「風の薔薇」「野猿」

 堀江敏幸『河岸忘日抄』新潮文庫を少し読んだ。

《 三十ニの区分けで風向を示す羅針盤のことを、この国の言葉で「風の薔薇」という。 》 237頁

 書肆風の薔薇から出版されたアレホ・カルペンティエル『光の世紀』1990年初版。四半世紀経って「風の薔薇」の由来が判明。 やれやれ。

《 ぼくはこの年になってようやく悟ったんです。個性的たろうとする者は、要するに凡庸なんだ、と。ほんとうに個性のある 者は、個性的たることなど求めようとしない。ぼくら凡人には、いかにも悲しい「真実」です。 》 252頁

 日展評議員をしている彫刻家から「君は大いなる変人だ」と言われた。かもしれん。変人ではあろうが個性的ではない。 しかし、まことに個性的な人とは付き合いきれぬ。

《 ならば、これまで、いかなる状況で彼は悲しみを感じてきたのか。(略)おなじ本を二冊買ってしまったとき。 》 253頁

《 そう、学習とは想起することなのだ。あるいは反対に、教育とは、想起の機会と素材を不意打ちのように与えることだとも 言えるだろう。 》 255頁

《 悲しみは、なにかに仮託されたり、なぞらえられたりすることはあっても、べつの言葉に還元されることがない。意味の こちら側にとどまって、五感のどこかを刺激しつづける。 》 257頁

《 だから私たちが生きていること、現実にこの世にあることは、つまるところ、外に身を置いていることと同義なのでしょう。 内側だけに目をむけていては生きていけないのです。群れの外にいて自分と群れの双方をながめること、それだけが生存の、 現存の条件なのです。内側しか感知できない人間は、だから現存していないと言ってもいいでしょう。 》 274頁

 小雨が止んでも曇天。ギリシャ歌謡ライカの歌姫ディミトラ・ガラーニ Dimitra Galani の去年の二枚組ライヴCDを聴く。
 https://www.amazon.co.jp/Vol-2-Zontana-Sto-Harama-V-1/dp/B000RGH5YQ

 午後、グラウンドワーク三島事務所で先だって同行した御殿川の、今度は水棲生物の調査をするというので先生に同行。 勉強に来ている台湾人の女性二人も一緒。途中駿豆線鉄橋の上流部で採取している時、私は横のイタリアン「ミチスガラ」で コーヒーとケーキを賞味。通過する列車を眺める。帰りは四の宮川へ寄り道。建物裏の幅五十センチほどの浅い水路にはハヤの群れ。 台湾の二人は大いに喜ぶ。先生もここはご存知なかった。

 ネット、いろいろ。

《 うわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ!これ、一時期値段が超高騰して話題になった、 1960年代終りの学生運動ドキュメント写真集じゃないかっ! 》 古本屋ツアー・イン・ジャパン
 http://furuhonya-tour.seesaa.net/article/449728587.html

 本棚から似た本を抜く。栗原達男写真報告『怒りを日々の糧に』冬樹社1969年初版。食い入るように見ていた十代の終わり。 隣には上村一夫『マリア』双葉社1972年初版、『大滝詠一のゴー!ゴー!ナイアガラ』シンプジャーナル1984年初版。どれも 新刊で購入。それに並ぶのは岩田榮吉、ゾンネシュターン、M・C・エッシャー、ハインリッヒ・フォーゲラー、ハインリヒ・ フュースリ、ポール・デルボー、ドイツ表現主義ブリュッケなどなど展覧会で購入した図録。熱き日々の記憶が蘇る。

《 ハンガリー製の新型グランドピアノが超かっこいい! 》 Clarbo
 http://clarinet-labo.com/boganyi/
《 Boganyi piano in concert Szeged Square, 2016 》
 https://www.youtube.com/watch?v=uNREuHyA93Y

《 素人の写真がプロの20倍以上の値段で売れる理由 》 えとみほ
 https://note.mu/etomiho/n/n3e42445b8bb5

《 >RT 憲法ってのは「やっちゃいけない事」を記載するものであって、「やるべき事」を記載するものじゃないという 原則論が抜けてるんですよね。自由主義に立脚する憲法である以上、国民の自由を守る為に「国家がやっちゃいけない事」 を記載するのが基本なので 》 鈴折@ツイ減
 https://twitter.com/sin_Lv98/status/861614149519818752

《 女子高生くらいの女の子が「うちの彼氏バカなんだけどさー『誕生日にすみれにぴったりのプレゼント見つけた! 名前入りだよ!』って言って、SMILEってロゴが入ったマグカップくれたんだよね」と言っていて呼吸困難になった 》  しらこちゃん
 https://twitter.com/kokoropinpin/status/853095582969192448

 友だちの誕生日はまだ先だけど、早めに白ワインを贈った。昨夜電話したら「今飲んでいる。美味しい!」と。あらあら。 てことは、もう一本?

《 不思議な乗り物「野猿」 》 しずふぁんアーカイブ
 http://www.shizufan.jp/netamap/seibu/19702/

 昨夕SBS静岡放送TVで見た。これ、乗りたい。1968年『ガロ』に掲載されたつげ義春の漫画『もっきり屋の少女』に 似た乗り物があった。以来あこがれ。野猿という呼び方も初めて知った。全国にあるんだ。奥祖谷のかずら橋は渡ったが、 近くの野猿は知らなかった。勿体ないことをした。

《 長崎市相生町と上田町を結び、地元住民や観光客が利用する斜行エレベーター「グラバースカイロード」 》
 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170509-00010006-nishinpc-soci

 これまた乗りたい。オレは乗り鉄か? そういえば本棚の古本の間に市制40周年春の記念号『ふるさと・三島』1981年。 昭和8年の広小路駅の写真にはチンチン電車。そこはタクシー乗り場に。廃線跡はよくわかる。駅舎は改築されたけど、 雰囲気は踏襲されている。つづく市制50周年記念、全国公募論文「これからの三島市のまちづくりについて── 市制百周年に向けて」に応募、佳作入選した拙論「水と緑の情感都市へ」は賞金五万円。拙ブログから再掲。
 http://d.hatena.ne.jp/k-bijutukan/20141116