『列島祝祭論』十三(閑人亭日録)

 安藤礼二『列島祝祭論』作品社2019年初版、「後醍醐」の章を読んだ。

《 金春禅竹は、天台本覚思想を芸術として、芸能の舞台として、結晶化させることができた唯一無二の表現者であった。その禅竹の、自他ともに認める代表作こそが 「芭蕉」である。「芭蕉」は、「井筒」と「杜若」の独創的な総合であり、禅竹がもつ宗教思想、その遍歴を過不足なく表現した思想劇でもあった。『法華経』、禅、浄土、 さらには密教神道。そのすべてが、「芭蕉」の身体の上に集約されている。 》 319頁

《 後醍醐は、「灌頂」を通して王法の始原にして仏法の始原、王法と仏法がともに生み出されてくるその源流に還ろうとしたのである。 》 330頁

《 『太平記』の時代以降、政治と芸術という二つの表現領域に新たな次元がひらかれた。そして、われわれはいまだにその次元を脱していない。 》 333頁

《 そのために後醍醐は、「天皇」以外のすべての身分秩序を解体してしまう。一人の超越的な帝王と、それに従う完全に平等が担保された民衆、すなわち臣民たち。そこに 特権階級が存在することは許されないし、またその余地もない。絶対的な権力をもった天皇を中心とした絶対的な民主制。民衆は天皇と直結し、天皇は民衆と直結する。 明治の維新が、建武の新政の完全な反復であることがよく分かる。後醍醐は上からの革命、「維新」としての「新政」を断行したのである──北一輝の『日本改造法案大綱』 (一九ニ三年)に述べられた天皇からの革命、それによる天皇社会主義の実現は、実にこのときほぼ完全なかたちで果たされていたのである。だからこそ、後醍醐の 可能性と不可能性を問うことは、日本の可能性と不可能性を問うことと等しいのだ。
  後醍醐にとって、自身がこれから起こしていくであろう革命のためには、なによりも「自由」と「平等」が、言葉の真の意味でアナーキー無政府主義的)な「自由」と 「平等」が必要不可欠であった。 》 334頁

《 身分の秩序が一切撤廃されて、人々はただ遊び戯れ、舞い歌う。性的な自由が政治的な自由へつながり、性的な解放が政治的な解放へつながる。 》 336頁

《 「猿楽」は、外なる怪物を引き寄せ、内なる怪物を解放するのだ。
  『太平記』による田楽や芸能のダイナミックな描写は、ほとんど合戦における戦士たちの闘いの描写と等しい。(引用者・略)「異形異類の怪物」と「悪党」、芸能の 民とゲリラの戦士は一つに重なり合うのである。 》 338頁

《 列島の祝祭を構成するすべての要素がここに総合される。宗教と政治と芸術が密接に関連し合った革命と反革命と。われわれがかつて生き、いま生き、これからも 生きていかなければならないのは、そのような時空間なのだ。 》 339頁

 いやあ、参った。息を呑む論述。最後の章「後記 後醍醐から現在へ」を読んだ。

《 現在を知り、現在を根本から変革していくためには政治の革命、現実の革命のみならず宗教の革命、解釈の革命こそが必要なのである。その系譜を知り、理論においても 実践においても、引き継ぐことが必要なのである。そのために列島の祝祭に起源、その原型にさかのぼる必要がある。近代的な天皇の起源である中世的な天皇にさかのぼり、 さらには天皇という観念そのものをいったん解体してしまう必要がある。再構築は、あるいは脱構築は、そうした徹底的な解体、解釈の──批評の──徹底からしか 生まれないであろう。 》 348頁

 安藤礼二『列島祝祭論』作品社2019年初版を読了。引用はしなかったが、本文で触れられていた折口信夫の小説『死者の書』(283頁)を再読したくなった。谷崎潤一郎 の『吉野葛』(341頁)はそろろそろ読まなくては。「産霊(ムスヒ)」(346頁)からは半村良『産霊山秘録』を再読したくなった。

《 男女の交合を即身成仏の基盤とした「邪教」(立川流)としての密教に熱狂的に帰依した「異形」の天皇という、網野善彦によって提出された後醍醐天皇のイメージは 修正される必要がある。 》 326頁

 立川流を取り上げている村岡空『狂気の系譜』伝統と現代社1977年初版を再び開きたくなる。現場は電車で二十分足らず。この本の最後は「柔構造の巨人─南方熊楠」。

 ネット、うろうろ。

《 本日の目的地はこちらの隧道だったのですが、入る前から雰囲気出過ぎてるし、中のブツブツに堪らず絶叫しながら駆け抜けてしまった。 》 がちゃ/gacha
https://twitter.com/gachaps/status/1447202223100858371

《 この10年で明らかになったネアンデルタール人の文化レベルは驚き。集落に10種類以上の薬草を植え、身体に障害を持ったまま成人し埋葬される。 服装からも連続はよく分かる。「腰蓑ゴリラ原始人」はもういないのだ。 》 m-take
https://twitter.com/takeonomado/status/1449345457227026434

《 「絵が、具象化すると表象に堕ちますか?」との質問。
  「具象だから表象、という感覚はまちがいですね。そもそも〈具象/抽象〉という分け方が、表象的な見方にすぎません。ポイエーシス側にとっては 〈自体/表象〉という分け方になります。〈そのもの〉か、〈再現〉か、という違いしかありません。」 》 中島 智
https://twitter.com/nakashima001/status/1449297635911684101

《 これは棟方志功が言った「わたしは〈花の絵〉ではなく〈絵の花〉を描くのだ」ということである。すなわち〈再現〉ではなく〈そのもの〉としての絵である。 絵が、絵自身が、考える絵である。これは制作系の美大生たちに、最初に言うことだけれど、世間一般的にどれくらい共有されているかはわからない。 》 中島 智
https://twitter.com/nakashima001/status/1449304755054858246

《 次の衆院選では最高裁判事全員にバツをつけます。安倍政権により任命された15人です。加計学園の弁護士だった判事も異例の抜擢をされています。 次の衆院選三権分立を取り戻しましょう。 》 ユクサ・ターヤ@本当の国益を考える
https://twitter.com/koueki2/status/1176442174801494017

《 これは総選挙前に確認すべき重要なグラフです。日本経済はここ20年間以上、賃金が上がらない「賃金デフレ」が深刻です。これに加えて、消費税や社会保険料などの 負担は増加しているので、可処分所得はもっと減ります。これでは経済がよくなるはずがありません。 》 大内裕和
https://twitter.com/ouchi_h/status/1449332387851030528

《 今度の選挙が「利権VS人権」っていうのは、
  ホントにその通りだと思うのだけども。

  利権側の人達の方が、必死に選挙に行きそうだよねぇ。自公政権のままの方が自分が儲かるっていう人たち。

  このまま国ごと沈み続けたら、目の前の儲けも維持できなくなるのにね 》 buu
https://twitter.com/buu34/status/1449527427596570626

《 岸田首相は敵基地攻撃能力の保有に意欲を示した。敵基地を攻撃したらどうなるか火を見るより明らかだ。全ての敵基地を瞬時に破壊はできない。 結果として敵のミサイルで小さな島国日本は破壊され尽くす。日本の外交安保政策は敵基地攻撃能力を高めることではなく、敵を作らないことでありそれしかない。 》  鳩山友紀夫(由紀夫)Yukio Hatoyama
https://twitter.com/hatoyamayukio/status/1449303058991628304