「塩の羊」

 ネットで話題の戸川昌子「塩の羊」(初出『小説現代』1973年1月号)を『静かな哄笑』光文社文庫1988年初版で読んだ。 思わず惹き込まれる、ビシっと決まる無駄のない文章。畳み込むように鮮やかな転換。そして余韻。巧いわあ。中山あい子の解説から。

《 何が始まるんだろう? と思わせることで、読者の目を釘づけにしなければならない。
  戸川さんはその点、巧い。それは描写力のせいだ。例えば「塩の羊」の初めのシーンなど、まるで映画の導入部のようだ。 》

 その冒頭。

《 十一時に修道院の鐘が鳴った。それが合図のように引き潮がはじまった。
  修道院のまわりは海だった。海の中に、この中世に建てられた修道院がそびえ立っていた。長い年月のあいだには城の役目も したし、牢獄の役目もした。》

 フランスのあの修道院がモデルとは、誰でも思うだろう。

《 戸川さん巧いねぇ、と佐藤愛子さんが、つくづく云った。 》

 おお、『九十歳。何がめでたい』の人が。

《 確実に彼女のファンはいる筈だが、それが十万も二十万もと云うわけではない。だが、戸川昌子は実に巧い作家である。 必ず残り、何時か思い出して、いいもの書いた人だよ、と云われる人だ。 》

 きょう、私は読んでいる。『緋の堕胎』双葉文庫1986年初版にも収録されていた。これには解説はない。

 いい天気。昼前、静岡県知事選挙、期日前投票を済ませる。
 昼過ぎ、特種東海製紙の Pam の「美人歳時記 文藝倶楽部口絵集」展へ行く。FMラジオ・パーソナリティ小坂真智子さんに遭遇。 彼女はここからライヴ放送。後でブログに記事を載せるとか。
 https://www.tt-paper.co.jp/pam/event/543/
 http://777fm.com/personality/2015/05/post-7.html
 帰りがけにブックオフ長泉店で二冊。矢野誠一『人生読本 落語版』岩波新書2008年初版、宮本常一『生きていく民俗』河出文庫 2012年初版、計218円。

 ネット、いろいろ。

《 「塩の羊」、つまるところこれは見立てのミステリなのだけれど、ここまで官能的で、ここまで切実な見立ての連打というものは、 僕のミステリ人生史上初です。何もかもが明らかになった瞬間、思わず変な声が出た。 》 小野家由佳
 https://twitter.com/timebombbaby/status/875690948600111104

《 おらぁ戸川せんせの短編だば、一等「塩の羊」ば好ぎだ 》 松井和翠
 https://twitter.com/WasuiMatui2014/status/875696488680103936

《 しまった、すぐ見たいこの本、あたし持ってないや。図書館だな。……という事態になるのがなぜかいつも休館日の月曜である というマーフィーの法則。 》 大矢博子
 https://twitter.com/ohyeah1101/status/876667125032550400

《 東洋大学附属牛久高等学校の2016年国語の入試問題が届いたのですが、『数学する身体』と塚原史さんの『荒川修作の軌跡と奇跡』 が問題文で、「二つの文章を通して『天命反転』とはどのような解釈ができるか」という出題がありました。おお。 》 森田 真生
 https://twitter.com/orionis23/status/876460729221566465

《 おそらく集団主義の人たちからみれば、芸術表現もまた、文科省型芸術観でいわれる「自己表現」にしかみえないのであろう。 そこでは自己をメディウムにする技術など、想いも及ばれはしない。 》 中島 智
 https://twitter.com/nakashima001/status/876625203039686656

《 子供食堂がある街を車窓から眺めながら
  贅を極めた列車が通る。
  このグロテスクな世相を写生できる人が
  今の日本には皆無ですね。 》

《 こういう人たちは自分が「賢い」と思っていて(実際、教育レベルは相対的に高いんだと思う)、たいていのことはわかってる という自覚の上で、「ちょっとの不正に憤ってもしょうがない」「それよりも現状に適応して利益を」と考えているから、 ストレートな反対論や批判の言葉が届かないんですよね。 》 松本創
 https://twitter.com/MatsumotohaJimu/status/876301005054279680

《 話はずれるけど、父と乳をかけたネタが散見されるけど、英語スラングでもtittie(ティティ)はオッパイの意味で、 さらにカカ(caca)は幼児言葉でウンチの意味なので、授業でティティカカ湖、というと大抵はクスクスと笑いが湧く。 まるでマンコ・カパックと言う時のように。 》 Dr. RawheaD
 https://twitter.com/RawheaD/status/876451224366743556

《 北朝鮮核兵器開発という金がいくらあっても足りない軍事路線を止めて、世界各地からオンボロのコンテナ船を大量に購入して 海岸線に配備する方針を固めた、というニュースがあったような、なかったような。 》