『道元の見た宇宙』三

 岩田慶治道元の見た宇宙』青土社1985年2刷、最終章「第五章 道元と現代文明」を読んだ。「3 知の位相」の項が手強い。けれども、文章の力に導かれ、 納得へ傾く。

《  二つの世界を〈柄〉と〈地〉としよう。
  われわれの住んでいる世界は、〈柄〉と〈地〉からなっている。〈柄〉は、」いうまでもなく、模様であり、形である。一方、〈地〉は、生地であり、形なき空間 である。非パターンといってもよいだろう。
  われわれの住んでいる世界を、絨毯にたとえれば、そこに〈柄〉があり、〈地〉がることはすぐわかる。タタ糸とヨコ糸が織りあげられて〈柄〉と〈地〉を つくっているのである。(中略)
  すこし仏経風にいえば、〈柄〉は諸相、〈地〉は非相ということになる。(中略)諸相と非相とで全宇宙、全世界が尽くされているわけである。 》 265頁

《  もう少し比喩をすすめると、〈柄〉と、〈地〉は、〈生〉と〈死〉ということになる。正確にいえば、〈生の世界〉と〈死の世界〉である。〈生きもの〉と〈霊魂〉 といってもよい。この場合、〈霊魂〉というのは、(中略)ある種の空間なのである。〈地〉なのである。 》 266頁

《  枯葉が散り、鳥が落ち、獣類が死んでいく。人も死ぬ。そこでは、生のタテ糸と死のヨコ糸がないまぜに織りあげられているのである。そういう場が、私という 〈柄〉にとっての〈地〉なのである。
  そこでは、〈柄〉が〈地〉によって支えられているように、〈生〉は〈死〉によって支えられていたのである。
 〈柄〉としての〈この世〉と、〈地〉としての〈あの世〉の関係もまったく同様である。 》 267頁

《 われわれは二つの世界、〈柄〉の世界と〈地〉の世界を生きている。二つの世界は、二つであるけれども同時に一つである。この一つの世界を〈柄〉の側から見、 また〈地〉の側から見る、そうすると一つの世界が二つに見え、また、一つに見える。 》 267-268頁

《  第一の知は〈柄〉を認知する知である。(中略)
  第二の知は、〈柄〉としての形を、その向こう側にある〈地〉に投影することによて得られる知である。(中略)
  宗教の知はひとたびはこの地点を通過しなければならない。 》 268頁

《 第三の知は、〈柄〉と〈地〉が交替する、あるいはその所在を交換するところに誕生する知である。行って戻る、戻ってまた、行く。その往復運動のうちにキラめく 知といってもよい。常と無常を往復する。現世と他界をゆき来する。天国と地獄を往来する。どうしてそんなことをするのかといわれても、それはわからない。恐らくは 二つの世界の風光がとりどりに人を魅惑して止まないからであろう。その風光のなかに捨身する。そうすると二つの風光が一つになって、ともにキラキラと息づき はじめるのである。 》 270頁

《  それゆえに、その衝動にかられて、道元は自分自身を脱落世界に落下させ、今度は──同時に──そこで翻転して現実世界のなかに跳出した。
  これが、「心身脱落、脱落心身」という言葉によって表現された風光ではなかろうか。 》 271頁

《  そこから万物が誕生する。第三の知は創造の知といってもよい。
  やさしくいえばこの知は包む知である。自他を包み、生死を包み、現世と他界をお包む。天国と地獄を包む。
  いうまでもなく、われわれの生活にとっては、第一、第二の知はともに大切である。しかし、第三の知こそ道元がその生涯をかけて追求し、弟子たちを励まして、 この知を内側から眺望する場所にたどり着かせようとしたものであった。 》 271頁

