千葉雅也『動きすぎてはいけない』河出文庫2017年初版を少し読んだ。著者は『莊子』の「胡蝶の夢」の新しい解釈を引用して語る。
《 ドゥルーズにおける「生成変化を乱したくなければ、動きすぎてはいけない」という箴言を、あたかも『莊子』の一部であるかのように扱ってみよう。すなわち、 「動きすぎる」とは、世界全体を「道」の糸によって無限に速く縫い合わせ、万物斉同にすることであり（接続過剰）、逆に「動きすぎない」生成変化とは、 区別＝切断された個々の自己充足──これはセルフエンジョイメントに相当する──のスイッチとしての物化であるとしたら、どうだろうか？ 》 「第１章 生成変化の原理」 81頁
《 生成変化のレトリックでは、一方では、純然たる知覚しえぬものが、想定されているかのようである。これは「一元論」の極であるといえよう。しかし他方では、 互いに区別されること以上の本性を持たない「微粒子」のような匿名者と、それらの関係のみを考えている。こちらは「多元論」の極である。前者は〈万物斉同の 匿名性〉による一元論であり、後者は〈区別のある匿名性〉による多元論、〈切断され、分離された匿名者の多元論〉である。 》 「第１章 生成変化の原理」 85頁
《 生成変化は、歴史性からの超脱ではない。「道」を極めるのではない。生成変化は、歴史のディテールに対する多角的な批判・批評（クリティーク）なのである。 》 「第１章 生成変化の原理」 86頁
《 生成変化とは、関係＝述語の束における変化であり、それは出来事の束における変化である。そしてこの場合の微粒子とは、出来事を実現する関係＝述語に おいて、形式的にのみ区別される諸々の「変項」である（ゆえに、物理的な素粒子ではない）。 》 「第１章 生成変化の原理」 89頁
《 ドゥルーズ＆ガタリは、分析不可能性──事物すべての渾然一体＝接続過剰──と、唯一に正しい分析可能性という両極を斥けて、多様な分析可能性を確保 しようとしている。ドゥルーズ＆ガタリの「微粒子」論は、分析＝分離されうる諸関係の「束」の、分析＝分離可能であるがゆえの「組み変え」可能性を肯定するのに 役立つ、と考えられるのである。
本稿では、以下〈関係束〉というイディオムを用いることにしよう（別々の関係＝述語＝出来事たちの並立）。分析＝分離されうる関係束、それに対応する 個体は、別のしかたでの関係束＝それに対応する〈組み変わり〉を起こしうる──これが、生成変化の原理である。 》 「第１章 生成変化の原理」 100-101頁
以上すごく気になる箇所を引用したが、はて、どれだけ理解できたか。できてねえなあ、と実感。そう安易に理解できるはずがないわ。けれども、何度も読めば、 どこかしら像を結ぶ予感。悪寒ではない、理解の予感。急ぎすぎてはいけない。
グレアム・ハーマン『四方対象 オブジェクト指向存在論入門』人文書院2017年初版を近くの本屋で受け取る。帯の惹句。
《 「本書は私の頭を、ここ20年占めてきた馴染みの思想と、今後の20年占めるであろう馴染みのない思想の双方の完全な縮図となっている」 》
すごい自信だ。では読んでみようとなるわ。
午後、馴染みの女性二人を源兵衛川を最上流から最下流〜温水池まで案内。街なかにこんな（自然豊かな）川の風景があるなんて、ほんとステキ、と喜ばれる。 よかったあ。
ネット、いろいろ。
《 一人娘に注ぐ母親の夢に乗っかって、小学生でピアノの個人レッスンに行ったけど、挫折した先生に追い返され、中学生で買い与えられたフルートは 音も出ず、チャンバラの刀となる。
高校生の時にギターを買って貰ったけど、大人の事情の気まずさの中でケースから出されることもなく消えていった。 》 蒼木 樹里
https://twitter.com/erorist_juri/status/930717357990748161
《 全体性を生起させながら、同時に全体性を瓦解させる部分の併置とは、心的には、部分としての詩句群や、部分としての形態群、あるいは音符群が、 それ自体として自律的に全体性を成り立たせていく運動のなかで、それを書く／描く／奏でる主体が溶解していくような、〈非知〉への回帰なのである。 》 中島 智
https://twitter.com/nakashima001/status/930494315159097344
《 問い「ドゥルーズは民主主義者か？」を踏まえた上で、これまた民主主義者なのかハッキリしないアレントの政治思想と中動態（的な政治概念）との 関係を考えてみる必要がある。この課題を乗り越えないと、現代の政治理論はなんかゴチャゴチャ細かいことをいろんな論者について論じているだけになる。 》 國分功一郎
https://twitter.com/lethal_notion/status/930696894292090880
