『デューティーフリー・アート』四(閑人亭日録)

 ヒト・シュタイエル『デューティーフリー・アート:課されるものなき芸術 星を覆う内戦時代のアート』フィルムアート社2021年初版、第五章「茫洋たるデータ── アポフェニアとパターンの認識(または誤認)」を読んだ。前章ではよくわからなかったが、この章ではぞっとする感覚。コンピュータ・ネットワークをめぐる現実世界の 恐ろしさ。

《 アポフェニアとは、ランダム・データに一定のパターンを知覚することをいう。雲や月面に顔のイメージを認識する行為というと、一番分かりやすいだろうか。 ベンジャミン・プラットンが近年述べているように、アポフェニアの本質は「分かちがたい知覚的同時性を唯一の直接的連繋として、情報源から関連性と成果を引き出す」 点にある。 》 89-90頁

《 これ以外にも、難民を別々の集団へと引き離すことを約束する、そんな技術が存在する。それは、IBM社の人工知能システム「ワトスン」をベースとした試験的な プログラムで、難民を装ったテロリストの識別を目指すものだった。 》 95頁

《 このシステムは、ある難民がじつはテロリストかもしれない、その可能性を「スコア」の数値として出すものだった。そしてそこで採用されるのが、ダークウェブの 情報を含む非公式データベースで構成された、相互参照機能だ。 》 96頁

《 では、純然たるノイズのなかから何かを認識するとき、その方法としてどんなものが考えられるだろう。知覚反応の型に沿った純粋なアポフェニアを見事に視覚化し、 これを近年発表したのが、グーグルのリサーチラボだ。 》 99頁

《 ニューラル・ネットワークは、接線や外形、多くの物体と動物を識別できるよう訓練された。その後、このシステムを純粋なノイズに適用する試みがなされたのだが、 このとき何を「認識」したか、想像がつくだろうか。結果的に出てきたのは、身体を持たず、複数の眼球(大体の場合、まぶたがない)が散らばった、カラフルで ごちゃごちゃしたフラクタル模様のようなイメージだった。この「フラクタル模様」は、意識を持ちうるほどに過剰なパターン認識が行われた、その成果を嫌というほど 見せつけ、しかも彼らをみている側の人間をまじろぐことなく監視している。
  グーグルの研究者は、ノイズのみからパターンやイメージを生成する行為を「インセプショニズム」、または「ディープ・ドリーミング」と呼んでいる。とはいえ、 これらは素朴な意味での幻影ではない。 》 100-101頁

 これがじつに気味悪い。

《 インセプショニズムの功績は、生産消費者(プロシューマー)のネットワークの無意識世界を視覚化してみせたことだ。言うなれば、みられる側からもユーザーを 監視し、ユーザーの目の動き、振る舞い、好きなものをひっきりなしに記録する、そんなイメージがあるとして、それをビジュアライズしたのだ。 》 102頁

《 しかもこれは、徹底したリアリズム的表象なのである。 》 103頁

《 このように自動生成するアポフェニアが、私たちに何かを教えるとして、それはどんなことだろうか。私たちはこんな仮説に依って立つべきなのだろうか。すなわち、 機械の知覚が呪術的思考という独自の局面に差し掛かっているのだと。 》 104-105頁

《 信用スコア、学術スコア、脅威度スコアなど、広範囲にわたる社会スコア、また商業や軍事といった領域でのパターンとしての「生」の観測は、ランキング、 フィルタリング、および等級化によって社会的ヒエラルキーを再編し、同時にそれを急激な変化に晒す。そしてこの再編と変革を通じ、現実の人々の現実の生活へと 大きな衝撃をもたらすのだ。 》 108頁

 背筋が寒くなった。

 第六章「メディア──イメージの自律性」を読んだ。

《 機械が互いに示し合うのは、認識不可能なイメージ、もっと言えば、人間の目では捉えようのないデータ群である。現実創造のモデルとして、それらは用立てられる。 では、認識不可能なイメージから出来する現実とは、どんな現実なのだろう。 》 127頁

《 現実のためのモデルの構成要素が、次第に人間の視覚を超えたデータ群となりつつあるのだとすれば、このモデルに従い生み出された現実もまた(全面的ではないにせよ) 人間の認識枠を超え出ているだろう。 》 127頁

 ネット、うろうろ。

《 誰か英訳の確認しなかったのかw 》 吉田 拳
https://twitter.com/sugoi_kaizen/status/1460230265138135058

《 独創とか天才の意味とは、「その人がいなければ人類はけっしてそれに気づけなかった、それを表現できなかった」ということなのだろう。 》 森岡正博
https://twitter.com/Sukuitohananika/status/1460435946214596609

《 今までいろんなものを通販で買ったが、「ステンレス真空断熱ラーメンどんぶり」は本当に要らんかった。ラーメンがいつまでたっても熱くて食えやしねえ。 そのうち麺が伸びてくる。ラーメン以外のものを入れるのが吉。 》 田中泰延
https://twitter.com/hironobutnk/status/1460040254509883395

《 オーディエンス環境というのは、古今東西にわたって重要で、観客が舞台を育てたり、目利きが職人を育てたりしてきた。そのオーディエンスが「○○らしさ」しか 視なくなったら、例えば「現代アートらしさ」として、必要のない字幕が映像に付されたり、呼吸のないタッチ/筆触で画面が覆われたりする。 》 中島 智
https://twitter.com/nakashima001/status/1460254423020572682

《 五輪をやったのに経済効果ゼロで-3%成長。これが現実。
  もう二度と日本で五輪はやらなくていい。 》 ふわかぶ@政治哲学系配信者
https://twitter.com/fuwakabu/status/1460105126698700800

《 ああ、ピアノと百科事典だよなあ。でもそのバカバカしい余剰が国力でもあったんだよなあ… 》 会田誠
https://twitter.com/makotoaida/status/1460245303785787392

《 【自民党「影の幹事長」Dappiへの関与否定】

  「Dappi」の投稿発信元の回線契約者がWEB制作会社だった問題。

  その社長が、「影の幹事長」と呼ばれる自民党本部事務方トップの男性の親族であることが明らかに。

  男性は取材に対し関与を否定。そのつながりを追いました。 》 BuzzFeed Japan News
https://twitter.com/BFJNews/status/1460367133863518211

《 これ犯罪じゃないん? 》 津原泰水(やすみ)
https://twitter.com/tsuharayasumi/status/1460116065451606018

《 単にぐうの音も出なくなり、開き直っただけでは? 》 ささきりょう
https://twitter.com/ssk_ryo/status/1460236011867295744

《 志位委員長に完全な切り返しをされた松井一郎の表情が見物。共産党が事前に察知して仕込みをしなければ、これすら維新の言いっぱなしで終わっただろう。 維新の他党批判とはこういうもの。そして反省もしない。その場で切り返される例は少ないから。デタラメを吹きまくった方が効率が良い。 》 渡辺輝人
https://twitter.com/nabeteru1Q78/status/1460094597208543234

《 自分たちの利益のために他者を利用する人たちが、
  弱者を守るなんて思えないよね 》 buu
https://twitter.com/buu34/status/1460253194701852672