた。ずっと浅薄で、未熟で、真の聡明さが欠けていた。彼らが宇宙から学びとった 秘密と称するものも、昔の《若い世代》がそう称したものより、重要さも、興味深さも、かなり劣っていた。トレントは、そうした 自分の見解を正しいと信じていたが、やがてある日、偶然あるレストランで、かつて彼と同年代の《若い世代》の一人であった男の 姿を、隣の席に発見したときから、この確信がぐらついてきた。その旧友は、いまでは昔日の面影がないほど肥満し、豊かな生活を 送っているようであったが、彼は当時、三、四人の仲間が集ってつくった《新パルナス山の隠者》と称するグループに加わっていた。 》  193頁

 推理小説としても立派だが、こういう本筋からは外れた描写が楽しい。パウル・クレー『パルナッソス山へ』が浮かぶ。また、 十年の歳月による人の変貌。たった十年、と思うが。百年前も今も人の心は変わらない。

 今朝は-4.5℃。寒い〜。最高気温9.8℃。外出は食料品の買いものだけ。

 ネットの見聞。

《 寒い日は嫌いだ。ひとりでいると突発的に猛烈に悲しくなることがあるから。そんなときはとにかく仕事部屋を出て リビングに行って嫁さんの顔を見て、ぼたんをもふもふする。みんなも辛くなったら誰か安心できる人のそばに行け。 犬とか猫とかフェレットとかインコとか温かくてもふもふしたものに触れ。 》 太田忠司
 https://twitter.com/tadashi_ohta/status/823807413383884800

 友だちのセキセイインコに会いたくなった。手を伸ばせば乗ってくる。

《 30年も結婚生活送っていると誰もがそうであるように色んなことがあります。 》 長州力
 http://ameblo.jp/rikichoshu/entry-12240821038.html

 そうだなあ。いろいろだわなあ。と書く私は未婚だが。

《 むしろ、グローバル化の中での今後の新しい秩序への模索が、世界規模で始まったということだろう。そんな中で、 既存の価値や権威が問い直されていくのがポスト・トゥルースなのかもしれない。 》 茂木健一郎
 http://president.jp/articles/-/21121?page=2

 東日本大震災は予想外だったが、変化の胎動は2011年に始まると予感していた。五年経って顕在化か。

《 「死に際」に思うこと 》 大学生の歩き方〜九州大学医学部〜
 http://daigakuseinoarukikata.com/?p=426

《 鳩山が「最低でも県外」を実行できなかったとき、メディアはこぞって「沖縄の人がかわいそうだろ!!」と 鳩山をボッコボコに叩いたではないか。なのに今は「沖縄の人」を直接蹂躙している安倍をぜんぜん叩かないのである。 》  中野昌宏
 https://twitter.com/nakano0316/status/823778028538892289

 ネットの拾いもの。

《 新しい元号が「云々」になるという噂が流れていますが本当ですか? 》 添田孝史
 https://twitter.com/sayawudon/status/824051539656355840

《 読み方がわからない人がいるからもっと簡単なものに、という意見が出たので却下。 》 すわ まこと
 https://twitter.com/makoto_bass/status/824053391198257152

 24日の国会答弁での原稿読み。「訂正云々」を「訂正でんでん」。恥かかせた官僚、懲戒処分だな。

《 【女子がかわいい大学】
  S 上智
  S- 立教
  A 明治学院 成蹊
  A- 成城 慶応義塾 青山学院
  B 同志社 東京外国語
  B- 立命館 早稲田
  C 明治 関西 東京学芸 東洋
  C- 法政 中央 日本
  D 横浜国立 一橋 専修
  D- 駒沢 東京 》 一目置かれる雑学
 https://twitter.com/trivia_hour/status/823760671967805440