『性食考』四

 赤坂憲雄『性食考』岩波書店2017年初版、「第七章 大いなる口」を読んだ。

《 それを思えば、たとえば肉体の表層を覆った皮膚を、自己と世界とをわかち隔てる境界と見なす思考の、なんと皮相的なものであることか。皮膚とはそもそも、 多孔質の、つねに外なる世界によって浸透されている、呼吸する境界ではなかったか。それにしても、食べることは生きることであり、生きることは食べることだ。 だからこそ、肉体と世界との相互依存性がもっとも凝縮されたかたちで露わになるのが、食べる行為であるのは、あまりに当たり前であったか。そして、 「大きく開けた、かじり、引き裂き、噛む口」のなかで、人は世界と出会い、他者を味わい、身体の内に摂り入れ、みずからの一部とする。まさしく口腔のなかこそが、 人が世界との豊穣なる交換=交歓を果たす、小さな劇場なのかもしれない。 》 256頁

《 食物という不思議。食べることは他者を摂りこむことだ、という峻厳な現実。食べることの原風景には、外なる世界のかけらを噛み砕き、飲みこむこと、 それゆえに他者との一体化または同化というテーマが絡みついてくる 》 261頁

《 むしろ、他者を摂りこんで、それと同化することは、すでに変容への予感に裏打ちされているのではないか。同化/変容はやはり、表裏なすテーマなのである。 》  264頁

 「第八章 生け贄譚」「終章 愛の倒錯」を読んだ。

《 人間は性において、また食において、交わる動物であることを記憶しておこう。いくつもの交わりの風景が、性と食がせめぎ合う現場に秘めやかに転がっていた。 そのいくつかを、手探りに確認してきた。わたしはくりかえし、食べることが、交わることや殺すことと交叉する場面に、あくまで非対称の権力関係や構造がむきだしに 姿を現わすのを目撃してきた気がする。 》 「終章 愛の倒錯」324頁

《 さて、難産というわけではないが、それなりに長い漂流のはてに、このかたちに到り着いた。 》 「あとがき」328頁

 中村雄二郎『述語的世界と制度』岩波書店1998年を連想。『性食考』読了。

 ネット、いろいろ。

《 『歎異抄』と言えば誰でも知っているフレーズ「善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」である。悪人正機。これについて著者はこう述べる。 《 親鸞がこの逆説を口にするに際しては、師法然の言葉を反転させることで、この一節を思いついたという事実が知られている。法然は黒田入道宛ての書簡のなかで、 十悪五逆を犯した悪人でも往生が可能であり、そのためにはまず信じることが重要であると説いた。彼は続いて、どんな小さな罪であっても犯すべきではなく、 犯した罪は反省しなければならないと述べた上で「罪人ナホムマル、イハムヤ善人オヤ」と書きつけていた(「黒田の上人へつかわす御消息」)。 『歎異抄』の著名な一節は、この法然の言葉を意図的に反転させたものである。》(同前)

  ムマルは浄土に生まれるという意味。なるほど、そうだったのか。小生、以前から「善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」の「善人なを」の「なを」 にひっかかっていたのだが、法然の「罪人ナホ」の置き換えということなら素直に分る。 》 「親鸞への接近」daily-sumus
 https://sumus2013.exblog.jp/30035494/

 四方田犬彦親鸞への接近』から寮 美千子『ノスタルギガンテス』への四方田犬彦の評へ。

《 古代の中国に混沌という、目も口も耳もない化物がいて、あるとき人が哀れに思って、彼に穴を開けてやった。すると混沌はその日のうちに息絶えてしまったという。 『ノスタルギガンテス』の結末は、この昔話を想起させる。と同時に、現代芸術が芸術として命名されないかぎり芸術たりえないという、別世紀の不幸な状況に対して、 ある註釈行為を行なっている。この長編を形作っているのは、こうした二つの力であるように、わたしには思われる。 》 『ノスタルギガンテス』(パロル舎)
 https://allreviews.jp/review/1126

 『ノスタルギガンテス』1993年刊、再読したくなった。寮 美千子さんは『版画芸術』135号阿部出版2007年、特集「知られざる木版画絵師 小原古邨/小林かいち」に 「古邨・その静寂に満ちる「動」」を寄せている。

《 K美術館にお伺いして見せていただいたとたん、心を鷲づかみにされた。 》

《 古邨の魅力がひとたび知られれば、燎原の火の如くその人気は広がり、高まっていくことだろう。 》

 それから十年余。明日から茅ヶ崎市立美術館で小原古邨展。
 http://www.chigasaki-museum.jp/exhi/2018-0909-1104/

《 ノーベル賞の功績を上司に奪われた科学者、時をへて賞金3億円の科学賞を受賞するも「賞金は寄付」 》 Gigazine
 https://gigazine.net/news/20180907-bell-burnell-physics-nobel/

《  重要なのは、予め答のある問題を解くというゲームに習熟することではない。
  思考の抽象度を上げ、原理的なレベルで問いを持続することである。そうすれば、問いが「解ける」のではなく「腑に落ち」ていく。
  そうして、問うことが身体化した知性だけが、都度の工夫と創発を生む力能を備えるのである。 》 +M
 https://twitter.com/freakscafe/status/1038014412634841088

《 「ボランティア」の単位認定、ツッコミどころが多すぎて言葉を失う。労働の対価として、カネの代わりに単位で支払われるというかたちになる。 運営側の腹は痛まない。それにしても、大学はいろんなかたちで食い物にされつつあるな。 》 末近浩太
 https://twitter.com/suechikakota/status/1037630275071561728

《 この国を見ていると、首相になるためには、英語も日本語もできない方が有利みたいですね。 》 池田清彦
 https://twitter.com/IkedaKiyohiko/status/1038045294972157952

《  銀行ATMしかない7イレブン
  レアだけど
  こ れ は ひ ど い 》 MS 撮り鉄 病み 音鉄 ゲーム
 https://twitter.com/hmdskm01300606/status/1037964880022630402