『空間へ』四/小泉喜美子(閑人亭日録)

 磯崎新『空間へ』美術出版社1979年8版(1971年初版)を少し読み進める。以下気になった箇所を少し。

《 空間は物理的形態ではなく、それが人間の行為と関係したときにはじめて存在するという認識は、必然的にフィジカル・パターンとアクティヴィティ・パターンの 対応関係の分析へ導くであろう。その統合の操作が、すなわち都市デザインとなるのである。 》 「都市デザインの方法」 118頁

《 われわれは、ここでもはや実体そのものを取り扱っているのではなく、その表象と状況を、いわば認知しえた仮象だけが相手になる、という場所にふみこんでいることを明記しておかねばなるまい。同じく都市空間とよばれても、ここでは決して形態をもったものとはなりがたい。むしろシンボルの分布濃度といったほうが適切なくらいである。 》 「都市デザインの方法」 120頁

《 かくして都市空間は場に存在する記号の濃度とながれによって表現されることになる。 》 「都市デザインの方法」 127頁

《 都市は視覚化されたものだけでなく、不可視のものが充満していると考えなおしてみると、都市を方法として再編成できると同時に、具体的なイメージにも直接的に下降することが可能になるのではないか。 》 「都市デザインの方法」 127-128頁

《 揺れ動いて固定しないイメージを《見えない都市》とよんでもいい。 》 「都市デザインの方法」 128頁

 イタロ・カルヴィーノマルコ・ポーロの見えない都市』河出書房新社1977年初版を連想。やや、既読だった。記憶にない。都市ならぬ歳か。

《 ぼくにはヨーロッパの建築空間は、内部の空間に外光をひきこむ技法の展開の歴史ではなかったかと思えるときがある。 》 「闇の空間」 154-155頁

《 日本の建築空間を「闇の一元論」とよぶことは可能だろう。 》 「闇の空間」 159頁

《 すなわち、人間のノーマルな知覚の対象となる三次元的な実体の空間をその中心の軸にすえるとすれば、一方の極に「闇」のイメージにつらなる深層心理学的・ 魔術的・象徴的な空間の系列があり、他の極に「虚」のイメージにつらなる、記号的・抽象的・多次元的な空間の系列があるということになる。 》  「闇の空間」 164頁

 「闇の空間」の短い章は、私にさまざなま発想を呼び寄せる。読了後、じっくり再読したい。

 つりたくにこさんの思い出。月刊雑誌『ガロ』青林堂でつりたさんが闘病中であることを知り、励ましの手紙を出した。そして京都深草のご自宅へお見舞いに上がった。 お手製のトンカツをご馳走になってしまった。それからも手紙を出した。そして1986年の師走、寒い晩に前触れもなくご主人が来訪。駐車している車には猫。それで理解。つりたくにこさんは亡くなった。一年半前に亡くなったけど、君からの手紙に逝去を知らせることができず、墓前に上げた、と。夜空を見上げた。涙は頬を伝った。
 手元には会葬御礼。あれから三十年余。作家は死してもいい作品は遺り後世に評価される。そして原画は海外の美術館でも展示される(二年先だが)。

 同じ1985年にはミステリ作家小泉喜美子さんが亡くなった。生前お目にかかったのは一度きりだけど、小泉さんから電話や私信は何度も。本も。逝去を新聞で知った。 ご母堂から終の棲家(マンション)を案内された。形見分けに数冊の所蔵本をいただいた。その彼女の著作が没後三十年の2016年以降八冊も文庫で出版。いい作品は 時代を超える。
  『血の季節』宝島社文庫 2016/8/18
  『殺人はお好き?』宝島社文庫 2017/2/10
  『痛みかたみ妬み』中公文庫 2017/3/25
  『殺さずにはいられない』 中公文庫 2017/8/25
  『月下の蘭/殺人はちょっと面倒』創元推理文庫 2018/2/23
  『女は帯も謎もとく』光文社文庫 2018/4/12
  『殺人は女の仕事』光文社文庫 2019/1/10
  『ミステリー作家の休日』光文社文庫 2019/9/11

 調べ物で季刊『銀花』文化出版局の古い号を見ていたら『第二十一号 春』1975年、176頁に「一九七四年の限定本ベストテン」なる記事。第四位に『沖に立つ虹』 堀口大學著、限定三百部、吾八ぷれす刊。先だって書いたが、『銀花』の紹介で欲しかったけど高くて手が出なかった。最近古本で安く入手。82番。

 ネット、うろうろ。

《 吾妻ひでお(本名:吾妻日出夫)、かねてから食道がん治療中でしたが、2019年10月13日未明、都内の病院で永眠いたしました。享年69歳。 ここに謹んでご報告申し上げます。合わせて永年の読者の皆様のご支援と励ましのお言葉に改めて御礼申し上げます。 》 吾妻ひでお
  https://twitter.com/azuma_hideo/status/1186149786287632385

《 吾妻について、いろんなところからコメントを求められている。セミリタイア状態が長かったが、吾妻を忘れないでいてくれてありがたい。 》 いしかわじゅん
  https://twitter.com/ishikawajun/status/1186193910265073666

《 スペインの中部~北東部の農地をドローンで撮影した写真集。 http://bit.ly/2VVOecx スペインの近代絵画の三大巨匠であるピカソ・ミロ・ダリの抽象画を 連想させる。複雑な地形の場所で、土壌と水分が多い凹所などでオリーブや麦を栽培していることを反映。撮影者はハンガリーの Milan Radisics 氏。 》  Oguchi T/小口 高
  https://twitter.com/ogugeo/status/1185481671547609088

《  ナチスの隆盛について、
  「ナチがユダヤ人差別なのは知っていたが、社会的ストレスのガス抜きのため『たまには』いいかと思ってナチ党に投票した。後で、まさかあそこまで迫害政策が エスカレートするとは思っていなかった」
  という当時の市民の回顧は、どの時代、どの社会にも通じる、怖い話だと思う。 》 マライ・メントライン@職業はドイツ人
  https://twitter.com/marei_de_pon/status/1185350685459484673

《 宮田亮平、佐渡に伝わる彫金技術を家業で受け継いでいるのか。。そういや自分明治天皇の佩剣かなんか作ってた橋本一至が先祖にいたみたいだけど、 もう少しましなの作ってたぞ。。 》 清水高志
  https://twitter.com/omnivalence/status/1186252420529049603

《 テレビ中継見ててまず目に飛び込んでくるのは皇后の台座のほうが小さいということだよね。天皇は日本国の象徴であり、天皇は男系男子であるわけだから、 日本国では男子のほうが女子より社会的地位が大きいという家父長制由来思想が、これ以上ない形でクリアーに視覚化されたというふうに見えるね。 》 森岡正博
  https://twitter.com/Sukuitohananika/status/1186519544556220416

《 もともとこの即位礼では明治以前では皇后は横に立ち並びませんでした。これは明治以降、西欧の君主制との「互換性」を重視して、西欧にならったものです。 しかし、一方で明治憲法体制では女帝の存在を否定しました(前近代までは8人の女性が天皇になっています)。 》 住友陽文
  https://twitter.com/akisumitomo/status/1186522481114267649

《 案の定、朝からNHKがずっと特別番組を流している。雨音すら聞こえない渋谷のスタジオで「奉祝」気分を盛り上げようとする空気と、 その画面の周辺でずっと流れ続ける被災地での災害情報。そのあまりの対照ぶりに違和感を覚える視聴者は少なくないはずだ。 》 原武史
  https://twitter.com/haratetchan/status/1186432265393328129

《 「昭恵は決してドレスコード違反ではない!」という閣議決定が出そうだなw 》