「紙わざ大賞26」

 昨日の本から空海のことば「五大にみな響きあり」が浮かんだ。やはり要諦はここなのだ。繰り返しになるが。

《 そしてこのことばは、私のなかで生まれつつあった〈汎リズム論〉つまり「すべてはリズムである」という 考えを推しすすすめていく上で、ほかのなによりも強力な支えになった。 》 中村雄二郎『人類知抄 百家言』朝日選書 1999年初版32頁

《 それによれば、ものの形態もリズムもすぐれて生命的なものの表現であるが、いっそう根源的なのはリズムである。 そして、リズムとその共振こそ芸術や文化はもとより、あらゆる人間活動の源泉であり、そこにおいて、科学も宗教も芸術も 出会うということになる。 》 同

 このリズムをオンビート、オフビートに分けて、昨日の例でいけば、オンビートはピカソ、オフビートは小原古邨。まあ、 多くの画家の場合、どちらか一方だけに偏ることはない。某作品はオン、某作品はオフとなるのが普通。二十世紀絵画を 切り拓いたとされるアヴァンギャルド絵画の多くがオンビートだと思う。私の好みはオフビートの絵画。音楽も同様。
 それはさておき。リズム=生命的なものが伝わらない=心に響かない(共振しない)絵画は、優れた絵の条件から外れる。 当然だが、かすかな響きをも逃さない鋭敏な知覚、認識能力がそこには求められる。別の表現でいえばバランスがいいか、悪いか。美は危うきに遊ぶ、ともいう。すべて響き〜リズムにつながる。それはまた、品にもつながっている。
 昨日引用のピカソのことば「傑作というものには、すべてが相当な醜さを持って生まれてくる」には違和感があった。 醜い=バランスが悪いか?品がないのか? この場合の、醜いの反対の美とは、既成の美、体制の美だろう。それを打ち破る 新たな美の規準を創出したから、既成の目からはそれは醜い〜逸脱となる。それが真に新しい美の創出ならば、品がある。
 私がアヴァンギャルド作品にさほど惹かれないのはオンビートだから、と先に記したが、これからの芸術はオフビート、 ではないかなという予感。前進するのではなく、後退りすることで開かれてくる世界。希望的観測かな。
 リズム……一昨日内野まゆみさんたちと昼食をした店には内野さんが昔描いたテディ・ベアの線描画が飾ってあった。 陰影の描かれたその絵にはを私はさほど惹かれないとその晩の電話で話した。けれども、昨年一本の線で描かれたテデイ・ ベアは素晴らしいと伝えた。それは今手元にある。一本の線描画なのに各部分の量感がしっかり伝わってくる。話のなかで 内野さんが書のリズムにふれた。能書家の彼女は絵画に越境し、見事な線描画を描いている。それは書道家と画家との間に 橋を架ける作業だ。その具象画は、私の知る限り誰も試みていない。私の視野に入ってこないだけかもしれないが。 正当に評価されるべき作品だと思う。そういえば、私の評価する作品は、既存の分類分野には収まらないものばかりだ。 味戸ケイコ、北一明、白砂勝敏ら、みなそうだ。それらは述語的作品といえる。ここでアンリ・ルソーに言及しなかったが、 作品を実見していないので。憶測では語れない。

 昼前、沼津市ブルーウォーター展示室への白砂勝敏さんの作品搬入を内野さん、細田さんと私でお手伝い。終了、昼食後、 皆で長泉町特種東海製紙のPamの「紙わざ大賞26」展へ。細田さんは初めての訪問。ガラス張りの外観にビックリ。 展示に皆興奮。これは面白い!白砂さんの入選作は、ボンゴをくっつけたような紙製の打楽器。その場で即興演奏。いい響き。 楽器として十分使える。満足して退出、帰宅。
 https://www.tt-paper.co.jp/pam/

 ネットの見聞。

《 昨夜、筑波孔一郎(のち耕一郎)の話題が出ていて、いろいろ考える。出身誌の「幻影城」で泡坂妻夫氏の 「亜です、よろしく」とこの人の「くさや刑事鼻つまみ捜査ノート」が交互に連載されるなど期待され、 当時の中間小説誌に載りそうな一般性を有しながら、僕らにはみごとなまでにつまらなかったこと。 》 芦辺 拓
 https://twitter.com/ashibetaku/status/826280138140561409

 美術にも言える。その時には一般受けしても、時代の変化にすぐ沈み、二度と浮かぶことははない。前世紀の美術雑誌で 華やかに扱われていたあの人は今何処、という作家がゴロゴロ。作品はもう見るに堪えない。中には全く古臭くないモノが。 だから古雑誌は面白い。

《 犯罪率とアニメ視聴の相関関係と言うがそもそも君らは世の中をよくするためにアニメを見ていたのか? 》  汀こるもの@レベル96
 https://twitter.com/korumono/status/826307761709277184

《 地域での「あったらいいな」という施設の議論も同じ。なんでも「あったらよい」と思うものはあるが、 それが成立するだけ利用するということによって支えられることを理解していない人が多い。 》 木下斉
 https://twitter.com/shoutengai/status/826247304185131008

 ネットの拾いもの。

《 Facebookの言語設定に「日本語(関西)」というのがあるんだね。
  ごっつごっついやん。 》