『デューティーフリー・アート』八(閑人亭日録)

 ヒト・シュタイエル『デューティーフリー・アート:課されるものなき芸術 星を覆う内戦時代のアート』フィルムアート社2021年初版、第十二章「あえてゲーム (または、アートワーカーは考えることができるか)」を読んだ。この章もまた、私の感知せぬコンピュータ・ネットワークの深く危険な話題。

《 ゲームとは、選択の自由が許された遊びの機会というだけでなく、習慣的な行動指針に向けたトレーニングの場でもある。それは特定の反応パターンを教え込み、 条件反射的な起動力を養う。その影響は「有用性のゲーム」として死の灰のごとく降り注ぎ、生のあらゆる居面に浸透している。 》 286頁

《 社会信用ゲームの目指す先は娯楽ではなく、そこには予測機能の強化という目的がある。その方途は、「監視、データ収集、オンライン・チェック、行動追跡」といった 諸々の複合的実践であり、これは「実質的に、市民の個人的対応(および、市民の存在自体)の全体を、市場という次元から提示する」ものだ。 》 296頁

《 では、諸美術をみたとき、そこでの同類親和性とはどんなものか。そこでは、別の人間(あなたに似た誰か)が美術だと認めるものは例外なく、美術として(ほぼ確実に) 同定される。(引用者・略)クラップストラクト[クソの/くだらない抽象]は、ランダム・データのランダム・パターンで構成されたアブストラクト・ペインティングで、 投機対象にもなり、ゆえに金銭的な便益もたっぷりある(クラップロード)。 》 299頁

《 しかし、クラップストラクションが美術館に隔離される場合はどうだろう。そうなればもう、アーティストはランキングのためのアルゴリズム、その明晰さを軸に 評価されうるようになる。同様のことは、中国の「社会信用システム」、債務担保証券クレジット・デフォルト・スワップなどにもいえるが、これらは然るべき後に、 純粋に美学的な対象となる。 》 301頁

 第十三章「ファシズムについて語ろう」を読んだ。

《 政治的代表制をめぐり近年に共通認識化した点の一つが、政界の代表者にもいよいよ権力の弱体化がおよんでいるということだ。現代の権力は政治よりも経済によって コード化されていると、人々は感じている。このため皮肉にも、政治的代表制はにわかに文化的表象に近づいてきている。(引用者・略)
  表象=代表制における、これらすべての零落に共通すると考えられる一つの概念が、投機=思弁(speculation)である。これは金融市場における手法であるとともに、 認識論的な方途でもある。 》 316頁

《 投機=思弁全般を特徴づける多くの事柄、とくにその現実との(リスクを帯びて裏付けを欠いた)関係は、デジタルの表象に固有のものである。そして表象そのものが、 投機=思弁を通じておおいに活性化する。その結果、今日広くみられるケースのように、指示対象と記号との、そして個人とプロシキ=代理の関係は、この上なく予測 しがたいものとなる。言うなれば、投機=思弁が表象を加速させるのであり、そしてそれは、現代の私たちが凌いでいる状況の混迷、その進行速度を早めていく。
  これはたんに悪材料であるだけではない。投機=思弁を手段として得られるのは、表現と思考の新たな解放、その可能性なわけだが、同時にそれはたやすく弊害に つながる。 》 318頁

《 表象=代表制の錯綜した成り立ちを一括消去したように見せかけるファシズムはそれによて、自らが現代における投機=思弁的な表象=代表制の究極的な虚構であること を隠す。
  ファシストたちにとってのこうした状況の利点は、彼らのイデオロギーが現代の経済的パラダイムと非常に親和しやすい、ということだ。ファシズムにとって、社会など というものはなく、個人の欲深さと力への意思がすべてである、そんな謳い文句のイデオロギーは非常になじみやすいものなのだ。(引用者・略)とくに、一人称目線の シューティング・ゲームとインターネットの狂騒に象徴される時代にあって、ファシズムは「加熱資本主義」を補完する理想的な機構であるかにみえる。 》 319頁

 なんとなくそんな危険な気配が忍び寄る気がして肌寒くなる。あ、夜になって冷えてきたのか。

 午後、源兵衛川上流部、蓮馨寺横の、夏の間にずいぶん伸びたヒメツルソバを駆除。やれやれ。

 ネット、うろうろ。

《 玄光社様より「えちえち百景」の献本をいただきました。ありがとうございます。しかし、この本に私を載せてよかったのか?Twitterアカウントが誤植のままだぞ。 》  マキエマキ
https://twitter.com/makiemaki50/status/1461662577583214595

《 <フクシマからの報告 2021年秋> やはり放射性物質を運んでいた/烏賀陽(うがや)弘道/Hiro Ugaya  》 note
https://note.com/ugaya/n/na89ac179ad0e

《 「批判ばかりの野党」?
  「違反ばかりの与党」でしょ 》 中野 昌宏
https://twitter.com/nakano0316/status/1461706878006611968

《 野党共闘はリベラルに寄りすぎ、人権問題を強調し過ぎ、と言われるけど、ジェンダーギャップの解消も、夫婦別姓も、技能実習生問題も、気候変動対策も、 日本が酷すぎて、世界から呆れられてる状態を、せめてどうにかしようというレベルの話ばかりで、極左でも何でもない。与党がやらないのが問題。 》 平野啓一郎
https://twitter.com/hiranok/status/1461532588640591874

《 政府は19日の閣議で、共産党に関し「暴力革命の方針に変更はないものと認識」とする答弁書を決定した。

  何の証拠も提示せず、内閣が閣議で特定の政党を暴力集団と決めつける。誰もがいつ犯罪集団と閣議決定されるかわからない。これ、名誉毀損で訴えてはどうか。 》  町山智浩
https://twitter.com/TomoMachi/status/1461584935555190784

《 ジャーナリズムが批判的思考(クリティカル・シンキング)を失うと、権力者の一方的な言いがかりでしかない政治的攻撃でも「閣議決定」という形式で 権威化されれば、頭からっぽの人形のように無批判で記事にして社会に拡散し、言いがかり攻撃の片棒を担ぐ役割を担ってしまう。 》 山崎 雅弘
https://twitter.com/mas__yamazaki/status/1461647556128083971

《 「寄付させる」じゃなくて「召し上げる」だろ。関西TV局の堕落は超絶的なレベルに達している。 》 白井 聡/Shirai Satoshi
https://twitter.com/shirai_satoshi/status/1461744515732041733

《 視覚言語としてのグラフィックレコードが見せる世界|清水淳子 》 遅いインターネット
https://slowinternet.jp/article/20211118/