『時間は存在しない』再読・五(閑人亭日録)


 カルロ・ロヴェッリ『時間は存在しない』NHK出版2019年9月20日第2刷発行を少し再読。以下、覚え書き。

《 過去の痕跡があるのに未来の痕跡が存在しないのは、ひとえに過去のエントロピーが低かったからだ。ほかに理由はない。なぜなら過去と未来の差を生み出すものは、かつてエントロピーが低かったという事実以外にないからだ。
 痕跡を残すには、何かが止まる、つまり動くのをやめる必要がある。ところがこれは非可逆な過程で、エネルギーが熱へと変化するときに限って起きる。 》 163頁

《 過去の痕跡が豊富だからこそ、「過去は定まっている」というお馴染みの感覚が生じる。未来に関しては、そのような痕跡がいっさいないので、「未来は定まっていない」と感じる。 》 164頁

《 わたしたちの脳には自分では直接意識し得ない膨大なメカニズムがあるが(引用者・略)、それらのメカニズムは、進化の過程で未来の可能性を計算できるように設計されてきた。それが、わたしたちのいう「意思決定」なのだ。 》 164頁

《 熱平衡の状態にある純粋に力学的な系では、因果によって識別される時間の方向は存在しないのだ。
  基礎物理学の法則では、「原因」を語ることなく規則性のみを語り、過去と未来に関して対称である。 》 165頁

《 過去にエントロピーが低いという事実があればこそ、原因という概念が有効になる。
  そうはいっても、記憶や因果、流れや「定まった過去と不確かな未来」といったものは、ある統計的な事実、すなわち、宇宙の過去の状態としてありそうにないものがあるという事実がもたらす結果にわたしたちが与えた名前でしかない。 》 165-166頁

《 わたしたちは、自分と似た人々と相互作用することによって、「人間」という概念を形作ってきた。
  思うに、己という観念はそこから生まれたのであって、内省から生まれたわけではない。「人」としての自分を考えるとき、わたしたちは仲間に当てはめるために自ら開発した精神的な回路を自分自身に適用しているのだ。 》 172頁

《 わたしたちにとっての自分は、大部分が友達や愛する人や敵によって映し出された自分、映し出される自分なのである。 》 172-173頁

《 わたしたちの現在は、過去の痕跡であふれかえっている。わたしたちは自分自身の歴史、物語なのだ。 》 174頁

《 時間のあちこちに散らばる過程を糊づけし、わたしたちを形作っているのは記憶だ。その意味で、わたしたちは時間のなかに存在する。だからこそ、わたしは昨日のわたしと同じなのだ。 》 175頁

 ネット、うろうろ。

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 古いところでは吉川英治『ひよどり草紙』、ロバート・F・ヤング『たんぽぽ娘』が既読。西條八十『人食いバラ』、佐々木丸美『崖の館』、森奈津子『お嬢様』シリーズが未読。そのほかは未所持。