『原子力時代における哲学』ニ(閑人亭日録)

  國分功一郎原子力時代における哲学』晶文社2019年初版、「第三講 『放下』を読む」を読んだ。

《 僕は原発をなくしたいと思っています。心の底からそう思っています。しかし、その論理を作るときに、何か危うい概念が入ってくる余地はないのだろうか。 「本来性」ような問題含みの概念抜きに脱原発の論理を作れるのだろうか。こういったこと考えるのが、原子力時代における哲学の使命ではないかと感じています。 》  「1 「放下」」 164頁

《 この検証作業は危険と隣り合わせです。原子力という具体的問題を考えたいのに必要以上に「哲学的」になってしまう危険、ハイデッガーの思想の危険性、とりわけ 本来性の概念に取り込まれてしまう危険、ハイダッガーを経由することでかえって原子力から遠ざかってしまう危険、脱原発運動を応援したい気持ちで始めたものが かえってそれに対する批判になってしまう危険、最終的に何の結論も得られない危険。すべてこれらの危険を分かった上でやっています。 》 「1 「放下」」 166-167 頁

《 「省察する熟慮」は「待つ」ということがポイントになります。 》 「1 「放下」」 171頁

《 一九五五年の時点でもはや核兵器よりも核技術のほうが問題だとハイデッガーははっきりと述べていたわけです。 》 「1 「放下」」 177頁

《 議論の流れを確認しておくと、現代人は、熟慮から逃走しているが、ハイデッガーによれば、その熟慮とは最も近いものを思惟することでした。しかし現代では、 最も近いものや故郷、土着性が失われ、遠い・近いの感覚がおかしくなっている。それは、現代という時代の精神に由来していて、その時代は「原子力時代」と 名付けられているわけですね。 》 「1 「放下」」 178頁

《 科学者が聞けば怒ると思いますが、ハイデッガーの中には、考えるという営みは哲学が担わなければならないという考えがある。だから、「科学は人間を幸せにする」 というのはあまりにも能天気な言葉にしか思えないし、そのような能天気なことを述べている連中は、核技術によってエネルギーを使うことの根拠を考えさえしない、 と指摘しているわけです。 》 「1 「放下」」 180頁

《 近代科学は公開的・公共的に検証できる証拠、エヴィデンスを持ったものだけを「真理」と見なすことにしたわけですから。 》 「1 「放下」」 183頁

《 ──確かに現代を規定する決定的な出来事が一七世紀に起こった。しかし、実際には同時期に別の可能性もあった。スピノザは現代に連なる真理観とは別の真理観を 示していたのであり、そこには、我々の知るのとは別の「近代哲学」があった……。 》 「1 「放下」」 185頁

《 ではなぜ人は原子力にかくも惹かれるのでしょうか。(中略)自分は何にも頼らずに生きていけるという万能感を精神分析ではナルシシズムといいますが、この ナルシシズム原子力に対する欲望というのが結びついているのではないか。 》 「1 「放下」」 204頁

《 放下は能動的でもなく、意思とも無関係な態度である。そしてそれが思惟の本質と結びついている。ハイデッガーはここで、ものを考えることが何かを受け取ることと 切り離せないと言っているのだと思います。 》 「2 「放下の所在究明に向かって」」 222頁

《 ここに書かれているのは、考え方の指示ではなくて、考えることへの誘いなのです。 》 「2 「放下の所在究明に向かって」」 223頁

《 放下という落ち着きの態度で──期待するのではなく──待つことによって、我々は世界という会域に向かって降りていくことができるのであり、そこに降りていった 時、事象そのものが開かれ、我々は謎=秘密を思惟することができるというわけでしょう。 》 「2 「放下の所在究明に向かって」」 234頁

《 自分の環世界に閉じこもっている限り、人はものを考えることはできないということです。思考はどこか環世界の破れと関係しているのではないでしょうか。放下を 通じて、我々はそれまで自分が属していた環世界の外部に出るのであり、ものを考えることはそのようにして外部に出ることと切り離せないのではないか。 》  「2 「放下の所在究明に向かって」」 235頁

 午前、埼玉県戸田市からの視察三十余人を源兵衛川~三嶋大社へ案内。喜ばれたようで、ほっ。十一時半帰宅。コーヒー。旨い。

 ネット、うろうろ。

《 マスマーケットに美術を浸透させるといってもストレートにやるのは無理なので、業界は政治と癒着して国民国家の正統性を補強する「国民的趣味」のプレゼンを したり、マスコミと美術館は作家をヒーローに仕立て上げるテレビ番組を作って美術館を巡回する見世物興行の集客につなげたりした。 》 松下哲也
  https://twitter.com/pinetree1981/status/1194806730359623681

《  「すでに実行された行動の責任」が問われているのであって、「これからはやりません」といくら言ったところで、「すでに実行された行動の責任」 をいささかも免れることはできない。
  この自明の立場にきちんと立つかどうか。今日、これからのメディアの報道姿勢が試される。 》 志位和夫
  https://twitter.com/shiikazuo/status/1194532951901511680

《  「桜を見る会」を、止める必要はない。

  「安倍が辞めればいい」

  要は、

  「来年やれないようなことをやりました」って話。 》 Tom
  https://twitter.com/tom_iton_tom/status/1194915510183497728

《 【室伏謙一】幕末の狂歌を起点に考える、幕府の日米外交-本当に弱腰だったのか? 》 クライテリオン
  https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20191114/

《  ブラック企業被害対策弁護団が「#ブラック企業川柳2019」の募集をはじめました。ハイペースで作品が集まっているそうです。以下、一例。

  「9時5時だ 終わりの5時は 午前5時」
  「定刻を 過ぎたらそこから ボランティア」 》 弁護士ドットコムニュース
  https://twitter.com/bengo4topics/status/1194888604033531904

《 今回の五輪から新種目「我慢比べ」 》 ネットゲリラ
  http://my.shadowcity.jp/2019/11/post-16780.html#more