『道元の見た宇宙』ニ

 岩田慶治道元の見た宇宙』青土社1985年2刷、後半へ。「第三章 道元の時空」から。著者は絵における図(柄)と地(背景)を比喩に使う。

《 われわれの時空とその背後にひろがる時空、諸相と非相、この世とあの世、時の「柄」と時の「地」を同時に展望することの出来る地点に立つ。それが瞑想の 目的であり、修行の到達点なのである。 》 189頁

《 自他の共通の根拠を問う。そうすると「尽十方界是真実人体」、つまり全世界がわたしの身体、という答えがかえってくるのであった。自分とは何者だろうか。 木だろうか。虫だろうか。魚だろうかという問いにたいして、常に「その通り」、「然り」という答えがかえってくるのであった。そこのところが「われを排列して われわれを見るなり」の意味である。世界の全肯定である。それがもっとも端的な知の世界であった。 》 191-192頁

《 それぞれの時といったが、それは時のかたち、時の「柄」についてそうなのであって、時の「地」は人間も、草木も、牛馬も共通している。その時の「地」に 参与する。万物共存の時のなかに歩み入る。その時を「同時」といってもよい。(中略)時は心、かたちとこころとは、「柄」と「地」の関係にあたる。 どちらをどちらにとっても不都合はない。どちらにしても、それらの只中に参与してみると、それらはそれらを見る人の眼のなかで変換する。 》 192頁

《 道元は海の波の立場に立たないで、水の立場に立っている。さまざまな波の形をうけもち、それをそうあらしめている水の立場。 》 193頁

《 時の「柄」から時の「地」に参与してみる。そうすると、その何処にも昨今などというものはない、ということである。 》 194頁

《 ここのところも、自分の生が、生きるという行為のなかに残りなく滲透していく。自分が外にむかって拡大しきって、宇宙人間になってしまう。そういう参与の 歩みのなかで考えれば、何ひとつむずかしいことはない。そういうイメージにそって考えるだけでもよい。 》 195頁

《 そしてそうなってくると、時間というわれわれの日常の尺度は身体の内部に呑みこまれてしまって、生きる、収斂し、拡散するという行為しか残らないことになる。 (中略)「無時」のなかの出来事なのである。そういう「無時」のところではじめて、日常生活が創造に転ずるのである。 》 195頁

《 道元の時空は存在の座標、思考の枠組みとしての観念ではなかった。それは自分を支え、受け止めてくれるものであるとともに、同時に、他者を受けとめ、 支えるものであった。万物共存の場といってもよい。そこに過去・現在・未来はなく、場のひろがりは無限定であった。そこで仏と衆生、神と人間が共存し、王と乞食が 語り、古人と今人が出会ったのである。人間と草木・虫魚・鳥獣・魚介が共生するところでもあった。昼と夜、天国と地獄、あの世とこの世がその上に建立されている 土台なのであった。(中略)つまりはそれらの事物の背後にひろがる深層の時空だったのである。そういう時空を道元が語ろうとしたのではなかろうか。 》  207-208頁

 以上、「第三章 道元の時空」から。つづいて「第四章 道元の宇宙」から。

《 常識を超えるということは、部分に注がれる視角、一面的なものの見方を捨てて全体を見るということでもある。そしてもちろん、見られる対象だけでなく、 見る側の自己も全身全霊で見なければならぬ。 》 218

《 あらゆる現世の束縛をはなれて、正身端坐のかたちをとることによって、おのれ自身を透明な鏡に転化する。それがものを曇りなく見る場所なのである。 》  220-221頁

《 自分が自分を見るということは、仏と自分が対面することである。その対面する、対面できる場所が「同時」という場所である。(中略)そういうわけで、道元は ここで時という鏡に映るものの姿を描写してやまない。 》 243頁

 「第四章 道元の宇宙」は、私にとって道元理解の最も難解な箇所を論じている。が、わかった、とはやっぱり言いかねる。理解能力の限界。座礁気分だが、 満潮になれば脱出できよう。その時の熟成を待つ。急ぐことなない(急がないとあの世へ逝ってしまうかな。いや、急がば回れ、だ)。

 26日の日録に草野唯雄「女相続人」を探求本に入れてあったが、角川文庫で持っていた。ボケボケ。

 午前二時、風雨が止む。若い女性たちが笑いながら歩いていく。
 午前九時、お天気雨。洗濯物を家中に干して正解。以後ずっと不安定な空模様。
 午前十時、某骨董市へ行っている友だちからメール。某銅版画家のメゾチント作品の画像を添付。それから電話。私は買わない、と返事。二級品はいらない。
 午後、真夏日。来訪者二組。絵を語り合い、絵について語り合う。

 ネット、いろいろ。

《 店内作業していたら、シャッターがものすごい勢いで揺れだした。もう来たか!思ったら、知り合いが叩いていただけだった…。 》 古書現世
 https://twitter.com/wamezo/status/1023108152940617729

《 警察の歩道封鎖により自民党正面では、最初たった一人のみがプラカードを掲げている状況だった(19時39-51分) - 2018.7.27 東京都千代田区 》 秋山理央
   https://twitter.com/RIO_AKIYAMA/status/1022998785679450112

《 いくつかの段階があったと思いますが、特に重要な転機は、安倍首相が東京五輪招致のプレゼンスピーチで「アンダーコントロール」 「汚染水はブロックされている」とウソをついた時、在京大手メディアが自社の利益に目がくらんでそれをウソだと指摘しなかったことだと思います。 》 山崎 雅弘
 https://twitter.com/mas__yamazaki/status/1023080986601381888

《 本の側面にきれいな絵を描く「小口絵師」の世界最後の1人に迫ったムービー 》 Ggazine
 https://gigazine.net/news/20180729-hidden-art-fore-edge-painter/

《 昨日三音家小浅丸師のご厚意で故三音家淺丸が仲間たちと創り上げた河内音頭の歴史的名演『悪名』より「朝吉喧嘩旅」音源をユーチューブにアップ。 音盤が全て廃盤なのが残念だが、この男を知らずして河内音頭を語るなかれと言うほどの名人であり革命児だった淺丸。おれにとっては第一級の世界音楽家だ。 》  offnote
 https://twitter.com/offnote_info/status/1022242885721178113
 https://www.youtube.com/watch?v=iGoLB4Tubfw

 このLPレコード盤、持っている。私には無縁な世界。

《 「ポーランドの自然災害は洪水と共産主義だけだ」てなことをポーランド人の方が言ってたけど、日本は災害大国なので地震津波・噴火・豪雨・台風・豪雪・五輪 と盛りだくさんである。 》 柞刈湯葉(イスカリユバ)
 https://twitter.com/yubais/status/1023187121102704640