『日本文化における悪と罪』九(閑人亭日録)

 中村雄二郎『日本文化における悪と罪』新潮社1998年初版「第二部 第九章 〈場所の論理〉と〈天皇制の深層〉」を読んだ。

《 先に私は、世界の諸神話にある宇宙創成論には、その発想の基底に(1)〈つくる〉と(2)〈うむ〉と(3)〈なる〉という三つの基本動詞が見られる、と言った。 これら三つのうてで、(1)の〈つくる〉においてつくるものとつくられるものとの断絶がいちばんきびしい。それに比べると、(2)の〈うむ〉は、母と子の関係や 母なる大地ということばが端的に示すように、贈与的であり豊饒であって、融和的である。
  この〈つくる〉と〈うむ〉の二つは、それだけ考えると、たしかに対立しているが、いずれも他動詞として行為の主体と対象を持っている点では共通している。 》  303頁

《 では、(3)の〈なる〉に対応するものはなにか、といえば、まさに日本語の〈なる〉である。(3)の〈なる〉の思考方法の特色は、すでに見たように、主客の 同一性や不可分性が〈うむ〉以上につよく、いっそう内在的かつ自足的で、変化する歴史よりも〈永遠の今〉が重い意味を持ち、行為は内在的な力の発現であるとされること にある。 》 304頁

《 このような地理的・歴史的条件に加えて、日本では政治的・社会的にも一種の君主制である〈天皇制〉が古代以来維持されてきた。(中略)天皇制はしばしば〈主体なき 権力〉あるいは〈空虚な中心〉と呼ばれることがあるが、その同じ在り様を、いっそう適切には〈場所的権力〉と呼ぶべきであろう。
  他方、帰属と表裏をなす〈排除〉についていえば、排除において一般に、場所はいっそうその隠された性格をあらわにする。というのも、場所はおのずとそれに帰属する 者と帰属しない者と分かつからである。(中略)
  この場合、場所に帰属しない者というのは、場所の内部における支配的な者への反抗者や敵対者のことではない。(中略)そこでの争いや勝負には共通のルールがある からだ。場所の外部に追いやられるのは、そのルールを認めない者たちである。
  しかもその排除の際に、ルールを認めない者たち、否定する者たちがもともと存在しなかったかのように、振舞われる。 》 314-315頁

《 だから、支配的な価値への帰属や従属はソフトな仕方で行なわれても、その反面において、天皇制にかかわる支配的価値に対して根本的な批判でも行なうと、なんと、 《そういう人間は、日本から出て行ってほしい》などと明言する者までが出てくるのである。 》 316頁

 「第十章 西田哲学と日本の社会科学」を読んだ。これは難解。何回読んでも今の私には難解、理解できぬだろう。

《 そして、この甚だ飛躍の大きい転換に対しては、その思考についていくのが難しい以上に、用語的、語法的に対応するのが、さらにいっそう難しい。この用語と語法の 問題によって、社会科学に比べてはずっと柔軟性のあるはずの哲学の分野においてさえも、西田哲学の着想と論理は、人びとにとって生かしにくかったのである。 》  341頁

 中村雄二郎『日本文化における悪と罪』読了。いやあ面白かった。味戸ケイコ、北一明の作品についての考えの新たな展開が仄見えてきた。 どこまで自分のことばで語られるか。ま、急ぐことはない。

 天気予報が外れて昼過ぎには晴れてきたので自転車でブックオフ長泉店へ。今月初めて。何もなし。源兵衛川上流部を眺める。流水量が増している。どこまで増えるか。

 ネット、うろうろ。

《 〈前もって知り尽くせぬどこかしらの地盤に目がけて、身体ごと跳ぶこと〉――これが「脱-底」である。 》 「投げるよりも跳べ!――中川萌子 『脱-底――ハイデガーにおける被投的企投』(昭和堂、2018年)の感想」 山口尚 note
https://note.com/free_will/n/n5b40934533af

《 長野の茅野断層、領家変成帯の名前になった静岡の水窪奥領家、同じ三波川変成帯に属し似た石段を持つ和歌山の塩津と愛媛の佐多岬。 階段は人間社会が形成したものだけど、その下には中央構造線という日本のバックボーンがある。ああ、階段巡りってなんでこんなに楽しいんだろう。 》  階段巡りツイッター
https://twitter.com/kaidanmeguri/status/1288409872451563520

《 感染症学、免疫学、分子生物学。様々な分野の専門家がいますが。専門家、研究者として大事なのは、分野の専門性もさることながら、ある事実(知見、実験結果等)を 根拠にした場合、何をどこまで言えるか?(言って良いか?)を明確に理解していることです。日々の研究活動では、この訓練をし続けています。 》 Koichi Kawakami
https://twitter.com/koichi_kawakami/status/1288473520209424385

《 ある知見を根拠にどこまで言えるか?これはとても大事。さらにその先まで言いたい場合は知見を積み重ねます 。専門分野に依りませんし、理系文系も問いません。 これを鍛え続け、研究者の中で国際的な基準にして行きます。もちろんアカデミアだけではなく、市井には国際基準をお持ちの方が大勢います。 》 Koichi Kawakami
https://twitter.com/koichi_kawakami/status/1288498130556608513

《 けれども専門家や専門家の肩書きを持つ人の中にも、「どこまで言えるか?」の訓練ができていないか、あるいは意図的にか、基準を逸脱して言い過ぎる人がいます。 これは、瞬時に見抜くことができる。ただ普段、「ある知見を根拠にどこまで言えるか?」を考えていない人には見抜くことはとても難しい。 》 Koichi Kawakami
https://twitter.com/koichi_kawakami/status/1288503977676431365

《 連日多くの感染者が出てるのにお前らまだ感染してないの?流行に乗り遅れてるなんてダメな奴ら。
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  ↑時代おくれの男になりたい 》

《 How to crack a stone. 》 Tech Am
https://twitter.com/TechAmazing/status/1288181135638441985