『メイキング』ニ

 ティム・インゴルド『メイキング  人類学・考古学・芸術・建築』左右社2017年初版を少し読んだ。

《 さまざまなつながり方で、この回転は何度も出現する。実際、前章で民族誌的な資料(横方向)と人類学的な生成変化(縦方向)の区別を考えたときにも、 わたしたちはすでにこの回転に遭遇していた。知覚に関していえば、世界に対する視覚的な関係と触覚的な関係の区別に根拠を与えるものだ。その区別は、 前述の触覚性というかなり異なる経験を説明してくれる。世界との視覚的な関係は、決して眼が介在する知覚に限定されるのではない(触覚的な関係もまた、手だけに 限定されない)。創造性にかんしていえは、その視点の転換を意識することで、作業における即興的な創造性の姿が見えてくる。 》 「第二章 生命の素材」  53-54頁

 朝、白砂勝敏さんとメールの遣り取りをしていて、新たな着想を得た。一昨日「知層を掘り抜く」を書いたが、知層、地層のその先の予感に、知質、地質が浮かんだ。 芸術特に現代アートと呼称される作品は、知質を渉猟(横方向)しているものではないか。今世紀の芸術は、地質を掘削(縦方向)していくものではないか、と。 地質学とは言葉は重なるが、意味は違う。その後上記引用に出合い、共時性を感じた。

《 わたしたちは、つくること(メイキング)を「プロジェクト」として考えることに慣れている。達成したいと思った頭のなかの観念や、それを達成するための 生(なま)の素材を準備するところから、それははじまる。そして、素材が意図した形をとったとき、完了する。 》 「第二章 生命の素材」 54頁

《 この考え方に代わって、わたしはつくることを「成長」の過程だと考えたい。そうすれば、最初からつくり手を能動的な物質の世界に囲まれた参加者に 位置づけることができある。彼はそれらの素材を使って作業をする。そして、ものをつくるプロセスのなかで、何が現れるのかを予測しつつ、それらを寄せ集め、 バラバラに解き、統合し、精製しながら、「物質」と「力を合わせる」のだ。(中略)彼にできる最大限のことは、すでに地上で起きている現象のなかで── 植物や動物、波や水、雪や砂、岩や雲のなかで──既存の活動力やエネルギーに自身の推進力をつけ加え、うまく取りなしてみせることだ。 》 「第二章  生命の素材」 55頁

 白砂さんの最近作「水の記憶」シリーズを連想させる。
 http://shirasuna-k.com/gallery-2/memory-that-water-has/
 また、昨日とりあげた拙文「見出された、かたち」と同様のことを語っている、よなあ。
 http://shirasuna-k.com/gallery-2/wood-sculptures-chair/

《 人間が事前にもののデザインを持つかのように、学者たちがくり返し書いてきたので、人びともそう考えるようになってしまった。そして、コンセプチュアル アートや建築における或る立場の人たちは、この推論を極端なまでに押し進めてきた。この立場は、もの自体を過剰な何かにしてしまう。すなわち、それは先行する デザインの表象──派生した複製──以外の何ものでもない。形状に関するすべてのものが事前にデザインされるのであれば、、どうしてそれをわざわざつくったり する必要があるのか。 》 「第二章 生命の素材」 56-57頁

 ネット、いろいろ。

《 世界で初めてウナギの産卵場所を発見した東大大気海洋研究所の塚本勝巳教授著「世界で一番詳しいウナギの話」を読んでるが、「はじめに」読んだだけで もうこの本絶対に面白いと確信した。 》 Nirone
 https://twitter.com/Via_Nirone7/status/926771433442762752

《 時代を変えた狂信的右翼の系譜 》 鹿島茂
 https://allreviews.jp/review/1100

《 アカデミックなあり方とは異なる野蛮さと上品さを兼ねた圧倒的読解力との評を見て思うことは、小林秀雄吉本隆明柄谷行人中沢新一も アカデミックな厳密性という意味では色々と言われてきた人たちだし、いつから学者の真似事みたいなのが偉いってことになったのだろうかと不思議な気持ちになる。  》 上妻世海
 https://twitter.com/skkzm/status/926396172587081728

《 同性愛やトランスなど問題がクィア・セオリーだけど、障害の問題を逆手に取るようにさまざまなやり方で考えるのが、クリップ・セオリー crip theory。 検索してみてください。 》 千葉雅也
 https://twitter.com/masayachiba/status/926596962794606592

《 いわゆる「伝統社会」と呼ばれる部族集団で見られるのが、ボトムアップ型でフレキシブルな社会制度である。近代的な社会制度に生きる人々は、しかし 「逆じゃないか」と考えてしまいやすいが、実際には、近代的社会制度くらいボトムアップが成り立ちにくい制度はない。 》 中島 智
 https://twitter.com/nakashima001/status/926709153086693378

《 翻訳の問題として、形而上学と物理学というのは、形而上学と形而学、もしくは物理上学と物理学じゃないとおかしい、さらにダンテのコメディが「神曲」なら、 バルザックの同じくコメディは「人曲」と訳されるべきだ(もしくはダンテのは「神喜劇」)という指摘、よく言われることだが改めてそうだな。笑 》 M
 https://twitter.com/freakscafe/status/926725322287882240

《 「男性だから性欲が強い」とか「実は女性の方が性欲強い」みたいな性別で性欲を語る偏見、たまに聞くけど考え方が古すぎてビックリする…。 どんな性であれ同じ人間なんだから、男性も女性もグラデーションみたいに性欲強い人薄い人いるし、どんな人だって性欲湧く日もあれば湧かない日もあるでしょ!!  》 佐伯ポインティ
 https://twitter.com/boogie_go/status/926377360923824128