『中村雄二郎対談集 対話的思考』三(閑人亭日録)


   オギュスタン・ベルクとの対話「 III 場所と風土と日本人」を読んだ。

《 中村 そこで私は、東アジアの風土性のポイントの一つは、空白と充満ではないかと感じたのです。
  例えば、日本ではお能の舞台は完全に空白です。空白だけれども、あれは無意味な空白ではなく、実をいうと非常にインテンシヴな場なんです。強烈な意味の 発生する場所、つまりあらゆる意味がそこから発生するような空白として考えることができるのではないか。(中略)
  その能に対して対照的なのは歌舞伎であり、歌舞伎は充満の世界なんですね。 》 97-98頁

《 中村 今おっしゃったように、言葉が先なのか、実体が先なのかはとても大きな問題ですね。つまり自然があるがままにあるのではなく、だれか人間が見ないとそれは 存在しない。 》 99頁

《 中村 街中にたくさん看板があるのを、私なんかは合理的に考えて、あんなにたくさん看板を出したら、相殺し合って意味がないだろうといったら、いや、あれは 歌舞伎の黒子と同じだというのです。たくさんあっても、人は同じようには見ないで、これは見ない、けれは見るというふうに選択してみているのではないかといわれて、 なるほどと思った。
  一見充満しているように見えるけれど、実はその全部を見ているわけではないという前提でつくっているのではないか。それはちょうど空白の裏返しのように なる。けれども、空白の場合には、実はなにもないのではなくて、あらゆるものがそこから発生できるような装置になっている。そうすると、余白というのは、むしろ 空白と充満という関係の一部なのではないか。 》 100頁

《 ベルク 今の町の中には、風景として全然価値のないものがたくさんあるなかに、ぽつんぽつんと価値のあるものがある。例えば鎮守の森が残っている。それは確かに 日本文化の深層の場所に属するものです。つまり、人が感じているのは、ふるいから出た価値のあるものだけなのです。 》 101頁

《 ベルク つまり、ヨーロッパ近代のように主体は人間だけというのじゃなくて、主体性のいくつかのレベルがある。問題は、主体、客体、実体のきっちりした区別では なくて、そのスケール、程度の問題なんです。
  中村 ある種の主体性を持たなければ生物は生きていられない。ということはいえる。それをレベルを分けないで全部ごちゃまぜにすると、単なるアニミズムに陥って しまう。だから、それぞれのレベルで、主体と自然との関係がどうなっているかを押さえないといけないと思うのです。 》 107-108頁

《 中村 あなたのお話の筋でいえば、風土が、単に客観的、あるいは自然的な環境にとどまらないというときの、人間とのかかわりの大きな要素は身体性を介した記憶 なんですね。しかも、その記憶とは集団的な記憶です。 》 109頁

《 中村 そこで、場所の記憶というものを考えるとき、われわれは一体何で記憶するのかというと、これはあなたのいわれている意味での風土、あるいは具体的な場所と 人間との身体的なかかわりです。この関係のなかでしか記憶はないと私は考えている。 》 110頁

《 中村 普遍主義自身がヨーロッパのローカリズムではないかという考えもできますね。むしろ世界全体から考えてみると、一種の場所主義の方が、多数というか、 一般的であった。しかし近代においては、ヨーロッパの普遍主義が科学技術や思想を含めて、世界に広まっていった。
  ベルク 確かにおっしゃるとおり、普遍主義はヨーロッパのローカリズムです。 》 111頁

 松井孝典との対話「 IV 地球自身を知れ」を読んだ。

《 松井 ただ逆にいうと、人間は美しいと思って満足した瞬間にもう考えなくなっちゃうわけです。だから、ものごとがきれいに見えたときは、ちょっと危険なわけです。

  中村 それはどの領域についてもいえる。既に探求じゃなくて、探求の停止になってしまう。 》 126頁

《 松井 そうです。だから、人間は地球の一部だといったけれども、実は人間が持っているのは「人球」という概念じゃないか。要するに、人にかかわる部分で地球と 関連している部分をもって、地球と考えているのではないか。 》 128頁

《 松井 いずれにしても宇宙は最初は均質、区別のない状態だった。それから、力でも物質でも、区別のある状態に移ってきているわけです。なぜそれが起こったかと いうと、単純なことで、冷えたからなんです。 》 129頁

