曜変 耀変 変人(閑人亭日録)

 茶碗には窯変茶碗と曜変茶碗そして北一明の名付けた耀変茶盌がある。静嘉堂文庫収蔵の曜変茶碗が謎の焼成茶碗として国宝に指定され、世の絶賛を受けているのは周知のとおり。半世紀あまり前、白黒写真でしか知らなかった北は、国宝曜変茶碗を実際に見て拍子抜け。神品ならば作ってみよう、と科学的実験と試作を重ね、遂に北独自の「耀変茶盌」を焼成、創造した。それから半世紀ほどが過ぎた。彼の耀変茶盌は、陶芸業界からは今も無視、黙殺されている。その間に国宝曜変茶碗の模作、追随作品は続出。ネットで見てもわんさか載っている。画像だけの判断だが、どれも追いかけて~追いかけて~、であって追いつき、追い越すまでには至らない、と私は判断している。
 北一明の「耀変」を称賛する名士たち(多くが陶芸界の外の人)は、彼の焼きものを買っているのかなあ。私にはわからない。かくいう私は自分が瞠目した茶盌やデスマスクを現金で購入。北一明が自薦した茶盌、酒盃、陶板を現金で購入。すべて自前の金だから誰も何も言わない。まあ、買っていることを口外しなかったから。吹聴しても嘲笑されるだけだから。源兵衛川のゴミ拾いをしていれば、そんな金にもならないことを、と諭された。反論も反発もしなかった。他人様がやらないことをする、のが私の嗜好。K美術館を訪問した日展会員の知人から「偉大なる変人」と言われた。偉大かどうかは知らない。変人、それは今も変わらないらしい。私自身は普通の人と思っている。普通の市井人に戻る(?)べく、二つの役職(某取締役、某理事)の退任を申し出る。了承される。肩の荷が降りた。珈琲を淹れる。
 東京新聞、きょうの運勢「とら」。 
《 人生は短く、そして長いもの。ゆっくりと旅をしてゆけ 》