『熊楠 生命と霊性』九(閑人亭日録)

 安藤礼二『熊楠 生命と霊性河出書房新社2020年初版、「生命と霊性」を読んだ。圧巻。

《 熊楠がなによりも守りたかったのは、「神社」という人為的な建造物ではなく、「神森」という非人為的な自然環境であった。 》 202頁

《 林業が盛んだった紀州では、すでに熊楠の時代以前から、手つかずの自然は神社の「森」のなかにしか保存されていなかったという。だからこそ「神社」を 守らなければならなかったのだ。 》 202-203頁

《 熊楠の主張するエコロジーもまた、そのような手つかずの自然としてある聖なる「森」をそのまま保存することをその最大の目的としたものだった。 》 203頁

《 熊楠にとっては「粘菌」も「夢」(潜在意識)も「密接錯雑」としているがゆえ、そこから新たなものが産出されてくる「混沌たる」母胎であった。すなわち熊楠の エコロジーは自然、生命、身体と精神を一つに貫くものだった。 》 203頁

《 進化は「前進」のみに限られず、「後進」つまりは「退化」することもある。その際、種を新たなステージへと導いていくのは実は「前進」ではなく、「後進」 (「退化」)の場合が多いのだ。 》 204-205頁

《 生命は、そのすべての完全さを具えたまま原型的な形態、原型的な存在にとどまることができる。そしてそこから新たな形態、新たな存在を生み出すことができるのだ。  》 206頁

《 あるいはまた、霊長類の子どもたちは皆、直立二足歩行をしている。ただ、親になっても直立二足歩行を維持し続けられるのはホモ・サピエンスだけである。あるいは 「幼体」を保ったまま成熟すること、すなわち「幼体形成」による「幼形進化」を経ることによってはじめて人類となったのである。とするならば、新たな人類は「進化」 (前進)ではなく「退化」(後進)の方向へ、「胎児」の方向へ現れ出てくるのかもしれない。 》 207頁

《 熊楠の三つのエコロジー、生命・精神・意味の発生を粘菌・曼荼羅・潜在意識に探求する三つのエコロジーに通底し、共有されているのは「神秘」の感覚である。 》  213頁

 ここからさらに踏み込んだ論述がなされる。抜き書きではやはり、論理展開の大事な箇所が抜け落ちてしまう。それにしても連想が勝手に飛躍し、”「幼体」を保ったまま 成熟すること”に、味戸ケイコさんの絵への新たな鑑賞の手がかりを見た。幼くして成熟してしまった少女。そこにこそ味戸さんの少女の謎めいた魅力がある。
 http://web.thn.jp/kbi/ajie.htm

 正午34.1℃。午後三時34.4℃。家こもり。風の通り道の畳に横になる。ふう、心地よい~。


 ネット、うろうろ。

《 「欧米」の哲学者と話すと彼らは自分らの哲学を前に進めることを考えてて日本やアジア哲学などは眼中にない。日本の哲学者のほとんどは「欧米」のことばかり 気にして流行を追いお勉強を続けてる。この構図はここ70年続いてる。J哲学という言葉が対抗言説として出てくる背景はこれだと思うよ。 》 森岡正博
https://twitter.com/Sukuitohananika/status/1423119903339388928

《 そもそも他人の所有物を噛むってなんなんだろう。みんな、自分が大事にしてるものを他人に噛まれるという事態を想像してみよう。 》 ささきりょう
https://twitter.com/ssk_ryo/status/1422923556053151749

《 都民や国民、私たち自身に、「気の緩み」があるなどと言うのはとんでもないこと。

  一番緩んでいるのは、五輪開催した政府や組織委ですから。しかも「気の緩み」という生易しいものでなくて、「一か八かの賭けとしての五輪開催」でしたから。 》  Koichi Kawakami, 川上浩一
https://twitter.com/koichi_kawakami/status/1423188076256325634

《 「東京五輪で警備にあたる警察官用の東京都内の宿舎を、新型コロナウイルスに感染した人を受け入れる施設として改修したものの、利用されないまま元の状態に戻す ことになった。改修と再改修に要した費用は計約48億円にのぼる」

  自分の金じゃないと雑に使う。 》 町山智浩
https://twitter.com/TomoMachi/status/1422964241812770821

《 自宅では家族に感染を広げるし、急激な重症化に対応できません。軽度、中度の感染者は、大規模収容施設に隔離し、ごく少数のワクチン接種済の医療従事者が 完全防備で管理する、というのが多くの国で行われている方法です。 》 町山智浩
https://twitter.com/TomoMachi/status/1423019839363239937

《 これは英国。日本以外の国では、軽度、中度の患者を体育館などの大規模施設に隔離しています。患者同士は既に感染してるから相互感染はありません。 それをごく少数のワクチン接種済の医療従事者が完全防備で管理します。自宅療養だと家族に感染を広げ、急な重症化に対応できないからです。 》 町山智浩
https://twitter.com/TomoMachi/status/1423000185039327232

《 (もしかして、中国が当初、感染者急増時(それでも全部で数千人レベル)指数関数的予測で新型肺炎専門病院を急造していた頃、中国の対応を公然と 「民度が違う(医療が遅れてる)」と揶揄していた要人が今尚政権中枢にいるせいで、当たり前の対策でさえ誰も言い出せない状態な予感) 》 Ken Sugar
https://twitter.com/ken_sugar/status/1422966120454057986