『異郷の昭和文学』(閑人亭日録)

 川村湊『異郷の昭和文学──「満州」と近代日本』岩波新書1990年初版を少し読んだ。

《 おそらく、日本人にとって最も苦手なのは、こうした多様で混沌とした共存、共在の関係だろう。言語も風習も価値観も、てんでに違う民族が、それぞれの文化や風俗を 守りながら一つの都市に混在している。それは決して無秩序でもなければ、混乱でもないのだが、日本の目にはそれが猥雑でアナーキーな、恐るべき無秩序、混乱状態として 見えてしまうのである。一元化した秩序意識、価値の統一された世界こそ、私たちには美的で、心地よいものと見えてしまうのではないだろうか。 》 「序章 釜山から 満州へ」 8-9頁

 三十年前に言い当てられている。

《 だが、「大日向村」の悲劇は、それが個人や家族、親戚関係の間で行われたのではなく、積極的できわめて大規模な移民、しかも同一の村出身という環境で行われた ということだ。耕作地、開拓地の選択、居住する家、とりあえずの食料品などは、すべて満州側に期待して、これらの日本の農民たちは着のみ着のままで、大陸へと渡って 行った。 》 「I 大陸へ──開拓と建国」 30頁

《 彼らは玉突きゲームの玉のように、元いた土地を離れ、新天地へと赴き、それが連鎖反応となって次々と故郷を離れ、”異郷”を目指して進まなけれなならない流浪の 農民たちを生み出した。むろん、その引き金となったのが、大日向村の村人たちのような日本人の農業移民であって、彼らは国内での経済不況、人口過剰、環境破壊という 政治、経済的な矛盾点を一身に担う形で、大陸開発の先兵、もっとあからさまにいうと、日本帝国主義の植民地支配の”先遣隊”として、寒冷の風吹きすさぶ地へと 行かざるをえなかったのである。 》 「I 大陸へ──開拓と建国」 34-35頁

《 満州移民の推進派の陸軍省関東軍とに対し、無関心派の農林省内務省、その中間派としての拓務省。各省庁の意思がバラバラのままにスタートした満州移民の 計画に、適切な予算や連動した制度、施設の整備などは、まさに期待すべくもなかったのだ。 》 「I 大陸へ──開拓と建国」 48-49頁

《 もちろん、こうした軍・官の指導権争い、”縄張り”的な政治抗争のとばっちりは、すべて現実に満州に移民してきた移民団、開拓村の人々そのものへと降りかかって きた。 》 「I 大陸へ──開拓と建国」 49頁

 昼前、本屋で西郷甲矢人(はやと)・田口茂『〈現実〉とは何か』筑摩書房2019年初版を受けとる。
  http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480016904/
 曇天では我が身体の太陽発電は蓄電量が少ない。昼過ぎ日差しがさす。源兵衛川中流三石神社下流眼鏡橋付近の茶碗のカケラ、ガラス片を拾う。ほぼ拾い終え終了。 これ以上重いと土のう袋の網目が破ける。帰宅。一汗。下着を替える。一休み。横になって一休み~が長引く。やはりね。
 夕日を眺める。昨日は見たかな。記憶にない。やだねえ。

 ネット、うろうろ。

《  岩波文庫の3月予定(同社メルマガ情報)
  『火の娘たち』ジェラール・ド・ネルヴァル野崎歓訳)
  『自由論』J・S・ミル(関口正司訳)
  『けものたちは故郷をめざす』安部公房 》 藤原編集室
  https://twitter.com/fujiwara_ed/status/1219813934913351680

 『けものたちは故郷をめざす』は敗戦後の満州脱出小説。息苦しくて挫折。

《  『三体』『息吹』『荒潮』と、漢字2文字SFが売れているのであれば、

  津原泰水『陰茎』
  ハヤカワ文庫JAより明日発売です。 》 塩澤快浩
  https://twitter.com/shiozaway/status/1219819941584465921

