『ヴァテック』

 ウィリアム・ベックフォード『ヴァテック』牧神社1974年初版を読んだ。副題は「亞剌比亞譚」。まさにアラビアンナイトを彷彿させる奇譚だ。 訳者矢野目源一の解題(1932年11月10日)から。

《 本書は珍籍と称すべきものの一つである。普通の大ざつぱな文學史などには、その名も發見することはできないが、いづこの國の文學にも珠玉の如く珍重される 隠れたる作品といふものがある。本書はさういふカテゴリイに入れられるものの一つである。 》

《 言つて見れば、これは千夜一夜物語の面白味を一巻に凝集したやうな性質のものである。 》

 挟み込みの冊子、生田耕作「ウィリアム・ベックフォード小伝」から。

《 外国文学紹介においてもっぱら新訳が尊重される一般的風潮のなかで、およそ半世紀以前の旧訳を再登場させることはアナクロニズムのそしりをまぬがれない ことを承知の上で敢てこの企てに踏みきったのは、(中略)いまひとつ、いわゆる新訳なるものが、例外はあるにせよ、えてして〈改良〉ではなく〈改悪〉につながる 危険をはらむ昨今の事態にたいする一つの反省の意味をも含んでいる。(中略)昨今はびこっている無味乾燥な新訳類に比して、味わい深い〈文体〉を有するという 一事だけをとり上げても矢野目訳の今日に甦る意義は充分であろう。 》

 同感。ネットでは古川日出男『アラビアの夜の種族』に言及している書き込みがあるが、私も連想した。文章の引率力も似ている。そして1782年に執筆された 『ヴァテック』から半世紀以上離れているが、エミリー・ブロンテ嵐が丘』(1847年)の人物造形に通じるものを感じた。似ている、感じたではお話にならんが、 専門家ではないので考証などはしない。

《 ウィリアム・ベックフォード 『亜剌比亜綺譚 ヴァテック』 矢野目源一 訳/補訳・校訂: 生田耕作 》 ひとでなしの猫
 http://leonocusto.blog66.fc2.com/blog-entry-1362.html

 朝、源兵衛川の月例清掃へ。いつもの人たち五人が集まる。

 ネット、いろいろ。

《 食べているあいだは無料だけど食べ終わったらお金ください。これを日本語で無償化という。ついでに言えば、武器は防衛増備だし輸出は移転で 原発がらみの事故は事象。共謀罪テロ等準備罪で戦闘行為は武力衝突で墜落は着水。すがすがしいほどに剥きだしで本能的な政権だと思う。 》  森達也(映画監督・作家)
 https://twitter.com/MoriTatsuyaInfo/status/928864830617829376