『日本文化の核心』補遺(閑人亭日録)

 昨日読んだ最終講「第一六講 面影を編集する」を再読。じつに刺激的。「「おもかげ」と「うつろい」」の項。

《 NHKが「人間講座」というシリーズを放映していたころ、日本文化についての八回シリーズを頼まれて、「おもかげの国・うつろいの国」というタイトルで日本文化の 映像をからめながら話をしたことがありました。 》 329-330頁

《 この言い方には、日本文化の精髄は「おもかげ」を通すことによって一途に極められ、「うつろい」を意識することによって多様に表象されてきたという意図を込めた のです。日本は一途な「おもかげ」を追い求め、多様な「うつろい」を通過してきたのではないか、そういう意図です。 》 330頁

 味戸ケイコさんの絵の魅力の核心を突いてくる気がする(私だけかな、それもいい)。
 「清沢満之が考えた「二項同体」の項。

《 同時代、内村〔鑑三〕より二歳下に清沢満之(きよざわまんし)という浄土真宗の僧侶(大谷派)がいました。〔中略〕
  その清沢が最も鮮明に打ち出したのは、西洋の「二項対立」によるロジックの組み立てに疑問をもって、日本人はむしろ「二項同体」という考え方をもつべきだという ことです。「二項対立」ではなく「二項同体」。デカルト的な二分法(ダイコトミー)に反旗をひるがえしたのです。 》 334頁

 「「絶対矛盾的自己同一」と「朕兆未萌〔ちんちょうみぼう〕の自己」」の項。

《 西田〔幾太郎〕がその哲学人生の結論として(西田哲学と相称されます)、ついに「絶対矛盾的自己同一」という不思議なテーゼを打ち出したことはよく知られていると 思います。 》 335頁

《 矛盾したほうがいいと言っているのでなく、絶対矛盾をかかえるほどの場面でなければ、精神の集中的な開示はおこらないと言ったのです。これは清沢の「二つながらの 関係」をいかした二項同体の考え方と同じ態度です。 》 336頁

《 禅には座禅とともに座禅から立ち上がる「出定(しゅつじょう)」というものがある。その出定のように、「意識する自己」(直観)と「意識される自己」(反省)は 次のステージに出ていくことをしてみたほうがいいのではないか。それは西洋の合理からは得られない日本的な方法になりうるのではないか。そんなふうに考えて、それを 「絶対矛盾的自己同一」と名付けてみたのです。 》 336頁

《 同じようなことを鈴木大拙も考えていました。 》 337頁

 以下、昨日の引用を一部再掲。

《 字義通りにいうと、「朕兆未萌〔ちんちょうみぼう〕の自己」とは「私(朕)が生まれ出ずる(萌)以前の自己」という意味です。〔中略〕
  しかし、そんなものがあるのか、あるとしてもそれが現在の自己とどんな関係をもつのか。難問でしたが、〔鈴木〕大拙はこれを「主客未分(しゅかくみぶん)の自己」 というふうに捉えて、われわれは主客を分けない前の主客同体のようなところで、一切を感じるべきではないかということに思い至ります。
  のちに日本的な禅学を確立した鈴木大拙は、この考え方を「即非(そくひ)の論理」と言いました。「即非」だなんてこれまた難解な言い方ですが、わかりやすくいえば、 いちいちイエス(是)やノー(非)を持ち出さないで、一挙に先に進むというニュアンスです。禅学的にいうと、それ(A)をそれでない(非A)かもしれないと思うこと から、それとおぼしいもの(A=非A)を体得していくというような方法です。西田はこれを「逆対応」の方法とみなし、大拙は「分けて分けない」という方法だと 言いました。 》 336-337頁

 午後、静岡市の小学五年生と教員120人ほどを六人で手分けして源兵衛川などへ案内。
 漫画家故つりたくにこさんの夫、高橋氏から葉書。

《 50年たって「時代がつりたくにこに追いついた」と越沼君は言ってくれましたが 有難くその言葉を受け取らせてもらっています。 》

 こちらこそ、うれしい。イタリア版、カナダ版に続いてスペイン、フランスからも出版予定。

 ネット、うろうろ。

《 「中小企業を半分にして競争力をつけろ」という言葉は、小泉内閣規制緩和の際に言われていたことの言い換えで、国内産業を国が変に保護するのをやめて自由競争に 任せましょう。そうすると強い会社が残り、新しい会社が次々に生まれ、結果的に競争力が高まって国際競争に勝てるようになると当時の委員 》 まなさん。
https://twitter.com/manaseka/status/1309140465292279809

《 会が言っていたまんま。それでどうなったかというのが、その後の日本経済の20年で、中小企業が潰れ、イオンとかオリックスとかパソナがいいとこ取りしただけ。 自由競争にしたら、資金力と人材が多い方が勝つのはあたりまえなんだよ。中小は競争力もつかずに、食われる一方だよ。 》 まなさん。
https://twitter.com/manaseka/status/1309140467234340874

《 シャッター商店街に人を集めるためにナントカアートをさせたり、取り壊しが決まってる地下街の壁に「アートプロジェクト」で描かせたり。 それを「悪戯ではなくアートで安心した」と言う人がいると。キース・ヘリングの時代のストリートアートの精神はどこにもないね(なんか見た)。 》 大野左紀子
https://twitter.com/anatatachi_ohno/status/1309346732107378689

《 端的に言って、「月七万円で生きていけるだろ、あとは「自助」でよろしく」というメッセージを発している内閣が60%以上の支持率を集めている、 ということがさっぱりわからんですが。みんなそんなリッチなの?笑 》 Kantaro OHASHI
https://twitter.com/kantaro_ohashi/status/1309156230758387715

《 まず竹中平蔵自身が月7万円で1年間生活してからモノを言いなさい。話はそれからだ。 》 okihiro
https://twitter.com/okihiro1/status/1308804747126697986

《 「月7万だけ渡して生活保護国民年金も剥がす」という発想は、朝から晩まで市井の人びとを徹底して憎み続け、どうすればよりみじめな暮らしをさせられるかだけを 延々と思考した者にしか思い付かない残酷なものだ。そうした怨念の持ち主が国の中枢で権力を保持しているのは恐怖でしかない。 》 伊藤聡
https://twitter.com/campintheair/status/1309052031894781956

《 今日の、人間生活から性的ニュアンス(あるいはメタファー)を一掃していくような方向性は、「性は繁殖期だけにしよう」を意味しているのかもしれない。 》  千葉雅也
https://twitter.com/masayachiba/status/1309316329124458496

《 これはメタファー一般の死であり、言語使用のあり方が大きく変わる。すでに変わりつつある。ある言語表現が「暗に示している」ことの読み取りが困難になり、 きわめて局限的な文脈しか考慮しない「一対一対応的」な言語になる。言語の動物化、信号化。今日の「わかりやすさ」とはそれだ。 》 千葉雅也
https://twitter.com/masayachiba/status/1309316896987033601

《 【海を愛した写真家】故・工藤正市さんが撮影した青森の記憶写真<後編> ハリヤマカズキ 》 日本財団
https://aomori.uminohi.jp/report/kudoshouichi-2/

《 ニコラスケイジ 》 nov
https://twitter.com/n_denchu/status/1309111661295435776