『ある緩徐調』(閑人亭日録)

 角宮悦子歌集『ある緩徐調』短歌新聞社1974年7月15日刊を開く。三種類の付箋が貼ってある。付箋を剥がし新たな気持で再読。好みを少し。

  純白のトックリセーター着て行くはひそかにイブの血を隠すため
  抱へたる薊に刺されて乳房あり告白するときめてはおらぬ
  背後より抱かるるとき幾千の星が打ち合ふ閉ぢし瞼に
  夫よりも激しき動悸うちながら月光のなか樹液がのぼる
  桃の雫の匂ひして夕映ひろがりし街を歩めり誰とも無縁
  われよりも鋭き初夜は来む乳首ほどの蛇苺を踏む少女
  マッチ擦る刹那火は匂ふすでにとりかえしのつかざる明日(あした)
  夕べとも夜明けともつかざる薄明へ紛れて行きし死後のわが影

 師の前田透の序文。

《  角宮悦子がわれわれの前にあらわれたとき、こわれ易いガラス器のような感じであった。(引用者・略)私は彼女が、少女時代に山下陸奥によって手ほどきされ、 新歌人会に所属して、中井英夫時代の「短歌研究」の新人賞候補になったことなど当時は何も知らなかった。 》

 初期の短歌に惹かれる。「マッチ擦る刹那火は匂ふ~」など寺山修司の名歌を連想。

  マッチ擦るつかの間の海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや

  1957年の作品集『われに五月を』収録だから角宮悦子は知っていたのかも。

 一年近く編集に協力してきた小冊子、ことばのたね実行委員会 編『みしまとまこと』(詩人・大岡信と三島をめぐるハンドブック)の印刷があがる。三島市の助成を 受けて制作。午後、二冊を受けとる。一冊をグラウンドワーク三島へ持っていく。やれやれ。巻末に「三島市民・K氏の蔵書」の写真。

 ネット、うろうろ。

《 川崎の浄慶寺にあるIT羅漢像めちゃめちゃ良い……。 》 デイリーポータルZ
https://twitter.com/dailyportalz/status/1493807446481313795

《 トークゲストや出品作家にたいする「豪華〜」「錚々たる〜」「世界的な〜」「一流の〜」といった形容は、はやく死語になってほしい。豪華も貧相もない、 一流も亜流もない。適材適所かどうかだけである。 》 中島 智
https://twitter.com/nakashima001/status/1493962428731650050

《 同じ事象も伝え方で、全く逆の印象を与える好例。今日の朝日と読売。教材にしよう。 》 Shoko Egawa
https://twitter.com/amneris84/status/1494110953339645952

《 2/17木曜日。きょうも10時から憲法審査会が始まる。

  山添拓議員「緊急事態条項で、内閣総理大臣が “緊急事態だ” と言いさえすれば、国会の権限を取り上げ、内閣が法律と同じ効力を持つ命令を出す。 民主政治の基本と言うべき議会の機能を止めるものです。」

  私は #憲法審査会 の開催を求めていない。 》 tumugi
https://twitter.com/tumu1209/status/1494108458454781954