小原古邨

 ヤフーで小原古邨(おはら・こそん)を検索すると、約345,000件も出る。信じがたいことだが、2000年ではたった18件しかなかった。ウィキペディアには 当然未掲載だった。戦後、文字通り忘れられた日本画家、木版画絵師だった。K美術館の紹介ページは数年前までは上位にあったが、どこへ押しやられたか。
 http://web.thn.jp/kbi/koson.htm
 二十年ほど前の前世紀末、某画廊で小原古邨の木版画『柿に烏』に遭遇した。画廊主は「古邨」と記された号の他には絵師の情報は何一つ持っていなかった。 その絵に私は一目で惚れた。「カラスは嫌いだが、この絵は好きだ」と購入。古邨とは何者か。読み方も不明なまま月日は過ぎた。ある時某展覧会図録の年譜に 古邨の名前を発見した。調べていくと、なんと横浜そごうの平木浮世絵美術館でつい最近まで(1998年10月3日〜11月23日)展覧会が催されていた。おっとり刀で 行き、受付で図録を二冊購入。後日買いに行った人の話では閑古鳥が鳴くさびしさだったとか。また、ここで展示した下図、画稿、試刷、版画(計143点?)を 出身地金沢市の石川県立美術館へ業者が売り込みにいったところ、「知らないから要らない」と断られたと人づてに聞いた。さもありなん。
 風向きが変わったのは、2001年のオランダの国立アムステルダム美術館で催された「小原古邨」展だ。それに呼応してオランダのホテイ出版から『小原古邨 全作品集』が商業出版された。日本の代理店、神田神保町八木書店のパンフレットの古邨の記載に誤りがあるのでメールで指摘したところ、資料がなくて K美術館の紹介文を引用したら間違って写してしまった、と返事のメールが来た。なんだかなあ。
 平木浮世絵美術館の図録『小原古邨の世界 西洋で愛された花鳥画』の森山悦乃学芸員の力のこもった解説から。

《 海外で古邨が好まれたのは、構図や色彩はもちろんのこと、それを版画にする上での筆の冴えを減ずることなく忠実に表現しようとした彫師と摺師の技術にも 高い評価が与えられていたのである。江戸時代を経て積み重ねられてきた高度な技術は、ぼかしなどの木版画独特の表現技法に止まることなく、琳派たらしこみや、 水墨画的な筆のかすれなどを表現するまでになっていた。 》

 その前段で森山悦乃学芸員は書いている。

《 また、山本鼎は、写真を用いることは「複製的の企図を遂ぐるには最も確実な方法である」が、あまりに原画の濃淡、筆致などが明瞭になることが欠点である と指摘している。しかし、古邨の版画においてはこの欠点が却って活かされ、古邨の特徴である色彩の微妙な濃淡、写生に基づく明瞭な筆致が鮮やかに再現される ことになった。 》

 一昨日話題の審美書院と國華社の木版画に魅了された理由の一つが明かされているような。
 小原古邨の画稿(原画)も見ているが、木版画のほうが印象鮮烈。見た限りでは肉筆画を欲しいとは思わなかった。それにしてもこんなに人気になっているとは。
 2007年『版画芸術』135号阿部出版は特集「知られざる木版画絵師  小原古邨/小林かいち」。秋田真波編集長がK美術館を訪問され、当館所蔵の木版画を 借りていった。目次頁から特集頁、七点が掲載されている。小説家寮美千子女史がK美術館で手にして驚嘆した二点、「波状の燕」「稲穂と雀」について 掲載された彼女の文章から。

《 K美術館にお伺いして見せていただいたとたん、心を鷲づかみにされた。写生に基づいた限りなく博物画に近い筆法、でありながら決して「図」ではなくて、 それは紛れもなく「絵」なのだ。日本画の独特な空間構成が、西洋的な博物的手法とあいまって、清潔で清澄な色香を漂わせている。 》

 そして「裁断前の三切判」。

《 まだ切り離される前のこうした状態で現在4種類が確認されている。 》

 「波上の燕」「裁断前の三切判」は、ネットには未掲載。寮さんをはじめコレクターがやっきになって探しているが、まだ見つからないようだ。

 二十年前に出合い、十年前に美術雑誌に紹介され。五年前、テレビ東京開運!なんでも鑑定団』が地元清水町で開催されるにあたり出品を依頼され、小原古邨の 「裁断前の三切判」を提案。後日ディレクターから電話。中島誠之助から「これから騰がるから出さないでほしい」と言われた、と断られた。そして今年。感慨一入。

 『浮世絵芸術』144号国際浮世絵学会2002年を何気なく開いていると、山田奈々子「「文芸倶楽部」口絵総目録」。その解説の掉尾「口絵の終焉」から。

《 読者の要望に応えて口絵を付け、その購買力に支えられ、二十年間掲載し続けていた「文芸倶楽部」の木版口絵であったが、とうとう大正時代の初めに 他の印刷術にとって変わられる時が来た。(中略)しかし本当の原因はそのような経済的、技術的なものではなく、雑誌を読む人の層が二十年の間には変わり、 人々の嗜好も日本画から洋画の移って行くのを止めることは出来なかったことにある。 》

 二十年の間に変わる、か。

 ネット、いろいろ。

《 北朝鮮が29日5時58分頃、弾道ミサイルを発射したことを受け、テレビ各局は特別編成でミサイル関連を報道した。しかし、テレビ東京は7時30分までに ミサイル報道を切り上げ、人気アニメ「けものフレンズ」の最終回を予定通り放送した。 》 ニコニコニュース
 http://news.nicovideo.jp/watch/nw2945198

《 そもそもJアラートごときで起こされたって憤ってるヤツは二流

  一流はそのまま寝てる 》 あらきムラムラ(真田丸モード)
 https://twitter.com/arakissunne/status/902319509226176512

《 国内政治の論点は、経済問題や憲法改正にあるようですが、それよりもっと大きなフレームを一切報道しないことで、再び日本は間違った舵を大きく切ろうと しています。日本の大きな問題は、誤った外交政策にあるのは間違いありませんが、それすらわからないほど、自浄作用が欠如しているのです。 》 高城剛
 https://twitter.com/takashiro_bot_/status/902440153947414529

《 ゾーニング有害論 》 Mizuryu BLOG
 http://b.dlsite.net/RG11464/archives/52525902.html

《 辻田真佐憲もこの寄稿の中で指摘しているように、問題は「文化に政治を持ち込むかどうか」ではなく、「文化と政治の結びつきはどのようなものであるべきか」 である。 》 かまやん
 https://twitter.com/kama_yam/status/902061542950109184

《 ダイナマイトで不倫相手と心中した母親の墓。映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』の台本を供えてくれたのは、な、なんと、柄本佑さん(撮影も)。 岡山の山奥まで歩いて行ってくれたそうだ。涙が出る〜。母親もあの世でびっくりしてるんじゃないだろうか。 》 末井昭
 https://twitter.com/sueiakira/status/902146341031206912

《 戒名なら「退学後流浪惨生諦念居士」だナ 》 赤城毅
 https://twitter.com/akagitsuyoshi/status/902172685844627458