再読『「敗者」の精神史』五(閑人亭日録)

 山口昌男『「敗者」の精神史』岩波書店1995年初版の再読を進める。「9 二つの自由大学運動と変り者の系譜」を読んだ。

《  車人形の伝承者の西川古柳の家と松井(翠次郎)宅は目鼻の先である。私は、西川師匠に松井についていろいろと語っていただいた。話はいきおい、この村に 昭和十八年に住みついた知的妖怪きだみのるに及んだ。きだみのるが恩方に来たのは、松井を頼りにしてのことであったことはほとんど周知の事実である。
  戦中戦後にわたって松井は三つの災難に見舞われた。第一は治安維持法による検挙である。(中略)
  第二の災難は自らが招いたもので、きだみのるの存在である。(中略)きだの乱脈をきわめた生活と、この映画ため、村人は、きだみのるを村に連れて来た松井を うらんだ。これが第二の災難であった(はた迷惑な自由人きたみのるの恩方村に対する忘恩的な仕打ちについては、誤解を避けるため、稿を改めて論じたい)。 》  309頁上段~下段

《 第三の災難は、山村工作隊が恩方の付近で活動して、中央の司令によってか、何かと松井をひきあいに出した。 》 309頁下段

《 松井はたしかに村人の大多数の目には変り者に見え、孤立していたようである。しかし変り者がいないことには共同体の生活は澱むことは明らかである。 》 310頁 上段

《 松井の苦闘は、村の中では孤立していたかも知れないが、大正日本の、「農村に起点を置きながら」自生的な知を求める運動の流れの中では、孤立していないばかりか、 今日からみれば燦然とした輝きを放っているのである。そのような意味で、松井も(宮沢)賢治も、限られた地域空間の中での変り者に過ぎなかったと言えよう。今日、 我々は時代の変り者を必要としているのかもしれない。 》 311頁上段

 「10 大正日本の「嘆きの天使」──吉野作造と花園歌子」を読んだ。

《 大槻文彦は、それほど表面化させなかったが、父磐渓は、東北諸藩同盟の文書に対する責任ゆえ、戊辰戦争後、裁判も受けず明治三年まで入牢、六年まで謹慎という 処分の対象となった。怒り心頭に発した文彦の兄如電は官を辞し、父の冤罪たることを証明するのに数十年を費やし、生涯二度と仕官せず、根岸派の文人の傍らにあって 薩長のつくりあげた国学をやりすごして生涯を送った。作造は父の職業ゆえ、戊辰戦役の直接被害者にはならなかったが、作造の周りにはそうした人物が数多く通り過ぎた と言える。 》 319頁上段

《 言うまでもなく、維新後の藩閥政府は、人間の欲望の全開を阻止して来た。それは身体の領域ばかりでなく想像力の領分までも押え込んだ。日清・日露戦役で国を 覆った愛国主義は政治の領域における反抗の姿勢の表明を不可能にし、大逆事件は、反抗の潜在的身ぶりをも抑圧の対象とする政治的威嚇の構えを制度化した。 「オールタナティヴ」(別の解決)探求の試みは至るところで押え込まれた。こうした閉塞状況から抜け出る努力の一つであった社会主義は、外から来る抑圧、内なる ストイシズム、或る孤立した運動の宿命とも言うべき非寛容性から、自由になる方法を見出せずにいた。 》 332頁下段

《 黒瀬春吉─花園歌子─吉野作造大槻文彦大槻如電といった繋がりで読むと、一冊の参考書目もなかなか油断ならぬところがある。 》 353頁上段

《 吉野の視点は、政治的にも蔭に置かれたものの復権が、民主(本)主義の気分的前提の中にあることを示唆している。こうした相対的な視点、政治的・文化的に 絶対不動の「中心」というものの存在を認めないという態度は、女性と男性、官と民、中国・朝鮮問題にも貫かれ、吉野の民主主義論の根柢をなしているようである。 》  365頁上段~下段