《 松井 今地球は、人間圏まで含めると、十のサブシステムからできているわけです。例えばコアと呼ばれる鉄とニッケルの塊は、実は内核外核の二つに分化している。 マントルは上部マントル、下部マントルに分かれている。地殻は大陸地殻と海洋地殻に分かれている。それから、海があって、大気があって、生命圏があって、人間圏が ある。全部合わせると十になるんです。磁気圏のようなのまで含めれば十一になります。
  中村 人間圏は地球の有する十のサブシステムのうちの一つだということですね。
  松井 十分の一ですが、ウエートとしてはほとんど二分の一くらいだと思ってもいいです。 》 140頁

《 中村 人間圏の成立によって、逆に地球そのものをどれくらいの人口が可能なようにデザインするかという問題が人間に突きつけられた、というのは、基本的な 問題提起であり、これから地球環境問題を考えていく出発点になりますね。 》 141-142頁

《 松井 発展段階からいくと、神様を導入するというのは、宇宙的な視点を導入することなんです。だけど、その当時の人間の自然に対する知識がほとんど人間に偏って いたために、今から見れば、それはほとんど人間の世界だったんです。 》 144頁

 昨日の対話もそうだったけど、思考がバリバリ刺激され、連想があちこちへ飛ぶ。まずは美術へ援用か。

 午後、市立公園楽寿園内の梅御殿で開催された「アートと地域をつなぐ 研修会」に参加。肩透かし。そぼ降る雨の中を帰宅。

 ネット、うろうろ。

《 陸前高田(たかた)
  豊後高田(たかだ)
  肥後高田(こうだ)
  なのか。これをアリバイトリックに……! 》 米澤穂信
  https://twitter.com/honobu_yonezawa/status/1227772823508119552

《 中国で今バズっている、視覚効果を利用した映像制作の男性。人が消えたり、モノが予想外の動きをして面白い。 》 イシケンTV - ニュース解説 / 石田健
  https://twitter.com/ishiken_bot/status/1228342236208713730

《 安倍晋三首相 vs 北村誠吾議員――〈不気味さ〉について / 山口尚 》 note
  https://note.com/free_will/n/nb8a3342b4805

《 日本での感染発覚入院者は「働き盛り」が多い。高齢者は気をつけろ、ではない。おそらく発熱があっても仕事を休めないのだ。 日本では少々の熱では休めない規範があるから、いま政府ができる最大の政策は、「来週1週間、全社休業命令」「臨時お正月ウィーク」 でみんなを自宅で強制休暇させることだ。 》 森岡正博  https://twitter.com/Sukuitohananika/status/1228645121513517056

《 例えばソウルでは、予防として今月初旬より一部のデパートや、博物館、展望台など人が集まる場所を一時的に閉館しています。
  一方で、日本政府の対応は14日段階でも「人混みを避けて」程度ですから、国内に拡散した場合、世界的に批判を受ける事になるでしょう。 》 清水 潔  https://twitter.com/NOSUKE0607/status/1228472833384185857

《 新型コロナウイルス感染症対策本部にたった8分。その後、帝国ホテルの宴会場で、日経新聞の喜多恒雄会長、岡田直敏社長らと3時間近くかけて会食し、帰宅。 どんな首相なのか。…… / 首相動静(2月14日):時事ドットコム (時事ドットコム)  》 平野啓一郎
  https://twitter.com/hiranok/status/1228806719402205184

《 「菅氏ら政権幹部は今月中旬に入り、市中感染の広がりを覚悟。厚労省の頭越しに海外の専門家などから情報収集しているという」『死者が続出したら政権が持たない』 と官邸関係者」
  東京五輪・パラ大丈夫か、官邸が懸念 「市中感染」新型肺炎の拡大新局面へ(西日本新聞) 》 青木美希  https://twitter.com/aokiaoki1111/status/1228560456417083393

《 流行ってはいるが流行はしていないと閣議決定 》 ネットゲリラ
  http://my.shadowcity.jp/2020/02/post-17636.html

《 ゲンダイ師匠がすごい角度から問いかけてきた。 》 プチ鹿島
  https://twitter.com/pkashima/status/1228240681618919424