『世界は「関係」でできている』再読・三(閑人亭日録)

 カルロ・ロヴェッリ『世界は「関係」でできている  美しくも過激な量子論』NHK出版2022年2月15日3刷を少し再読。

《 事物がおおもとのところで互いに依存し合っていることを具体的に表す、きわめて微妙で魅力的な量子現象がある。夢のように魅惑的なその現象の名は、量子もつれエンタングルメント)。 》 98頁

《 この現象では、遠く隔たった二つのものが、あたかも語り合っているかのようにある種の奇妙なつながりを保つ。このときそれらは「エンタングル状態にある」、つまりもつれているという。 》 98-99頁

《 エンタングルメントという現象一つを見ても、現実がわたしたちの考えてきたものとまるで違うことがよくわかる。 》 102頁

《 エンタングル状態にある二つの対象物の間の遠隔コミュニケーションらしきものによって一見矛盾のようなものが生じるのは、相関が現実のものとなるには両方の系と相互作用する第三の対象物が存在しなければならない、という事実を無視しているからなのだ。発現する事柄はすべて、何かとの関係において発現する。二つの対象物の相関はそれらの対象物の属性であって、およそ属性なるものの例に漏れず、さらなる第三の対象物との関係においてのみ存在する。エンタングルメントは、二人で踊るダンスではなく、三人で踊るダンスなのである。 》 105頁

《 したがって、エンタングルメントは特別な状況においてのみ生じる現象どころか、相互作用を外側の系との関係で考えると、広くすべての相互作用で生じていることなのだ。 》 107頁

《 外から見ると、わたしたちが持っているこの世界についての情報すべてが、これらの相関のなかにある。あらゆる属性は関係のなかで定まるから、この世界のすべてが、ほかならなうこのエンタングルメントの網のなかにあるのだ。 》 108頁

《 こうして、一つの論点が明確になる。量子物理学を、系が互いについて持っている(今大まかに述べた意味での)情報の理論と捉えることが可能なのだ。これまで見てきたように、対象物の属性を二つの対象物の相関の確立、あるいはむしろ片方の対象物がもう片方について有する情報、と見なすことができる。
  これは、古典物理学についてもいえて、しかも情報という視点に立つと、古典力学量子力学の違いを的確に指摘することができる。その差異を、量子力学古典力学とは根本的に異なるものにしている一つの一般的事実としてまとめ、量子の新しさを要約することができるのだ。
  (1)ある対象物に関連する情報の最大量は有限である。
  (2)いかなる対象物に関しても、常に新たに関連する情報を得ることができる。 》 111頁

《 この二つの事実はきわめて基本的な前提条件なので、「公準」と呼ぶことにする。 》 112頁

《 なぜならこれらの公準は、「関連する(レリバント)」情報について述べているからだ。関連する情報とは、その対象物の将来の振る舞いを予測するうえで価値がある情報のことだ。新しい情報が手に入ると、古い情報の一部は「関連がなくなる」。つまりその対象物の将来の振る舞いについて語れることに影響しなくなるのだ。 》 112頁

《 Pを測るとXは変わるから、Xを測ってからPを測ったときと、Pを測ってからXを測ったときでは、結果が異なる。したがって量子論の数学では、「まずXをしてからPをする」のと「まずPをしてからXをする」のは必然的に異なる。つまり、順序が効いてくる、ということで、これがまさに行列を特徴付ける性質なのだ。 》 114頁

《 「非可換」というのは、勝手に順序を取り換えることはできないということだ。(引用者・略)ちなみに数学では、「非可換代数」というもったいぶった名前が付いている。 》 115頁

《 量子論の核をとことん凝縮すると、たった一本の方程式で表すことができる。その方程式によると、この世界は連続的ではなく、粒状である。その粒はごく小さいが、それにも限度があって、事物は無限に小さくはなれない。もう一つ、未来は現在によって決まるわけではない。また、物理的なものは、別の物理的なものに対してのみ属性を持つ。つまりそれらの属性は、もの同士が相互作用したときに限って意味を持つ。さらにその式によると、さまざまな視点を矛盾なく並列することができない場合がある。 》116頁

《 さらにいえば、この世界を人間の尺度で観察している間は、この世界の粒状性は見えてこない。単体の分子は目に見えず、丸ごとの猫は目に見える。 》 117頁

《 この世界の古典的な描像が堅固であるのは、ひとえにわたしたちが近視だからだ。古典力学における必然は、ただの確率。古い物理学が提供してきた明瞭で確固とした世界像は、じつは幻なのだ。 》 118頁

 ネット、うろうろ。

《 「大津波の警告は妨げられた」 元原子力規制委、島崎氏が出版 》 KYODO
https://nordot.app/1014794751405555712?c=39550187727945729

《 「困っている人に親切な自治体」にこれからは人が集まって来ると思います。地方の人口減を食い止めるのは「親切」です。でも、勘違いしないでくださいね。「親切」というのは「被支援者に絶対に屈辱感を与えないように支援する」ということですよ。それがわかっていない人が多すぎる。 》 内田樹
https://twitter.com/levinassien/status/1642321749323976705