『擬( MODOKI )』

 松岡正剛『擬( MODOKI )』春秋社2017年初版を読み進める。いやあ、興奮する。ワクワク。

《  このとき蕪村は覚悟して芭蕉を継承し、芭蕉の二つのヒントを正面に掲げることにした。ヒントは一に「言ひおせて何かある」、ニに「高くこころを悟りて 俗に帰るべし」である。

  一の「言ひおせて何かある」は、表現できたからといってそれでどうしたの、何かをまっとうしたのという問いだ。 》 「第二綴(てつ) きのふの空」 15頁

《  それは、どんな仕事も「あらわれている」を「あらわす」に変えようとすることで成り立っているということだ。
  文明も芸術も、経済も文化も、知識も学習も「あらわれている」を「あらわす」に変えてきた。そうみなしていいだろう。この「あらわれている」と「あらわす」 のあいだには、かなりの変換がおこる。内なる「あらわれ」が外なる「あらわし」に変わるからだ。そこにはときに杜撰(ずさん)に見えることも、ちぐはぐも あべこべもおこってきた。 》 「第三綴 エクウソフォニー」 22-23頁

《 おおそれながら、ぼくはずいぶん以前から世間とは付き合いきれないと思ってきた。 》 「第四綴 顕と冥」 30頁

《 ぼく自身が根っから杜撰なのである。(中略)だから、そういう手続きが嫌いなぼくは、なるべく予約や申告をしないように生きてきた。 》 「第四綴 顕と冥」  31頁

《 葛藤や矛盾の渦中から何かを始めたり発見するのではなく、葛藤や矛盾を取り除いた残りのオプションだけで仕事をするのが嫌なのだ。(中略)こんな身勝手な 見方がその後になるにしたがって急激に増したのは、学生時代に埴谷雄高の『不合理ゆえに吾信ず』を読み耽ったせいだったろう。 》 「第五綴 予想嫌い」  52頁

《 考えてみれば、もとより歴史はさまざまな横取りの歴史だったのである。占拠、簒奪、侵略、植民地、クーデター、強姦、ハッキング、万引、みんな横取りだ。 横取りは占有や特権の歴史の秘密にかかわることすべてに及ぶ。 》 「第六綴 レベッカの横取り」 62-63頁

《 横取りと模倣など、いささか物騒な話をしてきたように思われるかもしれないが、むろんそうではない。ぼくは根本的な話をしているつもりだ。その根本は 社会の根本にとどまらない。生存の根本へ、生命の根本にまでとどく。 》 「第七綴 模倣と遺伝子」 72頁

《 九万年前のヨーロッパ人とアジア人の分岐は何をもたらしたのか。多様な言語と文明と、そして民族や人種をもたらした。バベルの塔が崩れたのだ。それで どうなったかというと、ここからは地球史と環境史と生物史と人類史と文明史が重なった。 》 「第八綴 ミトコンドリア・イヴ」 94頁

《 歴史は「世」でできている。(中略)日本語の「よ」のほうは「世」とも「代」とも綴る。この「よ」はいろいろのものになる。人の一生も君が代も、国が 一定の支配を受けている期間も、時代のことも、仏教の前世・現世・来生という過去・現在・未来も「世」であって「代」なのである。(中略)なぜわれわれは そのような「世」と「代」による歴史をアーカイブしてきたのだろうか。これはミトコンドリアや遺伝子のせいとは思えない。為政者がメモリアルを残したかったのだ。  》 「第九綴 歴史の授業」 97-98頁

 午前、清住緑地の草刈りに参加。都留文科大の学生たちと一汗。
 午後、沼津市のカフェレストラン、ブルーウォーターのエントランスを会場に展示している河合隆男(彫金)、細田裕紀(昆虫写真家・焼きもの)二人展へ 友だちと再訪。私が特に注目するのは、細田さんの数ミリの昆虫を題材にした香炉や急須。ほとんど人目につかない小さな昆虫を数センチ大に拡大し、 取っ手部分に取り付けたものは、おそらく誰も制作したことがないだろう。これは意外に面白い。三万円からのお値段だが、女性の食いつきがすごく、よく売れる。 これは盲点。焼きものにもまだまだ活路がある。オススメ。今月三十日午前まで。
 http://the-blue-water.com/

 ネット、いろいろ。

《 昭和歌謡から平成J−ポップへ   - ヒット曲から見た日本のポピュラー音楽史 - 》
 http://zip2000.server-shared.com/kayoukyoku.htm

《 国立遺伝学研究所の川上浩一教授らのチームが、ゼブラフィッシュの幼魚が餌のゾウリムシを見たときの「思考」の視覚化に成功した。動画で紹介。 》  WIRED
 https://wired.jp/2013/02/05/zebrafish-thoughts/
 https://twitter.com/koichi_kawakami

《 山本太郎さんの手法もいいよね。こう攻めたんだ。「籠池夫妻に逃亡の恐れはありません。100万円を返そうと総理の近くに現れたぐらいです。ですから、 逃亡の恐れがあるのではなく総理の前に度々現れる恐れがあるの間違いではないでしょうか」そうやって笑わせ、敵が油断したところに斬り込んだんだ。 》  立川談四楼
 https://twitter.com/Dgoutokuji/status/938969107340279808

《 国と青森県の取り決めで、核燃サイクルを放棄すれば、青森県内で保管している使用済み核燃料を県外に搬出しなければならない。搬出先を見つける為に 汗をかく官僚・政治家は存在しないだろう。最早、完成は問題ではなく、青森県内に使用済み燃料を置いておく口実としての事業継続でしかない。 》 春橋哲史
 https://twitter.com/haruhasiSF/status/939270544066732032

《  日清カップ焼きそば友邦 》 米澤穂信
 https://twitter.com/honobu_yonezawa/status/938783680998150147

《  今日の誤変換:
  「大丈夫経」← 大乗仏教 》