『江戸にフランス革命を!』(閑人亭日録)

 昨日引用した橋本治の「解説」の前の文章を。下村槐太の句「河べりに自転車の空北斎忌」について。

《 私が見た「絵」は、朱紅の空を背景にして高くそそり立つ、暗い河原の土手である。その上に頑丈な荷台を持つ自転車が一台立っている。人の姿はなくて、向こうから 差しつける光を受けた銀色のスポークが光っている。空が錆びた朱紅の色なのは、夕焼けではなくて、北斎の描いた赤富士が巨大化して、一面の空になっているからである。 だから、そこには一片の雲もない。ただ朱紅の空だけがあって、銀色のスポークを光らせる暗い自転車の影だけがある。その壮大にして残酷な悲しみが、すごいと思った。  》 244-245頁

 そして昨日引用の
《 日本画と洋画を問わず、私は明治以降の日本の近代絵画にかなりの不満を抱いていて、「それ以前の日本絵画の伝統は、どうして近代を開花させてくれなかったのだろう 」と思っている。 》
 はどういうことだろう、と考え込んだ。彼の『江戸にフランス革命を!』青土社1989年初版収録、「安治と国芳──最初の詩人と最後の職人」を読んだ。

《 江戸の風景画というのは、実のところ”風景画”であるよりも、そこ人間がいる”情景画””光景画”である。人間のいない純然たる風景画というのは、そうそう江戸の 浮世絵版画にはないものだ。どの作品にも大概”人物”がいて、その人間達がいずれも軽微なドラマを演じている。 》 356頁

《 江戸というのは、大人が取り仕切る制度社会である。人間はすべてどこかに所属した”社会の一員”で、ここには他から隔絶した”個人”とか、その人間の持つ”心理” というものは存在しない。 》 359頁

《 ”絵になる・絵にならない”という言葉の存在を考えれば分かるけれども、前近代の日本には、”ありのままを絵とする”なぞという考え方はないのだ。 》 258頁

《 フランス絵画のアカデミズムとは、日本で置き換えれば、殿様のお城の障壁画を描く狩野派・土佐派である。(中略)フランスには「女神が裸であってもかまわない」と いう思想がある。そして日本には「裸の女の絵が公式の場に存在する」という制度がない。そして勿論、日本には浮世絵という、いくらでも女の裸を公然と描いている 絵師があるが、しかしフランスにはそういうものがなかった。だから、有名なマネの『草上の昼食』というスキャンダルが存在する。 》 365頁

《 フランスあるいはヨーロッパ人にとって”見たままを描く”というのは”個人の印象”をよしとするか否かの”思想の問題”だが、日本の場合は”技法の問題”である。  》 366頁

《  日本では、かつての本派絵師達が”近代日本画”という、新しい何か──それは多分”新しい”という思想だろう──に仕える、新しいアカデミズムを始め、洋画と いう新しいアカデミズムを西洋から導入する。日本の画家達にとって”見たままを描く”ということは、”見たまま描いてあるように見える西洋画の技法をマスターすること” なのだから。(中略)
  しかし、その日本にはないものが一つだけある。「一体この画家はどう見たのか?」という、画家の思想を問題にする土壌がないということだ。問題にされるのは、 「この画家はどう描いたのか?」という技法だ。 》 366-367頁

 慧眼だ。今まで読んできた美術史本は何だったのか。

 阪神淡路大震災から二十五年。当時店の仕込みを終え、朝食でテレビをつけて驚いた。街が煙をあげて燃えている・・・。釘付け。数日後、水、食料など救援物資を送る 手伝いをした。店をやっていたため、同行はできなかった。

 ネット、うろうろ。

《 Moving Statues “Ali and Nino” 》 Engineering
  https://twitter.com/engineeringvids/status/1217506127174225920

《 『1時間労働(1時間の秒針の音に合わせて1秒ひとつの○を漏らさず書き取り続ける)』というドローイングというか日課には、『抽象的人間労働(写真は部分拡大)』 って別バージョンがあって、こっちは1秒につき1ストロークの自由線を任意の場所に足していくのだが、1時間労働より遥かにきつい 》 長谷川 維雄
  https://twitter.com/hasegawa_fusao/status/1217536179685343232

《  2019年は「あいちトリエンナーレ2019」を通して、津田大介がいわゆる北川フラムモデルではない国際芸術祭のあり方を示した記憶されるべき年だ。 オリンピックイヤーである2020年は、札幌国際芸術祭2020、さいたま国際芸術祭2020、ヨコハマトリエンナーレ2020と大規模な芸術祭が続く。芸術祭という形式が 日本においてどのように機能するかが真の意味で試されている。/ 沈んだ戦艦「秋津洲」は2020年にどうつながるのか? 小田原のどか評「柳幸典展」 》 美術手帳
  https://bijutsutecho.com/magazine/review/21175

《 卒業制作で、なんらかの賞をもらった方は、オジサンオバサンの基準で評価されたことに危惧を懐いてください。なにも受賞しなかった方は、 教員たちにおもねたレベルの研究・制作を、しなかったことについて誇ってよいのです。 》 中島 智
  https://twitter.com/nakashima001/status/1218084415630241792

《 ラジオ聞いてたら外国人には「汁」という漢字が人気、十字架が光ってるみたいに見えるからって言ってた 》 おでん
  https://twitter.com/owaruchannel/status/1217943876264054784