『日本政治思想史』再読(閑人亭日録)

 原武史『日本政治思想史』放送大学振興会2017年2刷を少し再読。初読時には気づかなかったかった記述がけっこうある。じつに濃い内容だ。ワクワクする、が、しかし、 暑さに気もそぞろ。そぞろ。気になって辞書を引く。ま、いいか。再読は必要だな、私には。大事な箇所を見逃している。

《 具体的にいえば、かつての「皇国史観」とは別の意味で、なぜ日本の政治を支えている思想は変わらないのかを問うてみたいのです。 》 「第1章 総論1・ 日本政治思想史とは何か」 24頁

《 ここで注意しなければならないのは、こうした制度がもたらされたからといって、民主主義が完全に体現されるわけではないということです。誰よりも丸山(眞男) 自身がこのことを痛感していました。(中略)丸山にいわせれば、民主主義とは「永久革命」によってしか成し遂げられないものであり、「もう分かっているよ」は あり得ないのです。 》 「第1章 総論1・日本政治思想史とは何か」 25頁

《 しかし日本の政治体制では、支配者の資質を問う視点がきわめて弱いという特徴があります。 》 「第1章 総論1・日本政治思想史とは何か」 28頁

《 このような日本の政治思想を探るためには、個々の思想家の言説を追ってゆくだけでは限界があります。体制を支えている思想が、必ずしもテキストに書かれているわけ ではないからです。言説化されないものまで含めて思想と見なす新たな視点が必要になってきます。 》 「第1章 総論1・日本政治思想史とは何か」 29頁

《 大正期以降の天皇制は、このような狭義の政治から疎外された人々を含む「君民一体」の空間を各地につくり出すことを通して、多くの臣民に「国体」を理解させた のではなく、体験として実感させたのです。 》 「第2章 総論2・空間と政治」 36頁

《 一方、近代天皇制は、斉唱や分列式の担い手が下(臣民)であり、下からの「献上事」を上(皇太子や天皇)が「聞こしめす」、つまり受け取ることで、両者の一体感が 生れるのです。 》 「第2章 総論2・空間と政治」 39頁

《 宮城場前広場ですら、関東大震災までは活用されていませんでした。ところが広場に天皇が現れるや、そこはたちまち政治空間へと一変する。言説化した政治思想が 空間をつくりだすのではなく、逆に空間が言説化されない政治思想をつくり出すのです。 》 「第2章 総論2・空間と政治」 40頁

《 このように、有名思想家の言説を追ってゆく西洋思想史の方法だけでは、日本政治思想史を解明することができません。 》 「第2章 総論2・空間と政治」 46頁

《 ここでいう「おのずから」は日本語の「自然」に相当します。朱子学にも「天地自然の理」という概念がありますが、日本語の「自然」と中国語の「自然」や英語の ネイチャーとは異なります。 》 「第3章 総論3・時間と政治」 53頁

《 けれどもアリストテレスの場合、樫の実のなかに樫の木になるという目的が内在しているのであり、樫の木は「形相」なのです。この点は朱子学も似ています。樫の木 には樫の「理」があるのであって、樫の実が生成して樫の木になるのは、「理」が内在しているからなのです。
  これに対して日本の「なる」や「おのずから」には、「形相」や「理」に相当する概念が含まれていません。あるべき理想を目的としているわけではないので、 結果として不断に連続する「いま」を肯定してゆくことになるのです。 》 「第3章 総論3・時間と政治」 53頁

《 ここで丸山(眞男)は、進歩と進化の違いを強調しています。キリスト教の摂理史観が世俗化した歴史観であるがゆえに未来の理想社会を目標とする進歩史観に対して、 進化にはそうした究極目標は存在しません。時間軸でいえば過去も未来もなく、「いま」が無限に継起し続けることになります。その結果、先に触れた富永仲基のよいうに 「いま」という時間にしたがい、時勢を事後的に追認してゆくことになるのです。 》 「第3章 総論3・時間と政治」 55頁

《 本章では「時間と政治」という観点から、西洋や中国と異なる日本政治思想史の特殊性について述べてきました。 》 「第3章 総論3・時間と政治」 63-64頁

 メモが追い付かないほど密度が濃く充実している。凄い本だ。

 午前8時30.6℃。部屋の冷房を29℃に設定してあるけど、涼しい。思い立ってこの部屋の上(屋根)にホースで撒水。楽な打ち水。すぐに蒸発。焼け石に水、だよなあ。
 午後2時36.3℃。午後4時過ぎ、情熱をもって蒸熱の街へ買いものへ。さっさと帰宅~。

 ネット、うろうろ。

《 紺と金の一対のコントラストを好むのは、様々に変形されつつも続いた日本文化のミームで、尾形光琳の「燕子花(かきつばた)図屏風」までその影響が反映していると 松岡正剛氏が書いていたが、もともとチベットやモンゴルで『金剛般若経』を紺紙金泥で写経する伝統があったのが元にもなってるんだな。。 》 清水高志
https://twitter.com/omnivalence/status/1293559233137401856

《 こういう一対の、どちらが図でも地でもなく、それらが容易に反転し、一対になるものもヴァリエーションをもって変化していくって言うのは実に日本的なんだけど、 『金剛般若経』の思想とも合ってる。そのぎりぎりの表現としては、光琳やっぱり凄いよな。 》 清水高志
https://twitter.com/omnivalence/status/1293559234588631040

《 厳密に言うとアートはファインアートのことだけど、ファインアートだけが人間の造形文化ではないし、美術とそれ以外の絵は価値の差で分けられているのではなく カテゴリーが違うだけだというのが現代の美学や芸術学の見解ですから、美術は他よりえらいと言えてしまう人はただの勉強してない人ですね。 》 松下哲也
https://twitter.com/pinetree1981/status/1293496067372195841

《 だいたい、今ファインアート、とりわけ現代アートの領域で絵を描いている人は、いわゆる「芸術の終焉」の後の世界で絵を描く、ということをきわめて自覚的に やっている作家が多く、彼らは絵が上手いとかデッサンが正確とか、そういうのとはちょっと違うところで勝負しているわけです。 》 松下哲也
https://twitter.com/pinetree1981/status/1293500409294684160

《 安倍首相のテーブルにだけ花が置いてあるという不自然さ。

  カンニングペーパーを隠すためのカモフラージュだったとは笑える。
  こんな恥ずかしい総理見たことない 》 但馬問屋
https://twitter.com/wanpakuten/status/1292840871902076931

《 官僚の書いた原稿が無いから
  香港やモーリシャスについて
  まだ発言してないんだよ。 》 担々麺
https://twitter.com/donburi22/status/1293531758378418176

《 そりゃターミナル駅をつぶして商業店舗の全くない地下道でしかもダンゴムシの迷路にしたんだから当たり前。6年前に新潮45に書いた通り。 渋谷の地形と駅の接続空間を読み間違った地政学的な大失敗。渋谷復活はない。→東急、渋谷依存に試練 オフィス離れ加速:日本経済新聞 》 建築エコノミスト森山高至
https://twitter.com/mori_arch_econo/status/1293332692348465154