『〈私〉をめぐる対決』二(閑人亭日録)

 永井均森岡正博『〈私〉をめぐる対決──独在性を哲学する』明石書店2021年12月15日初版第一刷を少し読んだ。

《 永井によれば、デカルトの「われ思うゆえにわれあり」もまた、その罠に落ちたのだった。すべてを疑うことによって、最後に残ったのは、いま疑っている「この私」 ではなくてはならない。デカルトは、いったんはそのように考えたのである。しかしながらデカルトは「この私」[”この”に強調点]があるという結論を、いつのまにか、 誰にでも当てはまるよな「私」があるという結論へと読み換えてしまった。これがデカルトの落ちた罠であり、ここには「何か不可避的な力がはたらいているのだろうか、 と永井は問うている。 》 「第3章 〈私〉の哲学を深堀りする」 117-118頁

《 公共言語によって「独在性」が別のものへと読み換えられようとするたびごとに、たえずそれを否定していく運動によってのみ、独在性の〈私〉は指し示される。 (引用者・略)そして、同型の思索は古代インドにも見られる。すなわち、ウパニシャッドにおいてアートマンは、「そうではない、そうではない」のアートマンと 呼ばれることがあり、絶えざる否定の連続としてのみ接近できるとする思索がはっきりと存在していたのである。ブッダの「非─我」の哲学もこの影響下で成立したと 考えられる。 》 「第3章 〈私〉の哲学を深堀りする」 136-137頁

 ここまではなんとかついていけたが、その後はただ文面を追うのみ。いつ理解できるか。五里霧中。夢中になって読む、か。

《 永井は、現実性の成立を〈私〉の独在論の本質であるとみなした。これによって、永井は、〈私〉の独在性についての「現実性アプローチ」を切り開いたと言ってよい。 (引用者・略)また永井は、現実性問題は時制においても鍵になると考える。なお、時制において「私」に対応するのは「今」である。
  永井は、世界に現実性が付与されるこの奇跡のような出来事を「開闢」と呼ぶ。開闢とは、世界が現実の世界として開かれることであるが、その開けにおいて世界には いかなる実在も増加していない。ただ現実性のみが世界には付与される。この問題においてはじめて「始まる」ということが可能になる。そして世界はつねに開闢し続けて いると考えられる。言語はこの開闢を隠蔽しつつ開く。 》 「第3章 〈私〉の哲学を深堀りする」 161頁

 〈私〉と「私」。間違えそうになる。

《 最初の論点は、〈私〉と「私」の二重性あるいは二面性についてである。永井は、〈私〉の独在性から出発して「私」の客観性(客観世界)に至るルートと、「私」の 客観性から出発して〈私〉の独在性に至るルートについて考察し、前者のルートをたどることはでいても後者のルートをたどることはできないと述べる。 》  「第3章 〈私〉の哲学を深堀りする」 169頁

《 独在性から客観性へは行けるが、客観性から独在性へは帰れないようになっているのだ。永井はこの点に、独我論というものの本質を見ている。 》  「第3章 〈私〉の哲学を深堀りする」 170頁

《 しかしながら、「人物○○が〈私〉である」という命題を措定して開始される思考実験は有意味には成立しないとは考えざるを得ない。これが現時点での森岡の結論で ある。これを、他者を認めない独我論であるとするかどうかであるが、それはむしろ独我論の定義によるであろう。 》 「第3章 〈私〉の哲学を深堀りする」 179頁

《 この開闢によって、独在側から公共側への「抜け」が起きるとき、世界に何ひとつ実在は追加されていないそれは「抜け」が起きたあとに世界に付加された背景光の ようなものの存在である。 》 「第3章 〈私〉の哲学を深堀りする」 198頁

 最後の引用は、本文から離れて美術のほうに使えそうな予感。

 ネット、うろうろ。

《  【速報です】

  2008年に #ダーウィンが来た のロケを行っていた、NHK鹿児島局
  @nhk_kagoshima
  の取材班が撮影したトビウオの映像。

  これが「トビウオの最長飛行」として、ギネス世界記録に認定され、公式認定証を贈呈いただくことになりました。

  皆様、ありがとうございます。

  ▼その動画を見る▼ 》 NHK広報局
https://twitter.com/NHK_PR/status/1524609159618088960

《 芸術とは〈わたし〉以前に開かれていく欲動である。「コンセプトを立てて制作しなさい」とか「その作品の社会的意義はなに?」とかのたまう方々は、〈わたし〉とは 〈わたしたち〉に組み込むべきものだと盲信している。この盲信によって、たんに一つのローカルな芸術文化を普遍化することに与している。 》 中島 智
https://twitter.com/nakashima001/status/1525258905520967680

《 芸術作品の表現内容が結果として道徳的なものから逸脱するということと、芸術を口実としてそこで差別や暴力が実際に行われることとは、まったく別のことなので 決して混同してはならない。 》 大野左紀子
https://twitter.com/anatatachi_ohno/status/1525025986839924736

《 見直すべき。「ノーベル賞受賞者たちは一様に「最初からノーベル賞を取ろうと思って研究を始めたわけではない」と話す。ノーベル賞を受賞するとして、 特定の科学者たちに集中して資金を与えることがどれほど無駄なことなのか、受賞者たちが口をそろえる。」 》 森岡正博
https://twitter.com/Sukuitohananika/status/1524990424544608256

《 近畿大世耕弘成理事長)の不当労働行為。

  「組合が謝罪しないと団交応じない」近畿大学の対応を不当労働行為と認定 大阪府労委|弁護士ドットコムニュース https://bengo4.com/c_5/n_14466/@bengo4topics
  から 》 ささきりょう
https://twitter.com/ssk_ryo/status/1525085444005715968

《 Shireen Abu Akleh記者のご遺体がラマラのアルジャジーラ本部に到着した。彼女は約25年間、パレスチナで行われているイスラエルの残虐行為に関する真実を伝える ことに専念していた。
  ありがとうShireen、安らかに。 》 駐日パレスチナ常駐総代表部
https://twitter.com/PalestineEmb/status/1524622449656348673

《 かつてイスラエルパレスチナと3年半ほど深く仕事した身としては看過できないニュース。ほとんどの日本人は世界中の紛争、その1/10くらいを、片側からのみ見ている。 一方的な正義を振りかざしてカタルシスを得るような報道が全てプロパガンダだったのは歴史が示す通り。 》 m-take
https://twitter.com/takeonomado/status/1525188664481005569