『重力と恩寵』四(閑人亭日録)

 シモーヌ・ヴェイユ重力と恩寵ちくま学芸文庫1999年5刷を少し読む。

《 必然。ものとものとのさまざまな関係、次には自分自身、さらには自分が心に抱いているさまざまな目的をも、この関係の一要素として含めつつ、見て確かめること。 行動はその結果としておのずと出てくる。 》 「必然と服従」 85頁

《 実在するものを見きわめる基準は、それが固くて、ざらざらしているということである。そこに見出されるのは、よろこびであっても、快適さではない。快適なものは、 夢見られているものである。 》 「幻想」 94頁

《 フロイトの説には、すっかり偏見が滲みついている。偏見とたたかうことを使命としているはずであるのに、性的なものは卑しいとみなす偏見が滲みついている。 》  「幻想」 97頁

《 キリスト教は、(カトリックプロテスタントも)聖なるものについてあまりにも語りすぎる。 》 「幻想」 98頁

《 純粋に愛することは、へだたりへの同意である。自分と、愛するものとのあいだにあるへだたりを尊重することである。 》 「愛」 111頁

 きょうの東京新聞、浜矩子「時代を読む」を読む。結び近く。

《 マスクの中でいくら作り笑いをしても、目はその「偽笑」についていけない。スカノミクスの親爺(おやじ)さんの目が、どんなに冷たい目であったか、どんなに 誠意無き目であったか。今、それが実によく分かる。前任者のアホノミクスの大将の目が、どんなにキョトキョトした目であったか。マスク着用で「桜を見る会・前夜祭」を 語る彼を見ていて、それを改めて確認した。 》

 積読本の日本文学全集・池澤夏樹訳『古事記河出書房新社2014年初版、折り込みチラシ「ぼくがこれを選んだ理由」、「20 吉田健一」。

《 評論は既成の作品の評価に終わるものではなく、一つの時代の文学を読み通すことによって次の時代の文学を用意する営為である。吉田健一は十八世紀までのヨーロッパ 文学に戻ることで二十一世紀への日本文学の道を開いた。彼のおかげでぼくたちは小林秀雄から逃れることができた。 》

 小林秀雄には胡散臭いものを感じて彼の本は殆ど読んでいない。そうか、そうか。
 全集収録作品。
 http://www.kawade.co.jp/np/search_result.html?ser_id=87453
 『近現代作家集 Ⅰ』には横光利一「機械」、佐藤春夫「女誡扇綺譚」など。
 http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309728964/
 『近現代作家集 Ⅱ』には安岡章太郎「質屋の女房」、川端康成「片腕」など
 http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309728971/
 『近現代作家集 Ⅲ』には堀江敏幸「スタンス・ドット」、多和田葉子「雪の練習生(抄)」など。
 http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309728988/
 上記の作品は特に記憶に鮮やかなものだが、どの巻にもおお、と驚く小説が。また、選外の作品に関心が向く。プロレタリア小説、私小説・・・。
 収録作品一覧。中上健次『鳳仙花』、石牟礼道子『椿の海の記』は元本でもっているけど未読。そして編者池澤夏樹の本は一冊も読んでいない。
 http://www.kawade.co.jp/nihon_bungaku_zenshu/list/

 ネット、うろうろ。

《 脳科学者の池谷裕二氏は「言語化とは、言葉にできそうな容易な部分に焦点を絞り、その一部を切り取って強調する歪曲化です」と述べる。もやもやした感情を 長く抱えたままでいるためには、そのもやもやがある日 “啓示” をもたらす悦びを得るためには安易な言語化(解像度の低減化)は避けたほうがよい。 》 中島 智
https://twitter.com/nakashima001/status/1342757528128524289

《 おっしゃることはご尤もだと思いますが、他方、自分などは、作家の開高健が「料理や味覚の全ては言語化できる」と書いていたのを読んで、 美術作品を自分の能力の限り言語化しようと考え沢山の文章を書いてきました。「言葉にできそうな容易な部分」だけが言語ではなく、言語にも色々あるとは思います。 》  布施英利
https://twitter.com/fusehideto/status/1342789464435773440

《 FacebookGoogleAmazonみたいなBigtechって、流通機能や宣伝広告機能、個人情報管理、巨大な資金と徴税装置を持っているという点で国家の要件を ほとんど満たしている。というか端的に別の国家なんだな。あとは物理的な暴力装置を持つのみというところまで来ていた。 》 清水高志
https://twitter.com/omnivalence/status/1343049202071322624

《 少なくとも20回にわたる書き換えの末「形式的な任命」の文言が削られていた。

  重要な見解の作成過程で「首相の任命は形式的」とした従来の政府解釈が草案から削除。一連の膨大な文書を記者が読み解くと、人事介入の正当化ありきで 見解をまとめていた実態が浮かび上がった。 》 望月衣塑子
https://twitter.com/ISOKO_MOCHIZUKI/status/1342718287575097349

《 世の中にはこんなに嘘を平気で吐く人がいるというのを首相や府知事から思い知らされる不幸。真面目をやる気を削がれてしまいそうやけど、大人で行こう。大人だから。  》 江 弘毅
https://twitter.com/kohirok/status/1342974055524134912