《  このように吉野において辺縁的と考えられる半ば匿れたコネクションに照明を当てると驚くべき魅力あふるる薄明の世界が出現してくる。そういう意味では凡百の 帝大教授と異なり、吉野は二つの世界のはざまに生きた人である言える。西欧と日本、東アジアと日本、権力と反権力、勝ち派と負け派、西南と東北日本キリスト教と 仏教、保守と革新、明治と大正という具合にである。
  従って吉野のコネクションとその延長線上にある人間は、多面体であることが多い。それゆえ関係のあり方が正であろうと負であろうと、吉野と何らかの関係に入った 人間を、今日の視点で判断してはいけない。そのあたりを安易に行なうと、時代の面白い部分がすぐ視界を去ってしまう。 》 368頁上段~下段

《 この後の(花園)歌子と正岡(容)は、大西信行小沢昭一麻布中学出身の芸能人やテレビ・プロデューサーらの仲間入りをする。 》 362頁上段

《 大西信行は、小沢昭一の依頼で小沢の出していた『芸能東西』に「正岡容(いるる)」を連載した。 》 363頁下段

 『藝能東西』八号(1977年)と十号(最終号、1977年)に大西信行正岡容 このふしぎな人」八回と十回。八号は「サーカス大特集」、十号が「ストリップ大特集」 なので購入。正岡容について仮面社と冥草舎の二人がいろいろ話していた。その後、仮面社から『正岡容集覧』1976年が出版された。今にしてワカル人の繋がり。

 ネット、うろうろ。

《 色々なものが繋がってくる予感。。 》 清水高志
  https://twitter.com/omnivalence/status/1208729435597262850

《  大槻文彦言海』。猫の語義の以下の部分にある窃盗に芥川が噛みついたりしました。
  温柔ニシテ馴レ易ク、又能ク鼠ヲ捕フレバ畜フ、然レドモ、窃盗ノ性アリ 》 愛書家日誌
  https://twitter.com/aishokyo/status/1208711314639663104

《 WEB言海「ねこ」 》
  http://www.babelbible.net/genkai/genkai.cgi

《 上手くゆかず、登場人物のほとんどが失敗する。それが落語だが『いだてん』の構造は落語に酷似している。金栗四三田畑政治もそして志ん生も、 肝心なところで戦争や権謀術策や病に躓き、そして立ち上がる。宮藤官九郎は落語を熟知している。いや、人の挫折に興味があるのだ。素晴らしいドラマだった。 》  立川談四楼
  https://twitter.com/Dgoutokuji/status/1208595485981728771

《 無名・未知の「書」を、一躍「古典」にする快感! 》 青土社
  http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3368

《 高校生の時に始めた「社会風刺」を7年間 封印した訳。 》 たかまつなな(お笑いジャーナリスト)
  https://note.com/takamatsunana/n/nbcc279717c54

《 日本会議など、安倍政権の支持勢力には「男女同権・男女等価値を認めれば、女系天皇容認の考えが広がる」と危惧する、男系天皇至上主義者が多い。 安倍晋三首相は、彼らの意向を無視できない。つまり安倍政権が続く限り、日本で本質的な男女平等や男女同権は成立しそうにない。 》 山崎 雅弘
  https://twitter.com/mas__yamazaki/status/1209023314947035137

《 取り巻き連中の顔ぶれが、これほどまでにあからさまな人間のクズ揃いだった内閣総理大臣は、いまだかつて歴史の中に登場していなかったと思うのだが、 やはりご本人もそれなりに人間のクズだと考えるのが、この際、合理的な推測なのであろうか。 》 小田嶋隆
  https://twitter.com/tako_ashi/status/1208584840418738176

《 常磐線の車内で、東電の水処理週報を確認した。
   12月19日時点のフクイチのタンク内貯留水は約119万5000t。
  計画上の貯留容量上限125万tまで、あと5.5万t。 》 春橋哲史(福島第一原発事故は継続中)
  https://twitter.com/haruhasiSF/status/1209026178213793792

《  この前も紹介した猫の最大種メインクーン。原産は名前の通りアメリカのメイン州で州猫にも認定されています。
  体長1mを超すことも珍しくなく最長の個体は123cmのギネス記録を保持しています。
  そんなメインクーンの大きさが実感できる写真4枚。 》 森永タミー
  https://twitter.com/tammy_morinaga/status/1208499926872674304