発見 浮上(閑人亭日録)

 1945(昭和20)年に亡くなった木版画絵師小原古邨は、没後50年余を経た1998年、初の回顧展が横浜そごう内の平木浮世絵美術館で開催された。終えた後に知り、赴いて画集を購入。閑古鳥が鳴いた、と。
 http://web.thn.jp/kbi/koson.htm
 K美術館では1999年6月4日~7月4日に「西洋で愛された幻の絵師 小原古邨展」を開催。まだパソコンが無く、ネットにあげていなかった紹介文『小原古邨への招待』。

《 19世紀、西洋で高い評価を受けた浮世絵は、明治に入って盛んに輸出されるようになり、作品が払底し、複製版画でも、という状況になりました。その重要に応えるため、明治期美術界に多大な影響を与えたアーネスト・フェノロサは、小原古邨を見いだし指導して、輸出用木版画の原画である花鳥画を多数制作させました。今世紀初頭(明治40年頃)、古邨30歳頃のことでした。西洋の愛好家は、古邨の格調高い絵は言うに及ばず、その精緻な描写を忠実に再現し、さらには原画の特徴を一層際立たせた、卓越した木版画技術に感嘆しました。その木版画は、生の深いダイナミズムを秘めた動態的な構図の滑稽堂版、動の中に静を、静の中に動をひそやかに交差させている大黒屋版と、その趣きは少々異なりますが、絵師、彫師そして摺師の三者の技が存分に発揮され、肉筆画と見紛う極めて高度な美を醸成しています。
  小原古邨(本名・小原文雄)は1877(明治10)年金沢に生まれ、1945(昭和20)年1月に東京で没しました。明治の頃は古邨と称し、大正に入ってからは祥邨と改名しました。昭和の初めからは、渡辺版画舗の依頼によって版下を描き、出版されていますが、その版画には古邨時代に見られる、卓越した花鳥木版画の輝きはありません。
  古邨の作品は、その大半が輸出されたため、海外の美術館に多数収蔵され、コレクターの間でも人気が高く、海外のオークションに登場する、数少ない近代日本人画家の一人です。近年では、アメリカ・シカゴ美術館、ロシア・モスクワ東洋美術館で古邨展が開催されています。けれども、日本の美術館で収蔵しているところはわずかであり、東京国立近代美術館さえ「祥邨」の作品だけが、数十点収蔵されているのみです。また、古邨の名前も「大正時代に入ってから『祥邨』と名乗る前の名」としか書物には記されず、古邨はほとんど無視されてきました。その古邨の作品が日本でまとめて展覧されたのは、没後50年の1995年に発見された資料(下描き、原画など)を基にして、平木浮世絵美術館が昨年の秋に催したものが最初でした。ここに、優れた作家を発掘、再評価する時代の要請を感じます。
  皆様のご高覧をお願い申し上げます。   1999年5月 》

 2018年秋、NHKeテレ『日曜美術館』で特集されると大ブレーク。展覧会中の茅ヶ崎美術館は長蛇の列。資料を貸したお礼に図録を差し上げると言われたが、なんと「売り切れてしまいました」。手ぶらで帰宅。これを皮切りに全国を巡回。去年は三島市の佐野美術館にも巡回。雑誌で特集され、作品集も出版された。2000年、グーグル検索で小原古邨と入れると、たった18件。今じゃ約416,000件。まさしく隔世の感。   https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E5%8E%9F%E5%8F%A4%E9%82%A8

 1985年に37歳で病没したマンガ家つりたくにこ。日本では2010年に、水木しげるがモデルのNHKテレビ朝の連続番組『ゲゲゲの女房』に便乗して作品集が出版された。しかし、再版されることはなかった。テレビ放送に合わせて、K美術館で没後初のつりたくにこ回顧展を開催。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A4%E3%82%8A%E3%81%9F%E3%81%8F%E3%81%AB%E3%81%93
 http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/1362.html
 http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/1388.html
 つりたくにこ作品集は、海外で出版が相次ぐ。2019年イタリア。2020年カナダ(英語、増刷)。2021年スイス(フランス語、続編決定)。2022年ブラジル。どれも厚い立派な本。
 夫の高橋直行氏は「くにこのファンは私と越沼君だけです」と。つりたくにこさんの肉筆の文は、生前彼女が処分したようで、私に届いた葉書、手紙しか確認されていない。アメリカ人研究者は大喜び。

 次に何が発見され、浮上するか。私の見立てでは明治末、田島志一が関わったときの審美書院の豪華美術本。
 http://web.kyoto-inet.or.jp/people/kusanone/sinbi.htm
 http://web.kyoto-inet.or.jp/people/artbooks/kusa13.html

 午後、「水辺の魅力アップ・全国川づくり協働サミット」へ。
 http://www.gwmishima.jp/modules/information/index.php?lid=2405&cid=1
 大学生の発表が興味深かった。

 ネット、うろうろ。

《 “感染者6倍”マスク無し会議を筑波大が試算 「場面応じマスク着用の判断を」 》 Jun-ichi_Kawa
https://twitter.com/KawatheCathand/status/1634434041813544960

《 国がコロナを忘れる努力をしてる中。

  減らす努力じゃなくて、忘れる努力。 》 fujicco
https://twitter.com/fujiccopanko/status/1634142947540082691

《 ね。だからいってるでしょ?
  原発がある限り軍拡による抑止力なんかただの脅威でしかない。
  60年越えOKとか言ってるバカにつける薬ないわ。

  「燃料が10日分ほどしかなく『期間内に復旧できなければ全世界に影響する放射能事故が発生するかもしれない』」 》 yukan
https://twitter.com/yukankmr/status/1634017914830589953

《 完成。

  「たくさんの声が聞こえる
   たくさんの 歴史と思いでと心が
   詰まっているんだ」

   浪江町谷津田下川原にて

  #なかったことにさせない 》 鈴木邦弘 絵本『いぬとふるさと』発売中
https://twitter.com/SZKN29/status/1634140873595187200