『現代詩試論』

 『現代詩試論』後半も読了。凄いわ。私が大学を卒業してから数十年考えてきた到達点を、大岡信は二十代前半ではるかに凌駕している。才能の差だねえ。

《 われわれは世界を感じとる度合に応じて自己を感じとる、という一つの断定の中には、意外に貴重な発見があるようだ。そしてまた、世界と断絶した ところでおのれの宇宙を築こうとしているように見える芸術家たちこそ、この判断を最も強く肯定するもののように思える。 》 「詩の構造」

《 実をいえば、言葉は発明できるものではない。言葉は発掘することによってしか新しい生命をそれに与えることはできないのだ。言葉を発掘する ということは、いうまでもなく、言葉が内に蔵している、すぎ去った歴史や、歴史を形造っていた自然や社会の体臭を、新しい人間の嗅覚によってかぎわけ、 それをぼくらの生活の中へ置きかえることであり、従ってわれわれの記憶内容を豊かにすることである。だからこそ、発掘は創造と一致するのだ。 》  「詩の構造」

《 従って、一人の詩人を判断する最小限の、かつ絶対に欠くことのできない条件は、彼にとっての必然性とは何か、ということと、彼における意識下の 部分とはどのようなものか、ということを可能な限り追求することである。 》 「詩の構造」

《 感動は与えられるものではない。それは引き出すことができるだけだ。 》 「詩の構造」

《 詩人は彼のすべてを詩の中に投入しようとする。詩人に宇宙的、あるいは普遍的感覚が要求され、またそれが詩人の特質とされるのは決して無意味な ことではない。 》 「詩の構造」

《 おそらく、ここに詩のみならず、あらゆる芸術に固有な「形」の秘密がある。感動という、それ自身では形式も質量も持っていない、純粋な力そのものに、 自己を実現する機会を与えるのが形だ。そして、この形を造ることが芸術の究極の目的だといっていい。 》 「詩の構造」

《 詩人の模索は、つまる所、自分の感じとったある衝動を最も完全に現実化することのできる形を模索することにほかならないだろう。これは極めて 物質的な問題であると同時に、極めて形而上的な問題でもある。 》 「詩の構造」

《 詩人の麻痺状態は詩に明らかに反映している。それは形象の無意味な並置に現れ、思想ではない観念へのもたれかかりに現れ、何よりも、発語本能の 強烈な泡立ちを感じさせない停滞したリズムに現れている。 》 「新しさについて」

《 詩にとって必要なことは、周囲の現実の等価物を提示することでは毛頭なく、言うならば現実の意味の等価物を読者に提示することだ。 》 「新しさについて」

《 言葉の表面に引寄せられるのではなく、言葉の背後へ抜け出てしまうほどの衝動を持つべきである。 》 「新しさについて」

《 社会的問題を歌って深い感動を与えるとすれば、それはその詩人の社会問題に向う意識が、意識下の詩的衝動にまで深く根をおろしているからに 外ならぬ。 》 「詩観について」

《 ある芸術作品が純粋であるということは、素材が純粋であることではない。雑多な素材が、その素材に対しては、これ以上の処理方法がないと思われる仕方で 組織化されているとき、ぼくらはそこに純粋をみる。 》 「純粋について」

 ふう。『現代詩試論』、再読を否応なしに促す本だ。

 寝る時にはエアコンを切る。この夏初めて寝苦しく、早めに目が覚めた。といっても八時間寝たが。きょうも猛暑日35.5度。部屋こもり。昼寝。

 ネット、いろいろ。

《 似て非なるもの
  絶版と品切れ


  絶版にはクエストを呼ぶ浪漫あり
  品切れにはお使い失敗の悲哀あり


  絶版は男をたぎらせる
  品切れは女を怒らせる


  絶版は盛林堂書房で税込1万円
  品切れはマケプレで送料別1円


  だが友よ、見誤るな
  絶版は返品の果て
  品切れは完売の果て 》 猟奇の鉄人
 https://twitter.com/kashibaTIM/status/900848914848391168

《 「安倍政権」と「東南アジア的縁故主義」を比較すると見えてくる“問題点” 》 辻田 真佐憲 文春オンライン
 http://bunshun.jp/articles/-/3681

《 有史以来、1番 人間を殺してきたのが「政治と宗教」。

  だから、「信じろ」と言う方が無理。 》 デーモンまぐれ
 https://twitter.com/Demonmagure/status/900497540126310400

《 いやな都政だなぁ 》

《 東京オリンピックは都内でやらないでください! 》

《 罪務省の厄人 》