『現代思想入門』四(閑人亭日録)

 千葉雅也『現代思想入門』講談社現代新書2022年3月30日2刷、「第五章 精神分析現代思想──ラカンルジャンドル」を読んだ。

《 ラカンは大きく三つの領域で精神を捉えています。第一の「想像界」はイメージの領域、第二の「象徴界」は言語(あるいは記号)の領域で、この二つが 合わさって認識を成り立たせている。ものがイメージとして知覚され(視聴覚的に、また触覚的に)、それが言語によって区別されるわけです。このことを 認識と呼びましょう。第三の「現実界」は、イメージでも言語でも捉えられない、つまり認識から逃れる領域です。 》 158頁

《 カントが現象と呼んでいるのは想像界象徴界の組み合わせです。人間はイメージ(感性)と言語(悟性)によって世界を現象として捉えている。しかし、その 向こうに側に現実界(物自体)があり、それにはアクセスできない。にもかかわらず、それにアクセスしようと思っては失敗し続ける。
  この捉えきれないものを捉えようとして失敗し続ける人間という「空回り的人間像」のようなものが成立したのが近代です。 》 169-170頁

 「第六章 現代思想のつくり方」を読んだ。これはまた、面白い。

《 僕の仮説ですが、フランス現代思想をどうつくるかというとき、三つあるいは四つの原則を立てられると思います。それは、①他者性の原則、②超越性の原則、 ③極端化の原則、④反常識の原則、です。四番目はやや付け足し的かもしれません。 》 177-178頁

 二一世紀に入ってからの、西洋におけるポスト・ポスト構造主義の展開は、ポスト構造主義的な同一性と差異の二項関係をさらに脱構築するというかたちで展開 していくものだと言えるでしょう。だけれど、僕の考えでは、日本現代思想には先駆的にそうした問題意識があって、独自の展開を遂げていました。ただ、 西洋の人たちはその文脈を知りませんし、それとは別にさらなる脱構築を進めているということになります。 》 187頁

 「第七章 ポスト・ポスト構造主義」を読んだ。これまた、じつに興味深い。

《 オルタナティブな有限性とは、行動の有限性、身体の有限性に他なりません。
  こうして、ただそれ自体であるものへと向かうポスト・ポスト構造主義の議論は、複数的なものへのと向かう日本現代思想と合流することになります。
  ひとつの身体が実在する。そのことに深い意味はない──メイヤスーの絶対的偶然性の哲学は、おのれの謎=Xをめぐるアウグスティヌス的無限反省の その手前へ、というフーコーの方向性と密かに共鳴している。 》 213頁

《 私がこのようにあることの必然性を求め、それを正当化する物語をいくらひねり出してもキリがありません。今ここで、何をするかです。今ここで、身体=脳がどう 動くかなのです。 》 214頁

 背中を押された気分。「附録 現代思想の読み方」「おわりに 秩序と逸脱」を読んだ。千葉雅也『現代思想入門』読了。誰かに勧めたくなるが・・・いない。

 ネット、うろうろ。

《 WATCH: Royal gifts from Japan to Britain go on display in a London exhibition https://reut.rs/3JoSdFK 》 Reuters
https://twitter.com/Reuters/status/1515724264954994692

《 夫が恐竜レースに出るって言うから応援に行ったらシュールすぎた… 》 岡部楓子(TSKアナウンサー)
https://twitter.com/fuk8kabe/status/1515257912087629825

《 芸術、それから学術もだが、それは脱目的性が核心であるというのは、ハイデガーの哲学につながる。つまり、ものの存在それ自体を、何をどうするかという 実際上の必要から切り離して取り扱うことである。 》 千葉雅也『現代思想入門』発売
https://twitter.com/masayachiba/status/1515877839647965188

《 読みを展開していて、なるほどと思うとともに、久米歌もそう言うものだったんだろうと思った。「個人にとっての統合された諸感覚」なんてものではなく、 世界にそのまま転がっている五感のリアリティ。 》 清水高志
https://twitter.com/omnivalence/status/1515563035166867456

《 身体知は、理由がわかるまえに違和感を抱かせてくれる。この違和感がうまく働かないと、皆んなが/偉い人がそう言ってる、とか、これが新潮流/最先端だと 喧伝されたものに乗っかるしかできなくなる。つまり、フレーム思考しかできなくなる。流言・浮言が氾濫する時代ではなおのこと、身体知が必須。 》 中島 智
https://twitter.com/nakashima001/status/1515780061911166982

《 戦後日本の「奇跡の復興」は、戦後10年近く官僚と政治家が何も出来なかった結果。日本人の創造性は十分に発揮され1990年まで続く。今の日本を覆っているドス黒い 閉塞感を晴らすには、官僚と政治家を今の1/50くらいに減らし、利権やら何やらをゼロリセットするしか無い。 》 m-take
https://twitter.com/takeonomado/status/1515928593380958212

《 例えば、日本政府はいまだにミャンマー軍の幹部及び士官候補生を国内で軍事訓練しつつ、既存のODAも継続しています。

  軍事訓練に関しては、東洋経済共同通信朝日新聞、ロイター通信、Irrawaddyなどが報じているにもかかわらず、NHKは完璧にスルーしました。 》 Teppei Kasai
https://twitter.com/TeppeiKasai/status/1515867281913688065