『続勘の研究』

 黒田亮(りょう)『続勘の研究』講談社学術文庫1981年初版、前半を読んだ。

《 いったいに、評者の多くは、世間には厳密の意味において共通に使用される勘の存在することを仮定し、自分の考えている勘は、 これと完全に一致するはずであることを黙認して、議論を進めているようであるが、それは断じて妥当でない。私は勘をもって あくまで通俗語と見、通俗語たる以上は、根本において共通したものを持つことは事実であっても、人々によっていろいろの違った 場面によって着色された違った表現の、使用されることを許さなければならないものと考える。 》 「回顧と展望」26-27頁

《 私のいう対象に内在する那一点(ないってん)は、それが対象全体を代表し、対象はつねにこの点において支えられることを説く 点からすれば、特定の対象は、その那一点において、恒常性を持つといって、さしつかえない。 》 「物の見方と那一点」50頁

《 すなわち、対象も、主観も、静的な位置に置かれる場合と、それらが動的な姿態をとる場合とがある。しかして後者を主として 論ずるのが、私のいう心の力学である。 》 「心の力学──対象論」56頁

《 那一点において対象が受け入れられるときが、紙一重の隔てもなく、主観と対象と直接に接近し、これと合致するときである。 ここに芸術が生まれ、宗教への門が開かれる。理屈にこだわっては、芸術も宗教も成り立たない。 》 「心の力学──対象論」66頁

《 対象をいかなる那一点において把捉するか、ここに芸術活動を爾他(じた)の活動から区別する最も本質的な分岐点が見いだされる。 》  「心の力学──対象論」70頁

《 換言すれば、それぞれの属性は自己に相応した力を放射するが、それらはいずれも一つの焦点に輳合される。この焦点がすなわちその 那一点である。 》 「心の力学──対象論」73頁

《 私は、客観的同一性と主観的同一性との完全なる一致は、対象の那一点においてのみ認められ、それ以外においては起こりえないことを、 信ずるものである。 》 「心の力学──本質論」105頁

 最近山崎ハコの初期の歌唱がやたらに浮かぶ。といってレコードをかけるわけではないが。上記の那一点(ないってん)から連想が働いた。 山崎ハコの歌唱はある時期、暗い、ネクラと嗤われた。いやな気分だった。そんなことも思い出し、暗い→ほの暗い→どす暗いへと飛躍した。 どす黒いではなく、どす暗い。どす黒いだと、そこにはどす黒い輝き、黒い放射が発生する。どす暗いではそのような輝きは霧散している。
 気になり昼食後、コーヒーを淹れて久々に山崎ハコ五枚目のLPレコード『流れ酔い唄』1978年を聴いた。その前耳に浮かんでいたのは、 A面二曲目の「罪」。ハコのブルース心が全開する歌唱だ。伴奏もいい。いや、十曲どれもいい。捨て曲がない。その時々の気分で聴きたい 歌唱は変わる。いやあ、参ったね。スゲエわ。前言翻し。じつにどす暗く、どす黒い。漆黒の放射光。あるいは歌唱のブラックホール爆弾 (意味がわからん)。平成生まれは裸足で逃げ出すか。あるいは立ちすくむか。いや、没入するかも。
 生で聴いたのは沼津の以前の公会堂。ほんと華奢な子だった。その時の感想をどこかの雑誌に投稿、載った。
 人生最悪の時期を山崎ハコの歌唱、味戸ケイコさんの絵でなんとか生き延びることができた。このレコードの帯。

《 今、この歌を歌う。その一瞬に燃えつきてしまいたい…………………… 》
 https://www.amazon.co.jp/%E6%B5%81%E3%82%8C%E9%85%94%E3%81%84%E5%94%84-%E5%B1%B1%E5%B4%8E%E3%83%8F%E3%82%B3/dp/B00ICG7B8S

 午後六時曇天。六時半雨。午後七時前俄に風雨が強まる。台風接近。

 ネット、いろいろ。

《 難しいところで考えが止まった。ここからは発酵のプロセスなので放っておく。別のことをする。 》 千葉雅也
 https://twitter.com/masayachiba/status/882073112698695680

 いろいろなところで「発酵」を目にする。

《 あらゆるアート公募展は、その選抜基準そのものも展示すべきであり、そのために「○○(審査員名)が評価できなかった作品コーナー」 を設けて然るべきだと、かねてから提案している。 》 中島 智
 https://twitter.com/nakashima001/status/881829805833961472

《 「意志」をもって何かをする時能動態が使われ誰かの意志に動かされる時受動態が使われると習うがそのどちらでもなく「偲ばれる」 「思われる」などの出来事の生起が語られる中動態は自分の意志ではどうしようもない状態であり國分功一郎によれば「する・される」 の二元論を超えた別の様態。 》 奥野 克巳
 https://twitter.com/berayung/status/881835462469459968

《 バイト先で、エッジ効いてる主婦パートねえさんが、「このネイル、見て!可愛いでしょ、亀」と、たしかに亀が描かれたネイル見せられる。 「いいね、うち、亀飼ってるんだ」と言うと、「聞いてねー!」と言って去って行った。東京はむつかしい。 》 豊田道倫
 https://twitter.com/mtrock_/status/881887403937456128

《 さて「日本巨乳史」、松坂季実子の話が終わって、イエローキャブ時代へ。今、だいたい10万字くらい。先は長いな。 でも今月中になんとかしたい。 》 安田理央
 https://twitter.com/rioysd/status/881799256696172544

《 内閣支持率を下げるため、必死に踏ん張り続ける防衛大臣の涙ぐましい努力。 》 清水 潔
 https://twitter.com/NOSUKE0607/status/881775912210939904

《 このひとでも防衛大臣を続けられるぐらい、北東アジアは平穏無事なのだろう。 》