《 この、異様なまでの密度を感じさせる作品を読むには、神秘主義的観念小説という観点が有益であるように思われる。正確にいえば、神なき時代の神秘主義。 孤独な男の夢想、回想、自己省察の書という点で、『ペニス』はJ・P・サルトルの『嘔吐』に似ている。しかし、さらに似ているのは『眼球譚』『マダム・エドワルダ』 などジョルジュ・バタイユ神秘主義的観念小説だろう。 》 双葉文庫2004年初版、笠井潔「解説」より

 『ペニス』以外は既読。キャサリン・ブラックリッジ『ヴァギナ』河出書房新社2006年4刷は未読。二冊並んでいるお隣はジョナサン・マーゴリス『みんな、 気持ちよかった!』ヴィレッジプレス2007年初版。

《 前衛のように、かつてアートは速度のある実践だった。時代の先端を切り拓いて、新しい価値観をどんどん提示した。今は明らかに遅い。速くて先鋭的なものが 他に沢山ある。遅いのには遅いなりの価値が必要だ。成熟はそのひとつだと思う。他から速度あるものの外見だけ借りて、速いフリしても仕方ない。 》  大山エンリコイサム 
  https://twitter.com/enrico_i_oyama/status/1219839418661572608

《 前RT、僕はデビューしてしばらくして、それにつくづく思い当たり、以来ファインアートは時代のしんがり、落穂拾いだと開き直ることにした。 たぶん20世紀初頭から本質的にはそれが始まっていたんだろう。 》 会田誠
  https://twitter.com/makotoaida/status/1219850339068694528

《 会田さんのツイートで思ったけど、未開美術に影響されたピカソの《アヴィニョンの娘たち》(1907年)は、今の文脈だとサブカルチャーに影響された 現代美術となんら変わらない。当時の社会では、美術や文学全般がそもそも、サブカルチャーのようなものだったのかもしれない。 》 大山エンリコイサム 
  https://twitter.com/enrico_i_oyama/status/1219860582557540353

《 「ゲームはダメ。勉強しなさい」って価値観のやばさは実は社会で騒がれているよりもはるかに大きく、実際それが社会一般の常識なのだとしたら、 おそらくそれは日本が今後もう生きていく術は少ないことを象徴しているように思う。こういう小さいところで大きいビジョンが見えることがある。 》 上妻世海
  https://twitter.com/skkzm/status/1219561774262784000

《  安倍首相「日本はもう成長できないという7年前の『諦めの壁』は完全に打ち破ることができた」

  多くを語るより賃金推移の比較を見れば分かる。ここ20年で賃金が「マイナス」なのは日本だけ。しかも現政権下では2018年1月から統計が水増しされたので 見かけより悪い。妄想で市民を苦しめるな。 》 異邦人
  https://twitter.com/Narodovlastiye/status/1219415348174213120

《  賄賂には「法に則り適切に処理している」
  失言には「誤解を招いたのならば撤回する」
  説明責任には「捜査に支障をきたす恐れがあり差し控える」
  辞任否定には「真摯に反省し職責を果たしていきたい」
  この4つ言えれば、バカでも大臣になれる国。税金でやりたい放題。日本がどんどん劣化。いいのかよ。 》 木村知
  https://twitter.com/kimuratomo/status/1219549888754503680

《  今日の原子力規制委員会では、更田委員長が、またもや、東海再処理施設の高放射性廃液について、懸念を表明した。
  来月の原研機構理事長との意見交換では、東海再処理施設が話の中心になるだろうとのこと。
  目が離せない。この臨時会も見逃し厳禁だな。 》 春橋哲史(福島第一原発事故は継続中)
  https://twitter.com/haruhasiSF/status/1219810560130215937

《 ‏もこもこパラダイス!!! 》 黒柴りつ@仔犬3匹産まれました!!!
  https://twitter.com/kuroshiba_ritsu/status/1218877627173261315