ポール・ヴァレリーのどこかの文章に”世界はひとつではない。”という一文があった。いろいろな意味に使われそうな一文だが、年があらたまって記憶に浮上。
カラリストと呼ばれる安藤信哉の絵の筆触に印象派の痕跡を見、彼らの絵にはよく言われるように影=漆黒がない。それをなんとなく物足りなく感じていて、 では味戸ケイコさんの絵はどうだろうと昨秋から考えていた。かといってカラヴァッジョに始まると言われる「闇の芸術の水脈」(宮下規久朗)ともどこか違う。 そんな五里霧中の中で読んでいたポール・ヴァレリーの文章でこの一文”世界はひとつではない。”に出合った。
印象派〜安藤信哉らの絵は、”ひとつの世界”を描いている。私に妄言を吐かせれば、古今東西殆どの絵は”ひとつの世界”を描いている。味戸ケイコさんは ”ひとつではない世界”を描いている。こうも言える。”未知なるもうひとつの世界への回路”が無意識に、本人の自覚なく描き込まれている。異次元世界と出合う SF絵画や幻想絵画、ファンタジー絵画は時空の裂け目、異境、異貌の世界を描いているが、殆どは”ひとつの世界”観に収まっている。
味戸ケイコさんの絵画は、(全てではないが)対象の一次表現に留まらず、画面からはるかに超脱してゆく。その超脱をある鑑賞者は敏感に感じ、コワイという。 そのコワイという印象は、「恐い絵」(中野京子)と称される絵画とは全く違う。味戸さんの絵画は「闇の芸術の水脈」とも「恐い絵」とも異なる独特の相にある。 直覚のみがその相の魅力に惹かれるような。闇の深淵とも宇宙の深遠とも時空の裂け目とも違う奥深さ、超脱する魔の回廊。あれ、「虚無回廊」(小松左京)か。
http://web.thn.jp/kbi/ajie.htm
《 けれども味戸の絵は深く人々の心に沁み、決して消えることはなかった。それどころか、こうしてあらためて見たとき、味戸の絵は、いまもう一度その役割を 取り戻しつつあるように思われる。(中略)そしてこの漆黒の闇。その底はいったいどこへ続いているのだろう。 》 椹木野衣『日本美術全集 第19巻』小学館 2105年初版、「味戸ケイコ 解説」273頁より
今朝の最低気温、午前7時19分に-3.6℃。日が上ってから冷えるとは。布団から抜け出した8時で-2.0℃。冷え〜。
テレビは処分したけど東京新聞は継続。『週刊現代』と『週刊ポスト』の広告が目を引く(まず惹かなきゃしょうがないが)。
『週刊現代 』”「負」動産を「富」動産に変える” 手放すなら今年が最後のチャンス!
『週刊ポスト』”「定年後」のお金 大正解はどっちだ?” 退職金 老後資産運用 相続 住宅ローン 移住 生命保険 墓
切ない五十代が見えるよう。
CDタワーを徐々に崩していったら、『 ROYAL BAND DE THIES / KADIOR DEMB 』(ロイヤル・バンド・ド・ティエス)なるセネガルのCDが出てきた。 なかなかいい。なぜ忘れたのだろう。健忘症か老化か。
http://elsurrecords.com/2013/02/07/royal-band-de-thies-kadior-demb/
https://www.youtube.com/watch?v=S2u-Qup3U-A
ネット、いろいろ。
《 『実在への殺到』の英訳、第一章が出来てきたのだが非常にリーダブルでクリアであることに感動。。 まだ論考としてはこれからどんどん難しくもなるのだが、これで世界中の識者を巻き込んで展開できる見通しが少しついた。 》 清水高志
https://twitter.com/omnivalence/status/948781326932500482
海外の反響が楽しみ。あれ、アマゾンでは誰も評を投稿していない。
《 異なる時代が、同時的に存在することをエルンスト・ブロッホは「非同時的同時性」と呼んだが、どの時代も常に、幾重にも異なる時代が重層的に共存しており、 単に、「今」だけではなく、重層するそれぞれの「持続」を問わなければ、歴史は見えてこないだろう。 》 千坂恭二
https://twitter.com/Chisaka_Kyoji/status/948388471814504448
《 明治維新から敗戦までが77年、敗戦から今までが73年になったのに昭和生まれのわれわれはまだ戦後のほうがはるかに短いと思ってるラジね。 》 PsycheRadio
https://twitter.com/marxindo/status/948340870520086528
《 これひっくり返した方が今の状況に近いかも。
「政治なき理念」「富なき労働」「快楽なき良心」「知識なき人格」「商業なき道徳」「科学なき人間性」「崇拝なき献身」 》 小林伸光
https://twitter.com/nobkoba/status/948760518008832000
《 自己完結ブログ 》