『列島祝祭論』十ニ(閑人亭日録)

 安藤礼二『列島祝祭論』作品社2019年初版、「一遍」の章を読んだ。

《 一遍のモデルとなったのは、比叡山の「谷」でまとめられた往生伝のなかで記された空也(くうや)の生涯と、やはり比叡山の「谷」で修行し、融通(ゆうずう)念仏宗 をひらいた良忍(りょうにん)の生涯である。空也源信にやや先んじ、良忍源信の後に従った。ここに、宗教と芸術、さらには哲学が一つに融け合った、未曾有の 身体表現が生まれ出ることになったのである。 》 288頁

《 念仏は、音楽に、自然そのものが奏でる妙なる音楽に変貌を遂げる。一遍は、空也のように生き、そして良忍のように、念仏を、歌と踊りが一つに融け合った身体表現と して、世界に解放するのだ。その時、光り輝く極楽は、自らの身体となって受肉する。それが列島の祝祭の頂点となる。 》 294頁

《 比叡山は、その身一つをもって念仏による極楽往生を説き、各地を遊行した阿弥陀聖たちを自らのなかに取り込み、また、そこから輩出した。その典型が空也良忍 だった。 》 295頁

《 天台本覚思想は、ある意味においては、仏教そのもの宗教そのものの解体でもあった。なぜなら、いまここにあるがままで、ありとあらゆるものが救われている のならば、そこでは、自力にしろ他力にしろ、信仰そのものが消滅してしまうからだ。 》 297頁

《 安然以降を生きなければならなかった源信をはじめとする比叡の念仏者たち、あるいは道元(どうげん)へと至る比叡の禅者たちは、みな天台本覚思想、 「草木国土悉皆成仏」の教えから甚大な影響を受けながら、それを乗り越えたところに、自身の「信」の構造、「信」のプロセスをあらためて構築し直さなければ ならなかった。そうでなければ、仏教そのものがもつ存在価値が失われてしまう。法然の浄土宗、親鸞浄土真宗栄西臨済宗道元曹洞宗が生まれるのは、そうした 危機意識からだった。日蓮による日蓮宗創出も、また。 》 297頁

《 そのような巨人たちのなかでも、源信から法然、さらには親鸞という念仏者たちの系譜の最後に位置し、起源としての阿弥陀聖たる空也(さらには良忍)の精神に還る ことで、遊行(ゆぎょう)するその身一つの上に、本覚思想を生み出した「天台」の孕みもっていた可能性のすべてを集約させたのが、「踊り念仏」を唱え、実践した、 時宗(じしゅう)の開祖たる一遍であった。親鸞道元日蓮、一遍はほぼ同時代を、同じ百年という世紀のなかを生きていた(そのなかでも一遍が最年少である)。 》  298頁

《 『一遍聖絵』は、一遍の思想と実践が、聖徳太子弘法大師という二人の「聖」をモデルとし、修験道密教が一つに融け合う場を基盤として、良忍の「融通念仏」と 空也の「称名念仏」(「踊り念仏」)を総合してなったものだと教えてくれる。それは文字通り「列島祝祭論」の総合でもあった。 》 303頁

《 一遍がこの世を去る直前にこの世に生を受けた聖なる帝王、後醍醐は、一遍が自らとともに生き、列島の各地を遍歴した「悪党」たち、「異類異形」のものたちを自身の もとに糾合することによって、現実の秩序、現実の政治を転覆させることに成功する。 》 306頁

《 一所不在の「遊行」の僧たる一遍はまた、「諸国一見の僧」モデルとして、世阿弥によって整備された「夢幻能」を観客にひたく、つまりは「夢幻能」を開始するための 重要な役割を担うことになった。一遍の宗教と後醍醐の政治は、世阿弥と禅竹の芸術を介して一つにむすばれ合うのだ。 》 306-307頁

 じつにダイナミックな歴史だ。そこらの小説なんぞを吹っ飛ばす筆力に感嘆。

 ネット、うろうろ。

《 入った瞬間、空間が歪んだような錯覚。え?今どこ?何この完璧な世紀末ウィーンのアールデコ?気を取り直しオーナーに聞けば、1900年の創業から何も変わらないと。 第一次、第二次世界大戦を潜り抜け、気の遠くなるほど多くの人の思いが詰まった宇宙。(Googleでは名前も場所も出てこない) 》 m-take
https://twitter.com/takeonomado/status/1449082667513831425

《 エキノコックスが見つかったのは知多半島なのか。。新見南吉の故郷じゃないか。 》 清水高志
https://twitter.com/omnivalence/status/1449232793637036035

《 この前の所得倍増のとき、銀座で働いていたひとが、たしかに給料が倍になったけれど、有楽町のガード下の居酒屋で飲むビールの値段は倍以上になったと 述懐しているのを聞いたことがある。やっぱりウマい話には、いろいろあるわけだ。 》 赤城毅/大木毅
https://twitter.com/akagitsuyoshi/status/1448957635668054021

《 (承前)原稿料倍増計画を唱える政党はないのか。 》 赤城毅/大木毅
https://twitter.com/akagitsuyoshi/status/1448959338630901761

《 選挙報道はすっかり「各党/各候補者の公約は?」という、報道側の手抜きとしか言えないカタログ仕様になった。

小池都知事自民党公明党も、前回の選挙で公約したことを全然達成していなくても報道側はそれを指摘も批判もしないのだから、宣伝用のウソを言いっ放しでOK。 》  山崎 雅弘
https://twitter.com/mas__yamazaki/status/1448984647094837248

《 道元禅師は修行僧が詩作に耽るのを戒められているが、実際は禅の世界は詩偈が多く、道元禅師ご自身もかなり詩作をされているし、普勧坐禅儀に至っては 四六駢儷体という非常に気合の入った、凝った文体で著されている。つまりそういった、かなり詩作が流行った時代の感覚の中で出た表現なのだろう。 》 慈永祐士
https://twitter.com/jiei_yushi/status/1448516811964755968