『ゲンロン0 観光客の哲学』2

 東浩紀(あずま・ひろき)『ゲンロン0 観光客の哲学』ゲンロン2017年2刷を少し読んだ。

《 カントとヘーゲルナショナリズムの出発点に立ち会った。それゆえ彼らの国家観は、来たるべきナショナリズムの時代における 世界観の雛形となった。そこでは、個人でも家族でもなく、あrたに現れた「ネーション」なる単位こそが、政治と経済と文化の共通項の 基体と見なされたのだ。 》 「第3章 二層構造」 119頁

《 ぼくたちが生きているのは、カントが夢見た国家連合の時代(ナショナリズムの時代)でもなければ、SF作家やIT起業家が夢見る 世界国家の時代(グローバリズムの時代)でもなく、そのふたつの理想の分裂で特徴づけられる時代である。 》 「第3章 二層構造」  120頁

《 現代では、ナショナリズムグローバリズムというふたつの秩序原理は、むしろ、政治と経済のふたつの領域にそれぞれ割り当てられ 重なり共存している。 》 「第3章 二層構造」 123-124頁

《 彼らは、グローバル化そのものが生みだす秩序こそを「帝国」と呼んでいたからである。それは、いわゆる「覇権国家」がアメリカで あろうとなかろうと、あるいはそのような国家が存在しようとしまいと、人類がいまのように経済活動をするかぎり拡大し続けるはずだからだ。  》 「第3章 二層構造」 135-136頁

《 あらためてマルチチュードとはなにか。(中略)けれども、ネグリとハートはそれを、スピノザの哲学などを参照しつつ、帝国の内部から 生まれる帝国の秩序そのものへの抵抗運動(対抗帝国)を広く指す言葉として捉えなおした。 》 「第3章 二層構造」 141頁

《 けれども、ネグリたちは、マルチチュードとは、まさにその分割をしない運動のことだと主張している。マルチチュードは自分の生 (オイコス)から運動を始める。労働や生活の現場から運動を始める。そして帝国の批判にいたる。 》 「第3章 二層構造」 143頁

《 観光客とはなにか。ここまで述べてきたとおり、それはまずは、帝国の体制と国民国家の体制のあいだを往復し、私的な生の実感を 私的なまま公的な政治につなげる存在の名称である。それはネグリとハートが提案したマルチチュードの概念に近い。 》 「第4章  郵便的マルチチュードへ」 155頁

《 観光客を「郵便的」な「マルチチュード」と名指すことは、日常的な語感でもけっしておかしくはない。まず第一に観光客が「マルチチュード」 であること、それはある意味で自明である。 》 「第4章 郵便的マルチチュードへ」 158頁

《 観光客が観光対象について正しく理解するなど、まず期待できない。しかしそれでも、その「誤配」こそがまた新たな理解やコミュニケーション につながったりする。それが観光の魅力なのである。 》 「第4章 郵便的マルチチュードへ」 159頁

《 ルソーもローティもおそらくは誤配の哲学者だったのだ。誤配こそがヘーゲルが見なかったものである、そしてぼくたちがいま回復しなければ ならないものなのだ。観光客の哲学とは誤配の哲学なのだ。そして連帯と憐れみの哲学なのだ。ぼくたちは、誤配がなければ、そもそも社会すら つくることができない。 》 「第4章 郵便的マルチチュードへ」 198頁

 誤配。じつに興味深く刺激的な言葉だ。

 朝友だちからメール「朝からあちーね」。外出したくない。
 午後、意を決して電車で伊豆長岡駅へ。ギンギンの陽射しのもと、ちょっと迷って青木一香展のギャラリー noir へ着く。墨を主体にした 展示物の中で一点だけ軸装した作品に注目。筆先が生き生きと弾んでいる。青木さんにこれが私には一番と伝える。青木さん、「随分昔に 描いたものなの。気に入って軸装し、今回が初公開なの。」と表情を明るして仰る。根詰めた最近の作品からこの筆触へ螺旋状に原点回帰、 といった感想を述べる。この作品に注目してくれたのは、私が初めてだと。そうかあ、他の人は見過ごしているのかあ。案内葉書には 「よろしくお願いします」とあるので、無理を押して訪問したが、行ってよかった。なにせ私より一回り年上だから。

 ネット、いろいろ。

《 汚染水タンクが限界って、そんなの311直後からだれもが予想していた。それなのに、なぜかいつのまにか、廃炉はむずかしい、 汚染水処理なんてできるわけないと指摘すること自体が、福島や復興へのヘイトだと見なされるようになった。言葉狩りしてもなにも変わらない。 そろそろ空気変えるべきでは。 》 東浩紀
 https://twitter.com/hazuma/status/885714887946584064

《 仕事の場(まして外交の場)で、相手や家族の女性の容姿を云々すること自体がとんでもなく失礼で女性蔑視である、 って事がなかなか伝わらない日本では、むしろ「いいカラダした女だ」ぐらいに訳した方が、トランプのこの発言を聞いた米仏国民の 「うわあ~」ってキモチが伝わるかも。 》 Kumiko
   https://twitter.com/Kumiko_meru/status/885747531803615232

《 ついこの間「リア充」って原稿中で使ったら若い編集さんから「ちょっと古い感じがするかもです」と指摘が入り、身の引き締まる思いでした 》  宮澤伊織
 https://twitter.com/walkeri/status/885517106585903104

《 私の嫌いな「元カレ/元カノ」などの言葉も20年後には加齢臭がする言葉になっているかもしれませんことよ。 》 杉江松恋
 https://twitter.com/from41tohomania/status/885796118994472961

《 日本でのリアリズム絵画の動きが云々されていて、その流れを作った一つがアンドリュー・ワイエスの展覧会だったとか言われているけれど、 ワイエスの絵と、今日の日本のリアリズム絵画と言われているもののほとんどは、ぜんぜん、似て非なるものではないか。 》 布施英利
 https://twitter.com/fusehideto/status/885612771936673794

《 諏訪敦さんや、古くは野田弘志さんなど、志高い単体としての作家がいることはある程度知っています。 今回は美術業界のある界隈のノリに対してdisりました。また、僕自身も写真(あるいは石膏デッサン的なるもの)依存を自覚しており、 いわゆる自戒です。 》 会田誠
 https://twitter.com/makotoaida/status/885430021204070400

《 歴史上の人物でいそうな名前選手権

  最優秀賞
  此棟高成(このむねのたかなり)

  金賞
  ケアレ=スミス 》 坊主
 https://twitter.com/bozu_108/status/885741477090910208

《 イナダなんざ、アベシンゾー以下の地底人vs.最低人みたいなもんで、話にならない。 》