『スピノザ』八(閑人亭日録)


 國分功一郎スピノザ──読む人の肖像』岩波新書2022年10月20日第1刷発行、「第6章 意識は何をなしうるか」を読んだ。

《 第一種認識としての意識、すなわち初期状態にある意識は身体の変状がもたらす結果を受け取っているだけの状態である。(引用者・略)それに対し第三種認識としての認識は、身体の変状をただ受け取る静止した状態にあるのではなくて、四つの対象の間を経めぐるようにして運動している。 》 327頁

《 人間の意識はどんな場合もまずは第一認識から始まる。たとえ第三認識を既に経験したことのある人物でも、かならずそこから始まる。だが人間の意識は、第一種認識から始まりつつも、変状という結果をもたらした原因について観念を形成することができる。それは感情のあり方に影響を及ぼす。
  第三種認識とは孤立した一観念ではなくて、こうして繰り返される認識の過程そのものを指していつように思われる。だからスピノザは第三種認識を描き出すにあたって、何か一つの認識を取り上げるのではなく、これを、自己と神と物を意識することとして説明した。 》 328頁

《 これはつまり、能動性もまた一つの結果であること、第三種認識によってもたらされた結果であることを意味している。確かに能動性を目指すことはできよう。だが、重要なのは第三種認識としての意識に到達することなのである。自らの身体と精神と物をよく意識している時、人は結果として能動的になる。 》 330頁

《 第三種認識としての意識は身体と精神と物と神の間を運動する。だが、そうは言ってもよく分からないのは、神を意識するということの意味であろう。 》 330頁

《 ではなぜ名誉はかくも人間をかき乱す感情であるのか。それは〈自己の能力の観想〉という人間の望みうる最高の満足が、結局のところ、名誉に等しいものだるからだ。 》 332頁

《 最高の満足を与える〈自己の能力の観想〉が、自己と神と物を経めぐる意識の過程、第三種認識の運動の過程に組み込まれた時、人間はもはやこの観想によって得られる喜びを、すなわち自己満足あるいは名誉を、他人との比較によって乱されることがない。(引用者・略)その過程の結果として、我々はよりいっそう能動的になる。 》 333頁

《 第三種認識は、第一種および第二種認識とはあり方そのものが大きく異なるのだと言わねばならない。第一種および第二種認識は孤立した観念として形成される。それに対し、第三種認識はそうして形成された観念の間を絶え間なく運動し続けることそれ自体である。 》 337頁

《 永遠とは、必然性において捉えられた──ある意味で空間的な──因果関係の連なりの全体のことではないだろうか。各々一人一人の身体はその中で原因をもって存在している。ならば、永遠である精神とは、その必然性の連なりの中の位置を示すマーカーのようなものではなかろうか。各々の個体の観念は神の永遠の必然性の中に場所を持っているのだから。 》 341頁

《 先に述べた通り、第一種および第二種認識は孤立した観念として存在している。第二種認識は最も言葉にすることに向いている。第一種認識はそれぞれの身体に固有の性質を備えているけれども、人間身体に一定の法則が見出される以上、それはある種のパターンを伴っており、それは容易に言葉にできる。
  それに対して第三種認識は、私の身体から出発した私の意識によって私なりに積み重ねられていくものである。 》 341頁

《 第三種認識は確かに個物の認識を産出するが、そこで算出される観念を言葉で言い尽くすことはできない。第三種認識に付された「直観」という形容はそのことを言っているように思われる。(引用者・略)それに対し直観は、神という万物の原因のもとで個物が把握されて形成される観念であって、その対象のリアリティそのものである。 》 342頁

《 また、第三種認識が過程であるということは、直観がある程度の事案をもって形成されることをも意味しているだろう。 》 342-343頁

《 永遠と深い関係を取り結んでいる第三種認識すなわち直観知にしても、それは既に言葉の領域を超え出ているのだった。 》 344頁

《 自由とは至福と同様、言葉で説明されるのではなくて、経験されるものである。あるいは、自由とは、第三種認識という意識のあり方がもたらす結果である。 》 346頁

 じつに深い論述だ。どこまで理解できたか。まあ、どこまで、なんて言えやしない。いつか再読の予感。

 昼、強風の中、電車で熱海駅に行き、低いガードをくぐって桃山町の急斜面の道を登り、初めての画廊へ。地下の画廊は無人。芳名録に記して帰宅。急勾配の狭い道。熱海には住みたくねえな。

 ネット、うろうろ。

《 藤本安馬さんが亡くなった。96歳だった。少年時、大久野島(広島県)にあった陸軍の毒ガス製造工場で働いた。毒ガスは中国で使用され、多くの人が犠牲となった。自身も毒ガスの後遺症に苦しんだ。取材時の藤本さんの言葉を忘れることができない。「私は加害者です。犯罪者に仕立てあげられたんです」。 》 安田浩一
https://twitter.com/yasudakoichi/status/1604157813034323970

《 いくら子どもが犠牲になろうと先進国最低レベルの保育士配置基準を改善せず、全産業平均より9万円近くも低い保育士給与を放置し、4400億円で出来る義務教育給食無償化は無視。自己破産が続出しても「奨学金」と称する借金を放置する自民党政府。こんな典型的な悪政の下で子どもが増える訳がない。 》 異邦人
https://twitter.com/Narodovlastiye/status/1604282210114162688

《 日本の安保3文書策定を受けたホワイトハウスの声明。「日本が防衛費を大幅に増やすことは日米同盟を強化する」と両手をあげて大歓迎。岸田首相はこれを手土産に年明けに訪米し、米国に持ち上げられて悦に入るのだろう。米国にとって、こんな「お得意様」はいない。 》 布施祐仁/FuseYujin
https://twitter.com/yujinfuse/status/1604065742411862016

《 今回の岸田首相の決定は、アメリカ政府から見れば「満額回答」で、アメリカ軍や米国内の軍需産業にとって良いことづくめ。当然「よくできました」と花丸くれますよね。

  日本の政治報道も、米大統領が日本の首相と仲良くしてくれることが「外交的成果」だと理解している様子。 》 山崎 雅弘
https://twitter.com/mas__yamazaki/status/1604089709478612993

《 日本が敵基地攻撃能力を確保することが「抑止」になると思うのって、よほど能天気なんだと思いますよ。普通に考えてエスカレートするだけでしょ。そもそも日本を狙ってないし狙う気ないし。北朝鮮の交戦国はアメリカと韓国。そこにわざわざ参入していく「平和国家」とは?? 》 Koichi Nakano@Progressive! Channel
https://twitter.com/knakano1970/status/1604318613036421125