 岩田慶治道元の見た宇宙』読了。

 沼津市の花火を見に行くので、掃除機をかけるのを夜から朝に変更。ちょっと動かしただけで汗〜。一休み。掃除機〜汗〜。ふう。九時で31.8℃。

 ネット、いろいろ。

《 中田考先生の文体から学ばせてもらったことで、あとすごく大きかったのは、信仰について語るときはズバリそのもの、手加減無しでいいんだということ。 「相手に分かってもらえないかも」と相手をナメて「分かりやすい」文章にしてしまうと、神がぼやける。 》 牧師・沼田和也
 https://twitter.com/numatakazuya/status/1023598591128952833

 『正法眼蔵』も手加減無しの著作だろう。

《 昔、ある雑誌の対談記事で「ヴィトゲンシュタイン」が「美と幻視単位」と書き起こされてしまったのに、編集者も校閲も誰も気付かなかったという事件が あったそうだ。よっぽど難解な話をしていたのだろう。 》 MAE
 https://twitter.com/CHE_M26_7/status/1023780392606691329

《 海外小説の翻訳、「新訳は古い訳よりベターである」というのは、新訳にはこれまでの蓄積や研究が反映されるから間違いではないけれど、 文体の力というものがあるから古い訳が劣っているということはない、のくだりに大いにうなずく。そして、用意された資料で様々な訳者の文章を読み比べ。 》  masako
 https://twitter.com/ifgsister/status/1023184458420088832

 『カラマーゾフの兄弟』『ハックルベルフィンの冒険』などで旧訳新訳の比較を読んで、こりゃあ旧訳のほうがいいや、と思った。

《 古本屋には人の顔を覚えるのが苦手な人が多い。一説には、生きている人に興味がないからだというが、相貌を認識する脳の部位が本を識別するために 使われているからかもしれない。 》 澄田喜広 古本よみた屋
 https://twitter.com/sumida01/status/1023387363718782978

 人の顔を覚えるのがひどく苦手。25日に案内した台湾の女性。去年案内してくれた、と。覚えてないよお。そんな場合の返事。あなたのような美人なら忘れる筈が ないけど・・・年だなあ。人見知りなので顔をまともに見られない。

《 税務署から届いた「よくわかる消費税軽減税率制度」というパンフは元号で統一されていて(表紙に西暦との対照表あり)、平成31年10月だの、平成35年だの、 しまいには平成41年とかいう非実在世界の話をしている。 》 山岸真(P.N)
 https://twitter.com/ymgsm/status/1023385910136602625

《 安倍政権と日本会議神社本庁の繋がりという問題の深刻さは、組織や人脈等の形式ではなく、こうした「価値観の共有」や「その共有が引き起こす多様性の否定」 「ただ一つの絶対的価値観への拘泥」などで、間違った道を進んでいても後戻りできないこと。間違いを認められない。 》 山崎 雅弘
 https://twitter.com/mas__yamazaki/status/1023096147819225088

《 安倍が辞めたらみんな目が覚めるよ。なんで安倍だったの?って 》 woojiro
 https://twitter.com/woomogwai/status/1023727900644663296

《 以前のこのツイートが注目されているので付け加えておくと、「天に対する義務」とは「各人が己れのいのちを全うすること」だ。それ以外はないし、 国家はいっさい関係ない。 》 森岡正博
 https://twitter.com/Sukuitohananika/status/1023505949049290755

《 ピアノ置いてるBARで彼氏が即興で椎名林檎弾いて、それにバイオリンで合わせて最高なグルーブを女の人と生み出してるの控え目にいって かっこよすぎるんだけど、性行為を超えた理解を旋律の調和で成し遂げているようで控え目に行って浮気よりムカついた 》 かまたまる
 https://twitter.com/kamata_erai/status/1022797299146059777

《  隅田川花火大会副音声。
  いとうせいこう「一日伸びて、皆さん予定が変わってる。みうらさんもボブ・ディラン見に行くつもりだったんでしょ」
  みうらじゅん「俺はフジロックに行ってボブ・ディランの役でステージに立つはずだった。しょうがないから本人が出て来るみたいですけど」 》  いのじゅんAMテレ東
 https://twitter.com/inojun1001/status/1023506488050864134