『脱近代宣言』五

 清水高志・落合陽一・上妻世海『脱近代宣言』水声社2018年初版、「第3章 現象to現象の世界へ」を読んだ。昨日第二章を面白さてんこ盛りと記したが、 最終章の第3章はさらに面白く、富士山級。引用したい箇所が多すぎる。で、少しだけ。

《 落合 こうしたこれまでの関係性の逆転というのはおもしろいですね。弊ラボは、「人間」は「自然」であるという解釈は採らないんです。つまり、人間は 「波動」と「物質」と「情報」があるだけの存在で、今の人とインターネットが知的に接続された世界では「人間」はこれまで僕たちが考えてきたような「人間」 ではない、という考え方です。 》 220頁

《 上妻 近代化された人間が多自然論なりデジタルネイチャーを理解するには、操作の概念が必要で、それで変換していくっていう概念が必要で、それをしないと なかなか実感できない。 》 261頁

《 清水 多様な解釈に開かれているというだけのコンセプチュアル・アートを批判して、デューリングは作品は何より「プロトタイプ」という性格をもつものじゃ ないといけないという。まずそれがあって、後からその用途がさまざまに見出されるような作品。批評家になるな、まず手を動かせ、物をつくれっていう落合くんの モットーは、プロトタイプを作れってことなんだな。 》 266頁

《 落合 本当に大切なのは、「現象to現象」ですよ。言語に一度ハマってしまうと、もうダメです。 》 269頁

《 清水 結局、哲学も人類学もアートも技術も、同じ方向へニ一世紀は、行きつつあるという確信を僕は得たな。 》 270頁

《  上妻 僕には今のアートが、過去の文脈に沿ってほめられようとする技としか思えないのでおもしろさを感じないものが多いですね。
  落合 過去の文脈にそってほめられようとする技なんですよ。だから「とりあえずデカイものをぶちこんでおくか」みたいな。「これは壮大なアートだな」となる。  》 282-283頁

 二十世紀をどっぷり生きてきて、そこから抜け出そうと試行(思考)している私には、じつに新鮮な光明を感じる鼎談だ。要再読。

 朝、日曜美術館「特集・小原古邨」を人さまの家のテレビで視聴。1998年平木浮世絵美術館で展示された作品は紹介されなかった。重ならないようにしたのだろう。 入門編だが、ま、最初はこんなものだろう。

 ネット、いろいろ。
《 築地のターレ引っ越しが西部警察か大都会に見えてるヲッサンはワシだけ? 》 殲艦長 狗神りょう‏
 https://twitter.com/inugami_ryou/status/1048743326784974848

《 前2RT:築地市場ターレの移動画像がたくさん流れてくるのを見ていて「なんだろうこの既視感……」て思ってたんだけど、マッドマックスだった (乗車してるおっちゃん&にーさんたちの猛者ぶりも含めて)。V8! V8!(違 》 橋本麻里
 https://twitter.com/hashimoto_tokyo/status/1048766155718938624

《 特に野心的な解釈や新しい切り口のないただの「解説」なら、まともな研究者か批評家に書かせればいいものを、こういう怪しげなライターのところに 仕事が行ってしまうところに、美術批評の衰退を感じる。自戒も込めて。(ちなみに、この解説はかなりかなりテキトーです) 》 黒瀬陽平
 https://twitter.com/kaichoo/status/1048424791567298560

《 「マルセル・デュシャンと日本美術」展の第2部「と日本美術」の部分は、そこだけをとりあげると「今年観たワースト「美術」展」筆頭候補です。 展示品の数々はトーハクの名品故に、個々の作品は抜群に見応えあります。展示を観たあと「この展示観て、デュシャン嫌いにならないでお願い(切実)」となった 》  rhythmsift
 https://twitter.com/rhythmsift/status/1048576038572154880

《 「日本=先進国、中国=発展途上国」という20世紀的発想は、もはや通用しない 》 岡ロ基ー
 https://twitter.com/okaguchikii/status/1048597185237925889

《 【筑摩書房 近刊情報10/12発売】戸川昌子『緋の堕胎』(ちくま文庫)
  これは悪夢か現実か。独自の美意識に貫かれた淫靡かつ幻想的な世界を築いた異色の作家。常人の倫理を遥かに超えていく劇薬のような短篇9作。読んだあと、 あなたの常識と倫理は崩壊する、官能ミステリの女王の最強傑作集。 》 筑摩書房
 https://twitter.com/chikumashobo/status/1047390961096044544

 第一部の六篇は、『緋の堕胎』双葉文庫1986年初版と同一。第二部の三篇は、『ブラック・ハネムーン』双葉文庫1984年初版に収録されている。