『空間へ』十(閑人亭日録)

 磯崎新『空間へ』美術出版社1979年8版(1971年初版)を読む。

《 とすれば、この建物のなかにいわゆる建物という枠をふみきっていく、ひとつの手がかりのようなものをどれだけ仕込むことができただろうかというのが、 建物が完成した現在、問われるべきである。 》 「梱包された環境」 425頁

 「建物」を「茶碗」に置き換えると、北一明の初期作品論になる。

《 ぼくは、建物のもつ内部空間を、光の濃度分布の状態として意識化しようとしてきた。(中略)図書館の設計をすすめる過程に、すべての空間の質の決定になんとか 光がその内部に侵入する方式で想定してしまおうと考えていたのである。 》 「梱包された環境」 426頁

 「内部空間」「内部」を「見込み」に置き換える。

《 ぼくにとってヨーロッパの伝統的な石の建築とのまじわりは、室内に石が用いられても、それは抑制された光線によって外部の強烈な光線のもととはまったく異質な 肌ざわりを、計画的に内部に実現しうるというもっとも初歩的発見であった。 》 「梱包された環境」 427頁

 北一明の茶碗につながる。

《 むしろ、コンクリートが、光に照らされたときの陰影によってはじめていきいきしはじめるように、これらの色彩も、光と化して、はじめて人間の知覚に強い作用を 与えるようになる。とすれば《光になった色彩》と強く言いかえるほうがいい。 》 「梱包された環境」 429頁

 北一明の耀変茶碗。

《  性こりもなく、ぼくは日本万博の会場基本計画の作成に参加することにしてしまった。(中略)
  日本万博に関していえば、ほんとにしんどかったという他ない。(中略)
  いま、戦争遂行者に加担したような、膨大な量の疲労感と、割り切れない、かみきることのできないにがさを味わっている。(中略)
  まったくのところ、ぼくらは純情であったという他ない。 》 「年代記的ノート」 511頁

 『空間へ』読了。

 昼前、沼津市の建設会社社員の漆職人にメールを送信。

《  今読んでいる建築家磯崎新の古い著作『空間へ』美術出版社1971年初  版にこんな一節。
  433-434頁

   たとえば、木やコンクリートなどの素材をそのままぼくらは空間を構成する要素として持ち込んでいる。
  (中略)
  色彩を具体的に所有すること、目にみえる人工の素材のすべてを強烈な色彩がおおいはじめていること、それは塗料という性格上、無定形であり、それだけに自由にどんな部分へも浸透してしまう。そして驚くべきことに、重々しく、密実な量塊としての存在を、たんにその表面をくるみおおいつくすことだけで、突然、その物質の重みをうしなわせ、変質させてしまうだけの力をもっている。また内部を色彩で塗りこめることによって、人間をひとつの色彩の海のなかにさそいこみ、漂流させてしまうことさえできるのである。

  漆塗りの現場を拝見して、まさに上記のことを感じたのでした。 》

 午後返事が届く。

《  貴重な文献をお教え頂きありがとうございます。
  私も日々、漆芸をどのような言葉で表現するのが適切か模索しているところです。
  越沼様のメールを拝見し、このような表現があるのかと感動いたしました。

  まさに適格に漆芸の核心を突いた言葉ではないでしょうか。
  漆芸に触れた人を”色彩の海のなかに誘いこめる”よう精進致します。

  質の高い言葉に触れられることが、大変励みになります。
  ありがとうございます。 》

 夕方、注文した安藤礼二『列島祝祭論』作品社2019年初版を行きつけの本屋で受けとる。外出はこれだけ。

 ネット、うろうろ。

《 懐かしい街や建物やコミュニティが消えていくことに以前は耐え難い苦痛を感じていましたが、今は、それらはこの世界を去って別の世界に旅立ったのだと 感じるようになりました。人生に限りがあることも悪いことではないと思います。ただ、人生には何か負わなければならないこともあるのではと思ってます 》  赤いレオタードでおまるにまたがります
  https://twitter.com/omaru_uwabaki/status/1188839648803471360

《 【福島第一原発、汚染水問題】誰が「タンクの置き場所が無い」と決めたのか 》 おしどりポータルサイト
  http://oshidori-makoken.com/?p=4144

《 ロンス拾遺。ルーヴル別館にパリから運ばれてきたキュクラデス諸島の地母神。5000年前の彫像なのに、不思議なほど「モダン」だ。同種のものは何百とあるが、 これはとくに大きい。背後に近代まで時を追ってつづく展示の一端が見える。★ 》 巖谷國士
  https://twitter.com/papi188920/status/1188992264372011008

《 特に日本において現代美術(僕は使わない用語だけど、一般の流通に従えば『アート』)が一部でアレルギー反応的に嫌われ憎まれてるのは、そういう 〈中央司令通りに従順な自分の生〉を、過去すべての時間ひっくるめて全否定される思いがするからでしょうねえ。 》 会田誠
  https://twitter.com/makotoaida/status/1188836900196380672

《 芸術に対する税金の支出には「自分の金で勝手にやれ」「助成金なしで成立しないのは作品がダメな証拠」などと市場原理主義的な声をやたらと聞くのに、 それとは比べ物にならぬ額の税金が投入されるオリンピックや原発などには、なぜかそういう声が小さいのが不思議でたまらぬ今日この頃。 》 想田和弘
  https://twitter.com/KazuhiroSoda/status/1188469344633872385

《  「不快な思い」と来たか。あなたの発言は不快かどうかの感情問題ではなく、教育の機会均等を定める憲法教育基本法に反するもの。 凡そ大臣に相応しくない「身の程」をわきまえて大臣を辞職、民間入試導入を中止すべきだ。

  萩生田文科相「受験生に不快な思い…おわびしたい」 》 Hideyuki Hirakawa
  https://twitter.com/hirakawah/status/1188664851784028160

《  実はマリリン・モンローですらそのスタイルがバッシングを受けた事がある。

  あるライターに「下品な服とスタイル。品性がなくまだじゃがいもの麻袋でも着ていたほうがマシ」

  と書かれてしまった。

  モンローはそれに激昂せず本当にじゃがいもの麻袋で出来たドレスを着てやり返したのだ。 》 Jezebel Ueval
  https://twitter.com/nimah_wicca/status/1188510456748462080

《 オタクが「アキバに風俗はいらない。昔のアキバに戻ってほしい」とリプしてたから秋葉原を青果市場に戻してオタクを喜ばせてあげたい 》 兵務局
  https://twitter.com/Truppenamt/status/1188768850919034880