『勘の研究』三

 黒田亮(りょう)『勘の研究』講談社学術文庫1980年初版を少し読んだ。

《 しかして心より来る能はまた無心の能である。模倣を離脱して、自分が主となり、さらに主たる自分が芸に没頭するや、 そこに無心の能が現出する。無心の能は技巧と絶縁した自然であるがゆえに、「さしてなき能のさびさびとしたる中に、 なんとやらん感心のあるところ」があるから、一名これを冷えたる曲ともいい、その道の奥を極めるものでなければ気のつかない 妙境である。 》 「第十一章 世阿弥の芸術」 176頁

 冷える曲……久隅守景『納涼図屏風』。英語の題が『 COOL DOWN 』だとか。
 http://www.tnm.jp/modules/r_collection/index.php?controller=dtl&colid=A11878

《 造作はすなわち技巧である。技巧を離れ、人為を遮断して、自然と冥合したところが妙であり、無心無感の感、離見の見であって、 そのいかなる構造を持っているかは、思議すべからず、言語道断である。 》 「第十一章 世阿弥の芸術」 180頁

《 ここに否定の意を寓している無は、前にも叙べたように、虚無( Nichts )でないことは説明するまでもなく明らかなことであって、 虚無どころか、かえって非常に積極的な内容を有し、万千の変化に転ずべき機を孕んでいるすこぶる含蓄的なあるものである。
  その性質たるや、元来表象的ならざる覚体験であるから、結局われわれ自身悟入するよりほかに把握することはできないものである。  》 「第十一章 世阿弥の芸術」 180頁

 Nichts はドイツ語。

《 世阿弥によれば、いわゆる為手(して)の正位心(しょういしん)たる無心無風の位離見(りけん)の見は、その「せぬ心」に あらわれ、「形なき姿」を借り、「あっといふ重」において主客の現象心に反映する。 》 「第十一章 世阿弥の芸術」 181頁

《 かく「せぬ心」は巧まざる心ではあるけれどその内心は非常に緊張していなければならない。(中略)ただこの心の緊張はどこまでも 自然であることを要し、故意なる技巧に堕するとともに操りの糸が暴露され、能はたちまち死滅するのである。 》 「第十一章  世阿弥の芸術」 182頁

 なんとなくわかる感じ。

 午後、用事が済んだ知人を Pam へ招待。といっても彼女の車に同乗道案内。初めて見る「木版口絵」を熱心に観賞される。 会場にいらした作品提供者の朝日さんご夫妻に久闊を叙す。東京の美術館の人たちも来訪された、と。
 https://www.tt-paper.co.jp/pam/event/543/
 K美術館では2002年1月4日〜2月3日、「木版口絵」展を開催したけど、小規模だった。そのときの案内文。

《 木版口絵は、明治後期(1890年頃〜1912年)から大正初期にかけての約20年間、小説や文芸雑誌『文藝倶楽部』の口絵として 人気を呼びました。その多色摺木版画は、明治前半の西洋化の激しい波の反動として、日本的なるものを求めた一般大衆に歓迎されました。 それは、木版は錦絵(多色摺木版)の技術を受け継ぐ一方、絵画は、伝統的な表現技法に西洋の画法をうまく取り入れた作風に特徴が あります。
  当時、口絵画家の職業地位は、洋画家日本画家に比べてかなり低かったため、また、小説本や文芸雑誌のオマケ、付録という 先入観が付いてまわったため、木版口絵は、最近に至るまで、美術界では忘れられた存在でした。けれども、それが流通していた頃から 約百年を経て、ようやく、その作品の持つ深い味わいが、再発見されるようになりました。
  今回の展覧では、日本画家としての名声を勝ち得ている鏑木清方川合玉堂から、童画の先駆者・武内桂舟まで、知られざる 木版口絵の世界を、約40点の秀作でたどります。
  再評価が始まったばかりの木版口絵を、ご高覧賜りますよう、ご案内いたします。 2001年師走 》
 http://web.thn.jp/kbi/kutiee.htm

 ブックオフ長泉店で二冊。堀江敏幸『なずな』集英社2011年2刷帯付、倉阪鬼一郎『八王子七色面妖館密室不可能殺人』講談社ノベルス 2013年初版、計216円。

 ネット、いろいろ。

《 憧れという"下から目線"、クールな"横から目線" 》

《 本 当 の 意 味 で、意味がわかるというのは、絶対的な無意味と背中合わせで、ある真理に触れることなのだが、通常、 意味がわかると言われる場合には、そのような無意味ギリギリの真理生成への向き合いなんてしていない。一定の規則、 アルゴリズムに従った説明で足れりとして安心することだ。 》 千葉雅也
 https://twitter.com/masayachiba/status/880067766736232448

《 今回の展示に怒りに近い拒絶感を抱く人も、笑う人も、圧倒されて感銘を受ける人もいるだろう。新しいアート表現とは、 おそらくそういうものだ。明確な機能や効果を実現することが目的ではなく、人々の思考を刺激し、既存の価値観に疑問を投げかけること。 永続する方法論も、ある短い期間にだけ威力をもつものもあっていい。アートの「仕事」はそこにある。 》 WIRED
 http://wired.jp/2016/12/12/manifesta-11-zurich/

《 自民「首相は加計追及嫌がる」臨時国会開催を拒否 》 共同通信
 https://this.kiji.is/252372842198779386

《 稲田防衛相「近くに練馬駐屯地もございますので、大変応援をいただいていることに感謝をしておりますという趣旨で 演説を行ったわけでありますが、その中で誤解を招きかねない発言があったことに関しまして、撤回をいたしたい」 》  日本テレビ
 https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20170628-00000010-nnn-pol

《 記者に暴言を浴びせ、数度にわたって被災者を愚弄した今村元復興相でさえ、罷免ではなく依願退職という形が取られた。安倍政権には どうも「非を認めたら負け」という考えが根底にあるように思われる。稲田防衛相を続投させるのも意地のようなものなのだろうが、 その視野に国民はいない。 》 異邦人
 https://twitter.com/Medicis1917/status/879924769574985728

《 アヘノミクズマジック 》

《 週刊新潮は盛りだくさんで売り切れ必至 》

《 漁師コンピューター 》 青木俊直
 https://twitter.com/aoki818/status/879904716062314497