「日本近代詩の流れ」

 大岡信「日本近代詩の流れ─詩論の展開」(『詩の本 I 詩の原理』筑摩書房1967年初版、1970年7刷、収録)を読んだ。先月末の大岡信の「「現代詩」の成立 ──「言語空間」論──」が昭和初期からの展開を扱っていたが、それまでの明治十五年からの流れを論じている。

《 明治維新と同時に生まれた生粋の明治人夏目漱石が評した、明治の開化の「外発性」は、本来風土からの自発的開花であるはずの文芸にも、大きな刻印を しるしていた。異質な文明との激突、それの巧みな摂取は、摂取が巧みであればあるほど、どこか大きな歪みが生じるはずであったが、しかし明治の人々は、 そのような未来の見通しを思い患う余裕はなかった。余裕がなかったのは、相手の強大な力に迫られていたからにちがいなかったが、また、相手の魅力が あまりにも大きかったからでもあった。
  こうして、極端な欧化主義と、国粋保存の叫びとの交替あるいは共存が生じ、結果として双方の独特な混血のくりかえしが、現在にいたるまでの 日本近代文明を特徴づけるものとなったのである。 》 31-32頁

《 意識的、自覚的な国詩革新運動は、周知のように明治十五年(一八八ニ)八月刊行された『新体詩抄』によって始まる。 》 32頁

《 (北村)透谷の悲劇的な死は、ある意味で、『若菜集』(明治三十年)の詩人島崎藤村の誕生への序曲であった。 》 43頁

《 明治三十年代前半の詩は、島崎藤村の抒情詩の新声と、土井晩翠漢詩書き下ろし調の雄弁体による理想主義的、観念的詩風によって代表される。 》  46頁

《 「明治の歌」をうたうことは、意外に困難な問題をはらんでいるということが、ようやく三○年代に入って自覚されてきたのである。 》 53頁

 そして蒲原有明の詩「茉莉花(まつりくわ」(『有明集』収録)。
 http://www.midnightpress.co.jp/poem/2008/03/post_33.html

《 『新体詩抄』が出てから二十五年ほどで、日本の詩はこのような幽暗繊細な美意識の結晶を生みだすところまで、急テンポで進んできたのである。 》  62頁

《 日本の場合、じつはこの関係が逆転していたのである。文学思潮がヨーロッパからの輸入思想を軸にして動いてきたため、自然主義思想が実際に根のある ものとして自発的に起る以前に、象徴主義の観念が輸入されてしまったのだった。 》 76頁

《 このように見てくると、象徴主義の思想が、この後も繰り返して近代・現代詩史に出没する理由も察しがつくだろう。 》 76頁

《 萩原朔太郎が明治の詩に「生活」がないといって否定したのは、いいかえれば、明治の詩につきまとっていた形式主義的な美意識を否定したということ だった。 》 79頁

 高村光太郎の詩「人に」を引用して。
 http://www.aozora.gr.jp/cards/001168/files/46669_25695.html

《 このような日常語の、一見無技巧的な、しかしじつは呼吸のリズムを慎重に計算した形式をもつ口語詩が、大正のはじめの年に書かれていた。それは 屈折に富み、複雑なリズムをもち、いきらでも饒舌であり得る可能性を秘め、生硬な観念語をさえ、うねるようなリズムの中に溶かしこんでしまう包容力を もった、真の意味での「自由詩」の誕生だった。『道程』一巻は、口語自由詩が芸術的な意味で文語定型詩の及び得ないさまざまな領域まで、その触手を のばし得ることを立証した最初の成果だったのである。 》 86-87頁

 明治〜昭和の近代・現代詩の展開の概略がつかめた。大岡信はその後、『現代詩人論』角川選書1969年、『蕩児の家系 日本現代詩の歩み』思潮社1969年、 『1900年前夜後朝譚 近代文芸の豊かさの秘密』岩波書店1994年などで深く広く掘り下げていった。

 朝、源兵衛川中流部、下源兵衛橋上流両岸のヒメツルソバを除去。伸び盛りの茎なのですぐ切れて根まで抜けない。ま、こうして切っていけば弱る。 土嚢袋八分目。一汗。
 午後、知人の店にエッコラ自転車を漕いでいくと臨時休業。おいおい、ツイッターにも書いてないじゃん。大場川の岸辺に数株の彼岸花。秋はすぐそばに。 寄り道してイトーヨーカドー三島店の本屋へ。中公文庫の小泉喜美子『殺さずにはいられない』は未入荷。秋用のパジャマを買う。なんだかなあ。 お疲れモードで帰宅。コーヒーを淹れる。ほっ。

 ネット、いろいろ。

《 そんな記者に給料を払う必要は無い。東京新聞以外の記者が望月さん並みの質問をしないなら、購読を打ち切れば良い。それで赤字に追い込まなければ、 新聞社も記者も気が付かないだろう。 》 春橋哲史
 https://twitter.com/haruhasiSF/status/904233385995812865

 ウチは東京新聞

《 ナチスの手口に学んだ?らしい?スローガン

  この他に、オリンピックを政治利用したのはアドルフ・ヒットラー
  もう怖いくらい似てる
  似てるというと怒る人いるけど、学んだんだから よくできました、ですよ 》 ひろみ
 https://twitter.com/hiromi19610226/status/903741864364224512

《 えっ、そこを彫るんですか?儚い芸術…“鉛筆の芯アート”が繊細すぎる! 》 FUNDO
 http://fundo.jp/157436