「かわいい」の向こう(閑人亭日録)

 味戸ケイコさんの絵で「かわいい!」という絵は少ない。彼女の絵の少女、女性は、孤立、個立、個律の三つに分類できる。
 http://web.thn.jp/kbi/ajie.htm
 「かわいい」が席捲した平成時代。『日本美術全集 第19巻 戦後~1995 拡張する戦後美術』小学館2015年8月30日初版で編集の椹木野衣は、収録された『雑誌 『終末から』表紙絵』の解説で書いている。以下抜粋。

《 しかし、一九八○年代も半ばとなり、バブル前夜の楽天的な気運がそんな陰りを一掃してしまうと、気づかぬうちに、いつのまにか見かけなくなっていた。けれども 味戸の絵は深く人々の心に沈み、決して消えることはなかった。それどころか、こうしてあらためて見たとき、味戸の絵は、いまもう一度、その役割を取り戻しつつある ように思われる。(引用者・略)何もここまで、というほど緻密に手を入れられた画面は、いくら見続けても新たな発見が尽きないほどだ。そしてこの漆黒の闇。その底はいったいどこへ続いているのだろう。 》 273頁

 「孤立、個立、個律」は、今朝方浮かんだ着想で、まだアイデアのみ。
 昼前、知人の車に友だちと同乗、熱海市MOA美術館へ。葛飾北斎富嶽三十六景』と歌川広重東海道五十三次』を鑑賞。どちらも目を瞠る鮮やかな摺り。 こんなに保存状態の良いものは初めて見た。それから出口近くの展示室の千住博の大作日本画『WATER FALL』を見る。うーん、なんだろう。私には縁の無い絵か。 と、その時、味戸さんの新作の小さな絵が浮かんだ。

《 案内葉書ではなく、幾筋もの静かに流れ落ちる滝を背景に、川の浅瀬のせせらぎに少女が素足で立っている絵に注目。川底には小さな石ころがびっしり。 膝までだろうか、水の中の足と石ころの表現がじつにいい。清冽な水の透明感もさり気なく、見事に表現されている。 清冽な水をこれほどに表現した絵を、私の管見では 知らない。源兵衛川に素足で入った体験がさっと蘇る。その絵はリアルというわけではない。しかし、その絵が水の 冷たい感触をすっと喚起したということは、 その絵の発するリアリティの力だろう。そして少女の表情とやや乱れた髪。これはいい。いや、これもいい、と言うべきか。 》
 https://k-bijutukan.hatenablog.com/entry/2022/05/10/202829

 千住博の大作日本画『WATER FALL』を長編小説になぞらえば、味戸ケイコさんの絵は俳句か短歌。
 昨日の引用《 「かわいい」の薄明はすぐそこまでに迫っている。 》が不意に浮かぶ。

 ネット、うろうろ。

《 第99回企画「中井英夫 生誕100年」展 》 Galerie LIBRAIRIE6
https://librairie6.com/?p=4788

《 庶民の生活は苦しくとも軍事力は増強せねばならないって、昔はあれほど馬鹿にしていた北朝鮮の後を追いかけてるんだね、今の日本。 》 津原泰水(やすみ)
https://twitter.com/tsuharayasumi/status/1543783231627337728

《 YouTubeの広告で自民党のCMが流れてくるんだけど、賃金上げ!少子化対策!安心できる生活!みたいな感じで、「こいつら国民が求めてることちゃんと分かった上で 敢えて無視してるんだな......」という不信感が高まった 》 深志美由紀
https://twitter.com/angelusace/status/1543714701095600128

《 逆に日本では、政府がどんなにおかしなことをしようが、嘘をつこうが公的文書を改ざんしたり勝手に廃棄したりしようが、まぁ仕方ないねという感じで 大規模なデモ等は起こらなくなっているように思います。この違いはいったいどういう考え方、社会の在り方からきているのか、大変興味深く思っています。 》   ᵖʳᵒᵒᶠ 中林 香🇩🇪⁷ ᴾᵀᴰ🧈ᴮᵘᵗᵗᵉʳ
https://twitter.com/kaokou11/status/1543608952562270209